【完結】美少女TSおやぢと武人系美少女と美女TS青年(皆身内)がイッチャイッチャする話 科学×ファンタジーな世界観with緊急自動車やミリタリーの趣味&コスプレを添えて
EPIC
1章:「―帰郷から始まるTS―」
1話:「―故郷と再会とTS―」
惑星ジア――
その北半球には、その表面の3分の1近くの面積を占める巨大な大陸が、まるで寝そべるように存在している。
惑星ジア最大の規模を誇るの大陸は、名をフーリグリードと言った。
そのフーリグリード大陸の最南東端、極東と呼ばれるその地域。そこから大陸は海に面し、その先には惑星中心部を占める、中央海洋と呼ばれる大海が広がっている。
そして、そのフーリグリード大陸最南東端と中央海洋の境目。そこにその二つを隔てるように並び位置する、大小様々な島からなる地があった。
その地は、〝
その真灼連島には、
まず連島は真灼本島と呼ばれる、最も大きく中心となる島があり。
その北東側と、隣接する島々を領土として営まれる国家――それが、
今なお、君主制を維持しその頂に皇族を置く、歴史深い国家だ。
続けて、本島南西側と近隣の島々を領土として栄える国家――
100年以上前には一つの国家であった真灼国から、近代化を強く望み訴えた人々により原点が樹立され、やがて国家として発足独立した歴史を持ち。近代的技術文化を意欲的に取り込み、現在に至る。
そして三つ目。本島のほぼ中心部に領土を持つ国家――均衡維持地帯。
前述の二国は、その独立分離の経緯から、当初はあまり友好的な関係とは言えなかった。
その不安定な関係の両国のための緩衝材となるべく設けられたのが、均衡維持指定区。真灼連島中心部をどちらの国の物とも定めずにおく施策。
そしてしかし指定区にも元より住まう人々がおり、その人々の暮らしのために、均衡維持指定区にも行政機構が付随設置される。
それが発展し、やがては国家政府と同等の扱いを受けるようになり、そして成立したのが国家としての均衡維持地帯であった。
そんな長くも複雑な歴史を持つ、真灼連島とそこに存在する国々。
その一つ。太拳の灼炎自由藩県体が領有する、真灼本島南西側。そのまた西隣に隣接し存在する――
温暖な気候に恵まれ、名が示す通り14の藩、県――行政区域が存在する地。
その十四國島、地方のさらに南端に存在する――
その郷最の地が、今回のお話の舞台だ――
郷最藩の藩庁所在地である郷最市。その経済の中心部である、駅周辺。
季節は秋口に入ったが、温暖なこの地はまだ少し厚さを感じるほど。その中で、街並みを行く人々は皆、活動的な様子を見せている。
その行き交う人々の中に交じり。
掘りと皺の少し多く、陰険そうな目つきをした、正直不健康な肌色の男――おやぢの姿があった。
名を――
このお話の、主観人物となる一人だ。
その血侵の姿格好は、着崩された青い作業服。これは血侵がプライベートで好む服装であった。
そして片手には、何やら買い物品と思しき物を、雑多に込めたリュックを背負わずに下げている。
そしてどこか気だるく、しかし悪くはなさそうな様子で、街並みを歩き行く血侵。
血侵の身の上を少し話そう。
血侵はこの郷最の地を生まれ育った故郷とするが、今はこの故郷を離れ。
この真灼連島の地より、南東へ中央海洋を越えて行った、遥か数百krwも離れた向こうに存在する。
――〝ラインイースト地方〟、〝ビーサイド行政区域〟と飛ばれる地に。
住まいを借りて一人暮らしをしている身だ。
そして、血侵はその地で。
〝交通管理隊〟――ハイウェイ・パトロールの職に就き、その職務に従事する生活を送っている身であった。
その血侵が今日にあっては、この郷最の地にまた身を置いているのは。
故郷への帰郷中の身であるからであった。
今現在。中央海洋にある国々は、秋の季節に存在する数日間に渡る連休の最中だ。
昼夜問わず年中稼働時間で、シフト制の交通管理隊の仕事には本来あまり関係が無いのだが、血侵にあっては他の人と勤務日を交代した関係と、たまたま公休日が当たったことなど、条件が連なり。世間に合わせて、連休を取ること偶然叶った。
そして、普段の休みであればアパートで適当に過ごしてしまう血侵だが。今回、せっかくなのでこの休みを利用し、離れた故郷に、実家に帰省し顔を出そうと考えたのだ。
昔であれば、遥か数百krwの距離を旅するには、船に何日も揺られ大変な時間と労力を要しただろう。しかし航空網が発達した現在で、それは無用の心配であった。
血侵は昨日の朝に夜勤シフトを終え、休みに突入。
一度アパートに帰り支度を整え、すぐにまたアパートを立ち、故郷へ向けて出発した。
向こう、ラインイースト地方を走る電車で国際空港へ向かい、そこからは旅客機に乗り、広大な中央海洋をシートでコーヒーを啜りつつ一っ飛び。
夕方には十四國にある国際空港に降り立ち、そこからはまた電車で郷最藩まで南下。
そして太陽が沈み切ったくらいに、実家へと到着したのであった。
そして昨晩は、放任主義気味な両親の適当でぬるい歓待を受け。
翌朝には近所に住まう、30越えたおやぢな血侵を未だに甘やかす、祖父母へと顔を出し歓迎を受け。
近況や土産話に興じた後。
入り用な物。こちらで入手して向こうに持って行きたい物などを買い揃えに、街へと繰り出したのであった。
「こんなモンかね」
街並み。今は駅前を横切りつつ、一人呟く血侵。
お目当ての物は買い揃い、これよりは切り上げて実家に戻ろうかと考えていた。
「――おじ様?」
血侵の背後より、そんな声が聞こえたのはその時であった。
道行く他の誰かを呼んだ声だろうと、一瞬思った血侵。しかし直後、その高い声色が聞き知ったものである事に気付く。
そして足を止め、身を捻り振り向く血侵。その血侵の目に留まり映ったのは、背後数rw先――そこに立つ一人の少女であった。
まず、黒寄りの茶色で、少し毛先の長めのショートボブの髪型が目に付く。その髪に彩られるは、少し釣上がった凛とした目が特徴的な、端麗に整ったその顔立ち。
肌色は血侵と同様、真武民族のそれ。眼もとび色で同じ。
身長は160crw前後。そしてその身には深い臙脂色が主体で、金色のタイが目を引き、同じく金色のラインを各所に走らせたセーター服とスカートを纏っている。
その姿から、少女が女学生である事が分かる。
「――やっぱりっ……血侵おじ様っ!」
その女学生と思しき少女は、振り向き露になった血侵の姿を、少し慎重に伺うように見ていた。しかしその様子を見せたのも一瞬。直後に確信が持てたのか、その凛々しい顔をしかしパァと明るい物に変え。
そして今度はその口より、明確に血侵の名を紡いだ。
「――
一方の血侵もまた、その少女の正体に気付き、少し慎重に観察しつつもその名を発する。
その間に、趣意と言う名であるその少女は、パタパタと足音を立てて血侵の元へと駆けよって来た。
「お久しぶりです、血侵おじ様っ。まさかお会いできるなんてっ」
駆け寄って来た趣意は血侵の顔を見上げ、そんな再開を喜ぶ言葉を上げる。
凛と保っていれば威厳すら感じさせるその端麗な顔には、しかし今は、反した人懐っこさを前面に表している。
この趣意という名の少女は、血侵の親戚。従兄弟姪に当たる子であった。
特段長く深い付き合いという訳ではないが、時折会っては会話を弾ませ、ちょっとした時を一緒に過ごす関係にあった。
「あぁ、驚きだな。そっちも帰省か?」
再会を目に見えて喜ぶ趣意に対して。血侵は言葉に反して対して驚いた様子は見せずにそんな尋ねる言葉を発する。
彼女、趣意の実家もこの郷最の地にある。
今が連休の最中である事も鑑みれば、彼女も帰省でこの地を訪れているであろうことは、容易に推察できた。
「えぇ。学校も休みに入りましたので、これを利用してこちらに顔を出しに来ました。でも――まず真っ先におじ様にお会いできるなんてっ」
趣意は肯定の回答を紡ぐが、それに続けて、また血侵との再会を喜ぶ言葉を紡ぐ。
この趣意という少女。実はどうにもかつてから、親戚と言う間柄以上に妙に血侵に懐いていた。
血侵としては、どうしてこんな気持ちの悪いおやぢに彼女が懐いているのか全く理解できず、正直内心では少し訝しみ複雑に思っているのだが。
「おじ様は、ご実家に?」
そんな血侵の内心をよそに、趣意からは興味深げに質問が返される。
「あぁ、お前と同じさ。休みがたまたま合ったんで、それを利用してな。昨晩着いた― ―今は、買い出し中さ」
血侵は、それに端的に答えて見せる。
「ふふっ、私も同じですっ。昨日着いて、今日は欲しい物を揃えに出て来たんです」
その答えを聞き、境遇や目的が似通ったものである事を面白くうれしく思ったのだろう。趣意はまた笑みを浮かべながら、手に下げていた購入品の入った可愛らしいバッグを、軽く持ち上げ示して見せた。
「おじ様、ご予定は?よければ少しお話しませんか?」
そして趣意は伺う様な色で、そんな尋ね提案する言葉を血侵に寄こす。
「俺は別に暇だが――お前の方はいいのか?言っとくが金は無いぞ?」
そんな趣意からの尋ね提案する言葉に、血侵は自分は空いている旨を。そして同じ確認を趣意に返し、最後に皮肉の言葉を添える。
「もう、おじ様ったら」
そんな血侵の言葉に、趣意は少しすねた様に口を尖らせる。
「ひとまず、少し歩きながらお話しましょう」
しかし趣意はすぐにころりと表情を戻して、また提案の言葉を紡ぐ。
「いいぞ」
血侵も今度は端的にそれを受け入れ、二人は並び歩き始めた。
「――しかし、聞いたぞ。ったく、皇国軍女学校なんぞに入っちまって」
駅前から始まる商店街の街路を並んで歩きながら。血侵は趣意に向けておもむろに、そんな少し歓迎しない色の言葉を投げた。
皇国軍女学校――。
真灼連島の北東を有する、真艶和皇国。その国軍である皇国軍の中に設けられる、教育機関。中等教育を終えた15歳から、18歳までの少女達が集い通う、一種の少年兵学校だ。
皇国では軍のエリートの道とされ、卒業後は士官学校を得て、皇国軍の士官となる者がほとんどと聞く。
趣意は、今年よりその皇国軍女学校に入学した身であった。
その纏う深い臙脂色の制服も、その生徒である事を表す物だ。
「やはり、喜んではくれないのですね……」
そんな血侵の言葉を受け、並び歩く趣意はその胸に片手を当て、少し悲しそうな顔で答える。
「悪ぃな、できれば素直に祝ってやりてぇが。やったとして中身の無ぇ、飛んだハリボテの祝福になっちまうからな」
そんな趣意の姿を複雑に思いつつも、しかし血侵は曲げず隠さない意思で言葉を紡ぐ。
前述もしたがその歴史柄、皇国と自由藩県体の中は良くはなく、住まう人々同士の印象も良いとは言えない。昨今ではそれもかなり改善され、両国の交流も各段に増えたが。しかし長く深く刻まれた互いに対する印象は未だ残り、払拭し切れてはいなかった。
そして自由藩県体側に住まう血侵も、くだらぬ諍いとは理解していながらも、しかしどこかで思い訝しむ心が産まれてしまっていた。
さらに言えば皇国は、近代化や身分平等が叫ばれ台頭しつつある昨今のご時世にあっても、未だに旧来の考え方や身分出生家柄などによる上下意識が、未だに根強い国であった。
その事もまた、自由を合言葉とする藩県体で生まれ育った血侵にしてみれば、忌諱する大きな要因であった。
方や、そんな背景の皇国の女学校に、なぜ趣意は入学したのか。
それは彼女の出自にある。
彼女は藩県体出身の父と、皇国出身の母を両親に持つ娘であった。その父の方と言うのが、血侵の従弟である。
しかしその従弟は皇国に渡り、以来あちらに本住まいを構えている。そして趣意も、皇国で生まれた。それ故趣意は、実を言えば皇国側に帰属意識の高い娘なのである。そして幼いころより皇国軍に憧れを抱いてきた身でもあり、何より母方が皇国軍軍人の一族である事も助け。皇国軍女学校へ入ることは、最早必然ですらあった。
だが一方で、趣意は幼少期のいくらかの期間を、藩県体の郷最の地で過ごしていた。 父方の実家で祖父母――血侵の叔父と叔母になかなかに逞しく育てられ、そして時折会う血侵には、当時から妙な興味を抱いていた。
そんな経緯から、藩県体側への思い入れや帰属意識も、趣意は低くは無かった。
その上で、彼女自身その身の振り方を大きく悩んだが、その果てに彼女は憧れであった皇国軍女学校への入学を選んだ。
ただし、その内から体制を変え。両国が揃い歩む未来への礎となろうとの、大きく確固たる意志を持って――
二国両方にルーツを持ち、それらを引く者として、苦悩しているであろう趣意。
自身の先の曲げぬ発言が、それを掘り起こしてしまったであろう事に、内心で舌打ちを打つ血侵。
だが一方で、これを機会にいっそ吹っ切れてくれればという思惑もあった。
こんな偏屈者がいる自由藩県体には見切りをつけ、皇国の娘として地に足を付ける。血侵からそれば皇国は未だ訝しむ存在ではあったが、趣意の心を考えれば、そのほうがよいだろうとすら考えていた。
ついでにこんな気持ちの悪いおやぢに愛想を尽かし、おじ離れしてくれれば万々歳だ。
そんな事を内心に浮かべる血侵。
「――でも。見ていてくださいね、おじ様」
しかし直後。趣意は唐突にその凛々しい顔に不敵な笑みを浮かべ、そんな言葉を紡ぐ。
「私が士官となった暁には、今ののっぴきならない現状を、なんとしてもひっくり返して見せますからっ」
そして趣意は顔を上げ、その作った不敵な――というより最早悪戯でも企むような笑みを向けると、血侵に向けてそんな言葉を高らかに発して見せた。
この娘、どうやらただ落ち込み悩むだけの器では無いらしい。
「――不祥事や碌でもないやらかしで、すっ転ばない事を祈っといてやる」
そんな趣意の姿を受けて。
しかし血侵は素直に後押しするような言葉は紡がず、呆れと白けた色で、そんな皮肉の言葉を吐いた。
「んもう!おじ様!」
そんな血侵に、趣意はまた頬を可愛らしく膨らませ。不満の色を見せた。
「ところでおじ様、お昼は?」
それから直後。趣意から、そんな尋ねる言葉が寄こされる。
「ん?あぁ、まだだ」
「よければ、お店に入りませんか?」
それはどこか飲食店に入り、食事とする事を提案するものだ。携帯端末を取り出してみれば、確かに昼の時間が近かった。
「実は近くに、素敵な喫茶店があるんです」
「しかし、お前と俺で小洒落た所に入るのはな」
続け趣意は、近場に目当てとする店がある事を発し明かす。しかし対して、血侵はあまり賛同しがたい様子を見せる。
その理由は見た目だ。
人相が大変に悪く、今にあっては着崩した作業服姿の血侵は、はっきり言って怪しい部類に入る。まして見るからに良い所のお嬢様な容姿の趣意と、洒落た喫茶店などに入れば、悪目立ちするのは必然だ。
正直並んで歩いている今での、ヘタをすれば警官に声を掛けられかねない程だ。普段警察と一緒に仕事をしている管理隊隊員の身で、そんな事になればそれこそ笑いのネタだ。
「心外です、おじ様とはやましい関係ではないのに……」
言葉通り、どこか心外で不服そうな色で言う趣意。血侵からすれば、趣意がどうしてそんあ贔屓目で自分を見ているのか、本当に謎であった。
「――でも、それなら〝あの手〟で行けますよね?」
しかし直後、趣意はその顔をするりと変化させて。何か悪戯っぽく、そして期待するような笑みで、含みのあるそんな言葉を寄こした。
「お前――さては、ハナからそれを狙ってたな?」
対して、血侵は趣意のその言葉が示す所を、すぐさま察し理解した様子で。そしてその顔を微かに顰め、呆れた色で言葉を返す。
「最善の方法だと思います。丁度、制服の予備も持って来てるので、お貸しできますしっ」
「どうしてそんな好き者に育ったんだ、お前は?」
何かウキウキとしたうれしそうな様子で、言葉を並べ促す趣意。それに対して血侵は、また呆れた様子でそんな皮肉気な言葉を吐いた。
二人は場所を移す。まずは近くにあったショッピングモールに入り、その内部一角のレストスペースに設けられる、多目的トイレを借りる。
「――どうしてお前まで一緒に入るんだよ」
いくらかの広さの設けられた多目的トイレ内で、血侵はまたも呆れ発する。
これから血侵は、この場を利用してある〝手順〟を行う。
それには血侵一人で全く事足りるのだが、なぜか今のトイレ内には趣意も一緒に居た。
「えぇ?〝お着換え〟とかに、お手伝いが必要かとおもいますよ?」
血侵と相対する趣意は、悪びれもせずにそんな言葉を紡ぐ。
「毎度それ言ってるだろ――ったく。それに、〝変わる〟所なんて見て気持ち悪くないのか?」
「そうですか?私は神秘的です素敵だなと思ってますけど」
続け血侵の発した尋ねる言葉に、対する趣意は不思議そうにそう答える。
「どこまでの好き者だな――まぁいい、やるぞ」
そんな趣意に、微かな溜息交じりの言葉を紡ぎ返し。そして自身の後ろ首に片手を当てると、そんな何かを始める合図の言葉を紡ぐ。
スゥ――と、息を静かに吸う血侵。
――血侵の身体が、驚くべき〝変化〟を始めたのは、その瞬間であった。
なんと血侵の顔が、骨格が、見る見るうちに変わり始めたのだ。
その掘りと皺に覆われた顔は、張りのある若々しい物へと変わっていき。武骨な鼻は縮小し可愛らしい物へ。口も同様。
目は陰険な印象の悪いそれから、釣り上がりつつも凛とした物へ。
顔は小さく端正な物へと変貌し、スポーツ狩りに保っていた髪は、みるみる内に延びてゆく。
変化は頭部だけではない。
男性としてそれなりにあった身長はいくらか縮み。なかなかに鍛えられていた身体も変貌してゆく。
胸筋は豊満な乳房へと膨らみ変わり、腰はくびれを作り、尻も程よく柔らかく膨らむ。脚、太もももそれなりの太さの健康的な物へ、腕も同様だ。
全身に驚くべき変化変貌を見せる、血侵の身体。
そして、わずか数秒後にその場に体現され現れたもの――それは、一人の美少女の姿であった。
その美少女は、全体的に趣意に似通っていた。
身長は、趣意より少し高い160crw程。髪も黒寄りの茶髪で、少し毛先の長いショートボブと、細かい違いは見受けられるが類似。
その顔立ちも瓜二つなほどに端正だが、趣意と比べてその少女の方が、目尻がより釣り上がり、気の強そうな印象を受ける。
そしてそのバストにあっては、趣意よりも一回り豊かであった。
しかしそんな端麗な容姿に似合わず。その美少女の抜群のプロポーションが纏うは、サイズの合っていない青い作業服。それは先まで血侵が纏っていた物。
否――今も現在進行形で、血侵が纏っている。
なぜならその現れた美少女は、血侵張本人であったから。
そう、血侵はそのおやぢの物であった姿を、美少女へと変貌させて見せたのだ、もちろん、自らの意思で。
「――はぁ」
自らの身体を美少女の姿へと変貌させた血侵は。やれやれと言った様子で息を吐きながら、後ろ首に当てていた片手を放し降ろす。
明かそう。
血侵は、自らの意思で自らの身体を、女の物へと変化させる事のできる体質の持ち主なのであった。
そしてこの特性は、何も血侵に限った物では無かった。
この世界、惑星ジアでは、自らの身体を異性の物へと変える事の出来る体質の人々が、普通に数多存在していた。
この特性は生まれ持って持つ者もいれば、後天的に発現する者もいる。カウンセリング等を受けて、意図的にこの特性を手にする者も居る。
種族に関しては問わないようで、多くの種族にこの特性は見られる。
血侵に至っては外見年齢まで若返ったが、これにあっては個人差が出る。
ちなみに今も研究が進められているが、未だ完全な解明には至っていない。しかし生命の存続のための生存戦略、進化の一形態と見られている。そして物理的な面での肉体への深刻な影響などは、今の所報告されていない。
そんな、この世界では珍しくない、しかしまごう事なき神秘的な特性、力を持って。
血侵はその30越えのおやぢの身体を、美少女へと変えて見せたのだ。
最もその目的は、洒落た喫茶店に入るハードルを下げるためだったが。
「――ふぁぁ、おじ様やっぱり素敵です~」
その血侵の変貌、そして美少女となった姿を目の当たりにした趣意はと言えば。
その凛々しく、威厳すら感じる端正な顔を、しかしだらしないまでに綻ばせ。見惚れた様子で血侵の姿を眺めている。
「ったく」
一方、何度目かの呆れの声を零す血侵。その声色ももちろん、少女の物に成り変わっていた。
血侵は美少女となった自分の姿が、かなり趣意の容姿と似たものである事は前々から自覚していた。そんな自分の姿に見惚れる趣意に、彼女がナルシズム他色々を拗らせていないかと、色々訝しみ心配してしまう血侵であった。
「ほれ、着替えをくれ」
そんな思考を浮かべつつ、血侵はサイズの合わなくなった上着の上衣を脱ぎながら、趣意に着替えを要請する。
「ふふっ、ではお手伝いしますね」
しかし趣意は、着替えの類を血侵に渡す事はせず。その手に女物の下着を持って血侵の背後へと回る。
そして背後から血侵の纏うシャツに手を伸ばし掴むと、無遠慮にそれを捲り上げた。
「って、おい」
端的に、趣意の行動に咎める言葉を飛ばす血侵。美少女化した血侵の、たわわな乳房が露になる。
「むぅっ。おじ様の、やっぱり私より少し大きい」
一方の趣意は、少し嫉妬の言葉を紡ぎつつも。しかし楽し気にその細いな両手手先で、血侵の両乳房を支える――という名目で指を沈め、味わう。
「おい、スケベ女学生」
そんな趣意のあからさまな下心を看破して、血侵はまた言葉を飛ばす。
「はよしないと、店が混むんじゃねぇのか?」
そして、趣意の意識興味を別に向け逸らすべく、そんな所へ言及して見せる。
「はーい――お楽しみは後か」
そんな血侵の忠告に、趣意は間延びした返事を返し。しかしボソリと何か不穏なセリフを紡ぎ。
それから「さて」と零し、ペロと小さく下唇を舌先で舐めると。血侵のそのバストを下着で包みに掛かった。
それから数分後、多目的トイレの扉が開かれ、その内より二人の美少女が姿を現した。
揃って深い臙脂色を基調とし、金色のタイやラインの栄えるセーラー服を身に着けて。背丈、髪型どれも相当に似通った美少女。
その端正な顔もまた相当に似通いつつも、しかしそれぞれ違った凛々しさを醸し出している。
その内の一人は趣意。
もう一人は美少女へと姿を変え、そして趣意より予備のセーラー服を借り受け纏った血侵だ。
「本当にお似合いですわ、おじ様。本当の皇国軍女学生と言っても疑われませんよ、きっと」
血侵の背後より、趣意は見惚れるような様子で称賛の言葉を零す。同時に血侵のセーラー服姿を、嘗め回すように見ながら。
「今更だが、いいのかこれ?」
一方の血侵は、自身の制服姿を見降ろしつつ。女の体になったとは言え皇国軍女学生でもない自分が、勝手にその制服を借り纏っている事に、これが身分詐称などに当たらないかと懸念する声を零す。
今更であるが、なぜ趣意が制服一式をもうワンセット持ち歩いていたのかも謎だ。
「大丈夫ですっ。何も立場権利を不正利用したり、関係施設に立ち入る訳ではありませんからっ」
質問に対して、趣意はそんな問題ない旨を回答として寄こす。本当の所どうなのかは、血侵には最早判別する方法は無かったが。
「さっ、せっかくです。女同士――女学生同士のデートを楽しみましょうっ」
そんな血侵の内心をよそに。
趣意はその凛々しい顔に悪戯っぽい笑みを浮かべると。血侵の両肩にその手を置き、そして血侵の背を押し。二人は急かし、急されるように歩き出した。
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