第14話「さくちゃんも甘えたい」

校外



守里と美月は葵波の話を聞きつつ、葵波の後について行く。




葵波: 守里と美月のペアは、水曜日と金曜日の放課後に珠美ちゃんのペアと手分けして、校外を見回ってもらうんだけど、大体の見回りルートは決まってるから、そこを通って貰えればいいよ。



守里: 分かりました。



美月: あの、見回りっていうのは具体的に何をすればいいんですか?



葵波: 基本、学校外で生徒を縛るようなことはしたくないから、そんな厳しく校則違反を取り締まらなくても良いんだけど…



守里: 度が過ぎてる奴を取り締まるというか、注意すれば良いんですね。



葵波: そういうこと。あとは若月も言ってたように、風紀委員の仕事には、生徒を取り締まるだけじゃなくて、生徒を守ることも入ってる。



美月: なるほど…



葵波: なんか生徒が危険なことに巻き込まれそうになってたりしたら、助けてあげて。ただ、その時に自分達を犠牲にすることはするなよ。



美月: 他の風紀委員に応援を頼むんですよね?



葵波: そうそう、場合によっては警察とかにもね。まぁ人数を集めれば、大抵のヤツらは逃げてくれるから。基本3年は風紀委員が見回りをしてる間は学校にいるから、なんかあったら連絡して。



守里: 校外の見回りをするのは1年と2年なんですか。



葵波: 何?3年だけズルいって思った?笑



守里: いやいや、そんなことはないですけど。



葵波: まぁ3年は3年でやることがあんのよ。



美月: そうですか。



守里: ところで、若月さんが言ってた暴力事件っていうのは?



葵波: あれ?守里ニュース見てないの?笑



守里: いや、その事件のことは知ってるんですけど、改めてお話を聞いておきたいなって。



葵波: そう?笑、まぁニュースで報道されてることは実際に起こってる事件の一部だけだから。



美月: 確か、ニュースでは、この辺りで殴り合いをしている人達がいるから、巻き込まれないように気をつけて。みたいなことを言ってましたね。



葵波: 笑、まとめるとそんな感じ。でもこの事件はちょっと変なんだよ。



守里: 変って?



葵波: その殴り合いをしている現場を見たって人はいるんだけど、警察が来る頃には、殴り合いをしていた当人達がいなくなるんだ。



守里: へぇ…



美月: じゃあ、結局のところ誰も捕まってないと…



葵波: だから気をつけてね。いつどこで、そんな事件がまた起こるか、分からないから。



守里: はい。



美月: 見つけたら、すぐ風紀委員と警察に連絡ですね。



葵波: そういうこと!




と話をしながら、歩き、再び学校に戻ってくる。




葵波: はい!これで見回り終了!コースは覚えられた?



守里: はい!



美月: 何とか…



葵波: ちなみに歩いてみて、わかったと思うけど、あのコースは商店街通りを通るから、仕事に支障が出ない程度なら食べ歩きしても良いからね。



守里: そうですか笑




葵波さん、めちゃくちゃやってたんだろうな…




葵波: よし、で、見回りが終わったら風紀委員室に行って、若月に報告ね。



美月: 分かりました。



葵波: じゃあ風紀委員室に行こっか。





風紀委員室



ガラガラ




葵波: たっだいま〜



守里 美月: 失礼します。



若月: お、3人共戻ったか。見回りの報告をしてくれ。



守里: はい、特に何も無かったです。



若月: そうか。まぁ初日から、なんかあっても困るしな笑



葵波: 私から見ても、今日はなんもなかったよ。



若月: 分かった。もう、愛衣の方も戻ってきたから、今日はこれで終了だ。帰っていいぞ。



守里: 了解しました。



美月: はい。



若月: 守里、これから色々と頼んだぞ。ニヤッ



守里: は、はい。




僕、何を任されるんだ…




若月: あ、あと麗華となぁちゃんにも顔を見せてやってな。



守里: 機会があれば…



若月: まぁうちに所属してるなら、今度の体育祭で一緒に活動することになるだろう。



守里: そうですね。



若月: あいつらはお前のことを、かなり頼りにしてるから。私もだけど。



守里: ありがとうございます。



若月: じゃ、またな。



守里: はい。




ガラガラ



守里と美月は風紀委員室を後にした。




守里: ふぅ〜やっと終わった。



美月: やっぱ時間かかるね。



守里: だね。



美月: (風紀委員か…目立つかな。)



守里: で、どうする?一緒に帰る?



美月: いや、別々で帰ろ。



守里: OK、じゃあ先に美月さんが学校を出て。



美月: うん。




そうして、2人は離れて帰った。



◇◇◇◇



ガチャ




守里: ただいま。



蓮花: あ、お兄ちゃんおかえりー!!!




ドスッ




守里: うわっ!




守里が玄関に入ると、蓮花が飛び込んできた。




蓮花: おかえりお兄ちゃんニコッ




守里に抱きついた蓮花は上目遣いで笑いかける。




え、やば可愛すぎるんだが、我が妹。




守里: うん。ただいま蓮花ちゃん。



蓮花: このままリビング行こ!




ギュッ




守里: 分かったよ。




僕は随分と妹に弱いようだ。




ガチャ




結真: 守里おかえり。って蓮花何やってるの?



蓮花: え、お兄ちゃんに抱きついてるだけだよ。



結真: 抱きついてるだけって…まぁ仲良くなった証拠か!



桜: …



守里: 桜ちゃんどうしたの?



桜: え、いやなんでもないよ。おかえり、守里君。



守里: うん、ただいま。



結真: じゃあ守里君も帰ってきたところで、晩ご飯にしよっか。桜は美月を呼んできて。



桜: はーい。



守里: 晩ご飯までありがとう。結真姉さん。



結真: いえいえ、良いのよ。私暇だし。



守里: でも結真姉さんの大学が始まったら…



結真: いや、あんまり一限と午後には、講義入れないようにするから、大丈夫だよ。でも、たまに頼っちゃう時があるかもだから、その時はよろしくね。



守里: もちろん!



結真: うん。



守里: あ、明日は僕の晩ご飯は作らなくて良いよ。



結真: え、どうして?



守里: バイトがあるんだ。そこで賄いをもらうことになってるから。



結真: なるほどね、分かった。



蓮花: お兄ちゃん、どこでバイトしてるの?



守里: うーんっとね…カフェだよ。



蓮花: いいな〜蓮花もバイトしたい!



結真: フフ、蓮花はまだ早いよ。



守里: そうだね。高校生になったらやってみてもいいかも。



蓮花: えー分かったよ。蓮花が高校生になったら、お兄ちゃんと同じところでバイトする。



守里: 笑、店長に伝えとく。



結真: さ、守里も蓮花もお皿運ぶの手伝って。



守里 蓮花: はーい。





そして晩ご飯が終わり、守里がお風呂に入っている頃…




結真: それにしても、蓮花は随分と守里に懐いたわね笑



蓮花: だってお兄ちゃんなんだもん!



結真: 蓮花が元気になってくれて、良かった。これでみんな大丈夫そうだね。



美月: うん。



桜: …



結真: え、何?桜はまだなんかあるの?



結真、美月、蓮花が桜を見つめる。



桜: ゴニョゴニョゴニョ



蓮花: 桜お姉ちゃん聞こえないよ!



桜: だから!さくもゴニョゴニョゴニョ



結真: 後半が聞き取れないよ。



美月: 笑、そういうことね。



蓮花: え、美月お姉ちゃん聞き取れたの?



美月: うん笑



結真: もう、桜はっきり言って!



桜: だから、さくも守里君のこと、お兄ちゃんって呼びたい!!



結真 蓮花: …



美月: 笑



結真 蓮花: アハハハハハ



桜: ///なんでみんな笑うの!!!



蓮花: だって、ねぇ笑



結真: あら笑、桜も守里に甘えたかったのね笑



桜: そ、そそそ、そんなんじゃ。



蓮花: ほんと、桜お姉ちゃんは可愛いな〜



桜: 蓮花ばっかりずるいじゃない!



結真: ほんと、桜は照れ屋さんなんだから。



美月: 笑



桜: ///っもう…



結真: 守里も、桜からお兄ちゃんって呼ばれたら、喜ぶと思うよ。



蓮花: そうだよ!蓮花からお兄ちゃんって初めて呼ばれた時も、お兄ちゃん、笑ってたから。



桜: そうかな…



結真: 桜も頑張って守里に甘えなさい。



桜: うん!さく頑張る!!





ガチャ




守里: お風呂上がったよ〜



蓮花: ほら、桜お姉ちゃんボソッ



結真: がんはれボソッ



桜: う、うん。



守里: ?



桜: ///あ、あ、あの、お、お、お兄ちゃん一緒にみたらし団子食べませんか?



守里: ?!



結真: (みたらし団子一緒に食べませんかって笑)



蓮花: (ダメだ笑いが堪えきれない笑)



美月: (桜笑)



守里: え、えーっと…



結真: (守里も急な展開に戸惑ってる笑)



蓮花: (多分お兄ちゃん、桜お姉ちゃんに、お兄ちゃんって呼ばれたことは頭に入ってないかも笑)



桜: ///いや、その、なんでもない…




守里の戸惑う様子を見て、桜は無かったことにしようとするが…




守里: 分かった。みたらし団子ね、一緒に食べようか。



桜: え…うん。食べよ。



結真 美月 蓮花: プッアハハハハハ



守里: え、何、みんな突然笑い出してどうしたの?!



結真: いや笑、なんでもないのよ笑



蓮花: そうだよ、お兄ちゃん笑。桜お姉ちゃんと、みたらし団子一緒に食べてあげて笑



美月: そう、桜の大好物のみたらし団子を笑



桜: ///



守里: う、うん。




その後守里は、結真達の笑いを含んだ視線を受けながら、桜とみたらし団子を食べた。





そして守里達が寝静まった後…




結真: 美月、まだ起きてたの。




結真がリビングに降りると、美月がソファに座っていた。




美月: うん。でももう部屋に戻ろうかなって思ってたとこ。



結真: ふーん。で、大丈夫そう?



美月: 何が?



結真: いや…



美月: うん、大丈夫だよ。まだ目立ってないし。



結真: そう…守里とは仲良くなれた?



美月: もちろんだよ。



結真: 美月がそう言うなら良いけど。もし何かあったら、ちゃんと相談してね。



美月: うん。



結真: 前みたいには絶対にさせないから。



美月: …ありがとう。



結真: …



美月: じゃあ私、もう部屋に戻るね。



結真: うん。



美月: おやすみ。



結真: おやすみ、美月。




暗い夜の中、月が厚い雲に隠れていた。



◇◇◇◇◇



翌日



教室



ガラガラ




日向子: おはよう!!



守里: おはよう。



春時: 2人とも、おはよう!



飛香: おはよう。



守里: 春時、今日は早いんだな。



春時: おう、紗耶が先に出ていっちゃったからな。俺も早めに来たんだよ。



守里: なんだ、入学早々、紗耶ちゃんに嫌われたのか笑



飛香: 春時何しちゃったの?笑



春時: いやいや、別に紗耶と喧嘩したわけじゃないよ!



日向子: じゃあなんで?!



春時: あいつ、バスケの練習をしに、朝から出ていったんだよね。



守里: へぇー熱心だな。



飛香: 紗耶はバスケ部に入るんだよね?



春時: そう言ってた。



守里: 良かったな、日向子。熱心で有望な後輩が入ってくるぞ。



日向子: やったね!



春時: うちのじいちゃんも紗耶に甘くてね笑、この前、紗耶におねだりされて、バスケのゴールを買って、庭に設置してた。



飛香: あのおじいちゃんがね…



春時: 俺にはめちゃくちゃ厳しいのに、紗耶にはデレデレだから。



守里: まぁでもそのおかげで、春時は強くなれたんだから。



日向子: そうだよ!守里とは違って強いんだから!!



春時: まぁな、守里は弱いもんな。



飛香: 守里は弱虫だから笑



守里: 僕の話はいいだろ笑



日向子: でも守里は小学生の時に少しだけ、春時の道場で稽古してたよね?



春時: うん、俺が守里を誘って一緒にやってたけど…



飛香: そうそう、でなんでこんな弱いのよ笑



守里: いやーなんか、僕にこういうのは合ってないみたいでね。師範にも向いてないって言われちゃったよ。



日向子: そうだったんだ。



飛香: 向いてないなら、しょうがないね。



日向子: 大丈夫、守里は私が守ってあげるから!



春時: 確かに、日向子はそこら辺のヤンキーよりは強いもんな。



日向子: エッヘン!!



飛香: まぁ馬鹿力だから笑



守里: 頼りにしてるよ!



◇◇◇◇



放課後




日向子: じゃあみんな、また明日ね、グッバイ!!!




日向子は学校が終わると、部室に走って行った。




春時: 相変わらずだな。



飛香: そうだね。



守里: じゃ、僕今日バイトだから、帰るね。



春時: おう!頑張れよ!



守里: うん笑



春時: じゃあな。



守里: また明日ね。



飛香: またね。




そう言って、守里はバイトへと向かった。





to be continued

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