機龍世紀1stC:北海の島のアーク

武無由乃

Episode 0

Prologue まえがき

 【偉大なる大冒険家アークと、とのご家族――、そしてその軌跡を支えた全ての仲間たちに捧げる】


 これから語られる物語は、100年以上前に活躍した大冒険家アーク氏の著書である冒険記を、いくつかの新事実を追加して編纂したものである。

 我がサイクレストは、断絶海によって大陸同士の交流が隔たれている。その断絶海の嵐を乗り越えて、その向こうの様子を記した偉大なる冒険家アーク。その功績はとても大きく、現代の民俗学・考古学分野の発展を支え後押ししている。その功績も無論称えるべきことではあるが――。

 かのアーク氏は、偉大な冒険家であると同時に偉大な戦士でもあった。

 彼は、かつての狂神復活による世界の破滅を、退け解決する道しるべともなった偉大な英雄でもあり。そして他大陸へと渡った際には、その地域の人々が直面した破滅をその地の英雄たちを導くことで解決する助けを行い――、それこそが彼を『偉大なる者』と称されるべき事であるといえる。

 本作は、その冒険譚の始まりともいえる最初の冒険『ルーバート王国・五大魔洞攻略』の詳細を、脚色を交えて英雄物語として編纂したものであり、明確なノンフィクションとは言えないものの、その細部は某氏の著書の記述をもとにしている物語である。

 読者の方々には、その点をご留意の上、偉大なる英雄の冒険物語として楽しんでいただけたら幸いである。

  

 最後に――、

 偉大なるアーク氏、そしてその著書を快く提供してくださった、アーク氏のご家族の方には感謝してもしきれぬほどである。

 この場を以て感謝を述べたい。


 O.E.1939年7月12日――、編纂者クラウゼル=ミュラー、記す。



 ◆◇◆



 サイクレストという世界がある――。

 それは広大な星界に浮かぶ球状世界の一つ。

 そのサイクレスト世界には三つの大陸が存在した。

 第一のセイアーレス大陸――、

 妖精の大地ティルナノグ――、

 そしてソーディアン大陸――。


 O.E.1712年――、セイアーレス大陸に突如として人々を脅かす脅威が出現する。

 その名は魔洞(アビス)――、

 そしてその闇からあふれ出た瘴気は、幻想の魔物――妖魔を生み出し、人々を襲い始めたのである。

 人々はそれこそ、かつて世界を襲った文明崩壊の、その復活の兆しであるとして、組合を造ってそれに対処を始めた。

 それから50年後――、とある小国の遺跡より明確な破滅が姿を現す。

 その名を――【イェグ・ヴェロム・ドゥ】。サイクレスト世界最大の脅威である【狂神】の眷属であった。


 そして、O.E.1787年――、一人の少年が冒険の旅の一歩を踏み出そうとしている。

 その名はアーク。後に偉大な冒険家として名を遺す者であった。

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