第16話「学園都市・イン・テロリスト①」

俺とアリスはテレポートで学園都市の入口まで飛んだ。

ショッピングモールへ行くには入口側まで走って来るバスに乗るのが速いらしい。

さすがに人が多いショッピングモールまでは

テレポートで行く訳にはいかないからだ。

今回利用するバス、実は学園が無料で利用が出来るようにと運営している学園都市の持ち物なんだとか。

いやぁ、助かる、所持金合計八千円と少しな

俺の懐事情(何と美波里が五千円分の五百円を入れていた)に優しい交通機関だ。

交通費が浮いたから我が最愛の妹様に

たっぷりとお土産を買わねば!

取り敢えずバスがすぐに来たので俺達は

空いているバスの一番後ろの席に座った


「おはよう」

「ああ、おはよう」

「おはようございます、真澄、休みの日にもお会い出来るなんてあたくし、とても

楽しみだったのですわ!」

「俺も凛や番長とアリスと出掛けるのが楽しみだったよ、俺は基本的に休みの日は妹に尽くしているからなぁ」

「お前はどんだけ妹が好きなんだ」

「はははっ前の学校の友達にもいわれたなぁ」

「何かとっても可愛らしい子だったよね?」

「だろう?俺に似てなくて両親にも似ていないある意味奇跡の存在さ、はっきり言って

美波里の為なら何だって出来る」

「仲がよろしいのですわね?」

「そうだな、俺が怒られる事があっても

俺からは怒った事が無いかな?何をされても許しちゃうし」


他愛もない会話をして目的地に着くまでの

時間をつぶす


「それにしても、今の時間帯ってさバスが

ほとんど空いてるのな?」

「ええ、そうですわね、この無料バスは

回るのが速いので確か、次のバスは10分後には着いてますわね」

「え?そんなにバス回して大丈夫なのか?

無料って事はバスの維持費って学園持ちなんだろ?」

「ふふっ、実はね真澄君、このバスはね

複製品なんだよ?」

「複製品?」


どうやらこのバスは誰かの能力によって

製作された物らしい。

この学園の一部に研究棟がありそこに居る

複製能力を持つ研究者が廃棄された車や鉄屑

処分に困っている廃コンテナなどでパッと

作られるらしい。

材料があればそれを元に作れるとか

修理に関してもその能力の応用で問題の部分を作り直す事が可能だと、普通に凄いな。

だから、コスト的には電気で動かしている

このバス、それも電気を発生させられる

能力者に巨大な蓄電施設に充電して貰い

その電力を使用している。

人件費と廃材の運搬費が掛かっているだけで

あとは学園の自力で何とかなっている、と

・・・学園、ヤバくない?

これから行くショッピングモールも商品に関しても能力者が色々と関わっているようで

コストが押さえられているらしい。

そんな学園の知識をアリスに説明して貰いながらショッピングモールに到着した。


「おお!朝からなのに結構人が多いな!」


ただいま、朝の9時過ぎ、さすが学園都市と

言われているだけはある。

親子連れや俺達と同じ学園生、さらにカップル達が居る。


「何処から行く?」

「あー、オレは何処でも良い、得に何か欲しいって訳じゃねえしな」

「僕は後で良いよ、買い物って言うわけでは無いから」

「では、ここはあたくしが指揮を取らせて頂きますわ!」


そう言って凛が先頭に立ち俺の腕を引きながらあるお店に入っていく。

キラキラと輝く小物、眩しい美しさを持つ

色とりどりの宝石達、凛が選んだお店は

アクセサリーのお店だった。


「え?ちょっと待とうか、凛」

「どうなさいました?」

「あのさ、値段の桁がおかしくない?」

「?」


可愛らしく首を傾げる凛、そうだった。

凛はお嬢様だったのだ、学園の理事の一人の孫娘でありオズウッド家は本家は世界で

一番の豪商で何でも扱っている。

そして、このお店、オズウッドのロゴマークがはいっている。


「これは、ドロシーお嬢様、いらっしゃいませ」

「あら、カルロスオーナー、貴方が自らお店をしているお店だったの? 」

「ええ、国の本店は後継ぎに任せて、こちらの店舗でゆるりと老後の経営をしております」

「それでも手を抜かないのは貴方らしくて

よろしいわね」


一つの商品を手に取り見つめる


「銀細工の仕事も良いわ」

「お褒めに預かり光栄でございます」

「よろしい、カルロスオーナー、こちらの店舗で指輪を見せてくださる?」

「仰せのままに」


そう言って裏の部屋に入っていったこのお店の店主さん、凛の顔見知りみたいだが?


「あのー、凛さん?買うの?」

「良い感じの物があれば」

「うへぇ」


万札が平均でお安くて十枚高くて百枚以上

のアクセサリーとか庶民な俺には到底無理だ

もし値引きが効いてもたいして変わりはしないだろう。

アリスと番長は値段見て固まっているし

俺達には場違いな場所では無いだろうか?


「ご安心なさって、確かにこちらの店舗は高級店ですがここへ来たのはあたくしの私物

と言うよりも・・・」


チラリ、と凛が俺の顔を見る。

なに?どうしたの?凛がもじもじしだしたのだけど?


「ま、真澄とあたくしの婚約指輪を見に来たのですわ」

「・・・はい?」

「で、ですからっあたくしと真澄の婚約指輪です!」

「・・・えーと、待って、落ち着こう?」

「十分落ち着いでいますわよ?」

「いや、まずね、婚約指輪って、無いから」

「んもぅ!こう言った物は早いうちに買うものです!まずは婚約指輪、その次に結婚指輪ですわ!」

「いや、だから落ち着こう?」

「あたくし達の愛を深めていくための形ある証明ですわ!」

「お待たせ致しました。ドロシーお嬢様

こちらが当店での最上品の指輪にございます」

「ああっ来ちゃたよ!」


頭を抱える俺に対して凛はご機嫌良く

持ってこられた指輪を確認しようとした

その時だった。


「お邪魔するわよん」


・・・?

男の声で女性の様な口調で言葉が聞こえたような?

全員で声がした入口に顔を向けると一人

何やら物凄い存在感の人物が居た。

パッと見てもその存在の圧倒的濃さ。

筋骨隆々の肉体に女性用?のチャイナドレス

その丸太の様な脚にはガーターベルトにアミタイツ、そしてハイヒールを装備

その盛り上がった上腕二頭筋が存在を示して

シルクの手袋が筋肉で弾けそうになりながらも耐えている。

その顔はバッチリとメイクされ紫のアイシャドウと口紅に彩られてはいるが派手さは目立つが決して下品ではないなだらかなタッチだ

うん、ただひとつ、濃ゆい!!


「んん~っ良いわ、その美しさ、店主、

その宝石、月の泪(つきとなみだ)ね」


ずいっといつの間にか近くに現れていた

男?がひとつの指輪を見て指をさす。


「はい、ご指摘通り本物の月の泪にございます」

「つきのなみだって?」

「うふふっ知らないのも無理はないわ坊や

月の泪はね、贋作が多い宝石なのよ」

「左様でございます。」

「うふっそれでね?この宝石の原料が話題になったことがあるの」

「えっと、月の泪って事はもしかして月の石が原料とか?」

「ああん!素晴らしいわ!普通ならあんな石コロではではなくて月と名のつくムーンストーンを例に出す人が多いのよん!」

「へえーそうなんですか」

「そうなの、でね?何とその月の石をとある能力者が何の変哲もないこの石を限界まで圧縮してガラス化させたものがこちらの」

「月の泪と言う事なんですね?へえー、あれ

でも、じゃあこれは宝石じゃあなくて

ガラスって事ですか?」


それを聞くと男?は首を横に振る。


「確かにガラスなのだけれとその能力者は

月の泪をたったの5個しか造らなかったの

しかも、それが出来たのは後にも先にも

その能力者だけで誰も造れはしないガラスの宝石なのよ」

「へえー凄いなあ」

「それでは、店主」

「はい、何でございますか?」

「ここにならべてある指輪を含めて

ワタシがお買い上げするわん」


男?はそう言って、バックから札束をカウンターの上に並べたのだった。




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