第14話「真性の悪魔、その名は──」
何やら皆が凄く驚いている。
どうしたんだろう?俺は何か間違えた事を言ってしまったのだろうか?
「なあ、俺何かおかしな事いったか?」
俺はアリスに真っ直ぐに問いかけた。
「え?あの、それは」
「だってさ、男女の付き合いは結婚するまで
清いものじゃないといけないってさ
俺は教わったんだけど?」
「え?いや、それは合っているよ?」
「だよな?それでさ、男も女も、その純潔を20歳まで保てって」
「そ、その辺りは、その個人の考えの差だと思うよ?」
「え?そうなの?」
アリスは少しだけ頬を染めて頷く
うーん?でもなぁ、俺としてはやっぱり
そう言うのは20歳すぎてだからね、と
いわれてきたからなぁ。
「真澄、少し待ってそれは、《誰から》
教わりまして?」
「え?」
「ご両親ですか?それとも小学校の教員ですか?」
「いや、違うよ」
「では誰から?」
「それは──」
───《俺の妹》───
それを聞いた瞬間その場に居た全員が
驚いた顔をしたのだ。
いったい何だと言うのだろう?
ここ最近、
「おにぃに知らないメスの匂いがする」
と言って抱きついてきてご褒美タイムだ
ひゃっはーーーっ!!
・・・失礼しました、少々興奮しすぎました
何か皆の反応を見ると我が最愛の妹にして
マイシスターアイドルプリンセス美波里が
間違っていたとでも?
俺の中でパキリと音がした。
「うん、そうか」
「真澄?」
「《お前らは》《俺の》《妹が》《間違っている》と」
「?!」
その時の俺が見せた顔は普段見せた事がないほどに怒りに染まっていた。
思わずアリスが後ろに下がる、番長が反応をして拳を握り込み戦闘態勢をとる。
静留も身構えて俺を見ている。
女性陣が童子摩先生も含めて顔を蒼白くして
ビクリと身体を震わせた。
そう、俺は怒っている、最愛の妹から
教えて貰ったことを間違っていると言われたからだ。
「ふ・・くくっ・・・アハハはッ」
「ま、真澄?!」
ああー久しぶりだなぁこんなにも頭にきたのはさあ!
さてと、どうしようかな?
俺は一歩だけ前に出る、ただそれだけ
たったそれだけの行動をした俺に対して
皆が酷く驚いている。
「あれ?どうしたのさ、皆?」
「ッ、輪道、お前・・・《何をした?》」
「番長、俺は何もしていないよ、ただ──」
──歩いて見せただけ──
俺は笑顔でそう答えた。
ここに居る全員がただ驚いている、あり得ない事が今、起きているのだから。
「・・・ははっ」
皆が怯えた顔を見せてきた。
怒りはスッと消えて深い悲しみが俺の中によどみ溜まる。
「同じ、か」
俺は天井を仰ぎ見た。理不尽にも強大な能力を持っている皆すらも、俺が・・・
「俺が・・・恐い?」
そう、皆に聞いた、俺が、皆に怒っても
俺は手を出したりしないのに俺が、恐いんだ
その時、俺は深い悲しみの表情をしていたのだろう
皆の顔が驚くと同時に後悔の表情を見せた。
「俺が、皆に何をしたって言うんだよ
俺はっ!ただ最愛の妹が間違っていると言われた感じだから怒っただけだっ!
ただ・・・それだけなのにさぁ・・・
能力が強い皆まで・・・俺を───」
───化け物だっていうの?───
「おにぃ」
「うん?」
「おにぃ、ダァメ」
急に現れた美波里が俺に抱きついてきた。
するととても眠たくなってくる。
「み、はり?」
「おやすみ、おにぃ」
俺の額にチュッと軽いキスをした。
そこで俺は意識を失った。
───サイド美波里────
あーあ、おにぃに掛けてたプロテクトが
消えちゃってる。
今度は入念に掛けておかないとね。
「なでなで、おにぃ、良い子良い子」
「う・・ん」
「あなたは、誰です?」
「んもぅ、今はおにぃを撫でてるのっ
年増は話しかけないでくれません?」
「なっ!?あたくしが年増!?」
「輪道をそう呼んでいるっつー事は
お前が輪道の妹か」
「そだよー」
おにぃの頭をわたしのお膝の上に置いたまま
何も知らない人達に答えてあげる。
それにしても
「アンちゃん、起きて」
「はっ!?」
「久しぶりー」
「え?ミーちゃん?」
「あのね、アンちゃんおにぃは《わたしの》だって、言ったよね?」
「ひぃっだっ、だってぇ」
「まったく、駄々をこねておにぃを困らせて
アンちゃんだから、多少は許してあげるけどこれ以上は、駄目だよ?」
わたしがそう言ってあげると青い顔をして何度も頷く。
そうそう、それで良いの、わたしを敵にしたいのならそのままで良いけれど・・・ね?
「あ、そうだ、何も知らない人達に
やさしーいわたしが説明をしてあげまーす」
わたしはまずおにぃの事を教えてあげた。
「おにぃはね、とっても優しいの
初めて能力が発現した時もね、わたしを守るために使ってくれたんだよ♥」
あれはわたしが三歳くらいの時だった
当時は五歳のおにぃはとっても可愛くて
いつもわたしをおんぶしてくれていたの
その頃からすでにわたしはおにぃが大好きで
離れなかったもん。
でも、ある時に事故が起きた、起きてしまった。
その頃はまだわたしは反応できなくて
ボールを追いかけて道路に出てしまったのね
気が付いたら目の前にはトラックが迫ってた
あ、轢かれちゃう。そう思ったよ。
わたしはね生まれた時から能力に目覚めてた
でも、使うのがちょっと下手くそだったのね
あーあ、もっとおにぃと一緒にいたかったな
そう思ったのあとはもう迫るのは死だけ
その時だよ?何と!おにぃが!わたしを助ける為に!能力に覚醒したのです!
パチパチー、そうだよ、今さっきあなた達が
体験したのがそう。
「おにぃが初めて使った能力、それこそが
《時間の概念》」
その場に居る人達が息を飲む
「すごいよねー、おにぃだけが停められた
時間の中を自由に出来る、そうだよ
だからおにぃには身体の強化は必要ないの
だってそうでしょ?あなた達だってそう思ったよね!
どんなに能力が強力でも何もさせてもらえないなら意味がないって!」
わたしは何も知らないこの人達に教えてあげた。
その事実を、だって、この人達は───
「ふふふ、ねえ、どんな気持ち?」
「な、なにが?」
「ふー・・まだ、シラを切るんだね
言ったよね?おにぃは、優しいの!」
わたしがそう言ってあげたらみぃんな、
苦々しい顔をしている。
「この一週間、分かったよね?
おにぃが優しいくて良い人で温かいひとだってさあ」
顔をうつむける人達、後悔を浮かべた表情をしている。
「あは♥本っ当に自分勝手な人達だねー
わたしを助けたおにぃがさ、周りの人達やトラックの人になんて言われたか知ってる?」
その先は言わないでと言わんばかりの表情
「それは、あなた達が知ってるでしょー?
言ってあげないと分かんない?本当に?
ねえ?わかりませんかー?」
すうぅ、と息を吸ってわたしは言葉をはいた
「バ・ケ・モ・ノ」
全員が膝から崩れ落ちた。
おにぃはこの人達の事を信じたのに
この人達は、おにぃを信じなかった
それがむかつく。おにぃを傷つけた。
わたしのおにぃを壊そうとした。
「あははっなんで?なんで、そんなショックを受けてるのー?自業自得じゃん!?
あんなに優しいおにぃがだよ!?
あんなにっ傷付いた顔したんだよ!?
あなた達にそんな風に傷付く権利なんか
ないでしょっ!!」
苦しそうな人、泣いてる人、謝ってる人
叫んでいる人、自身を傷つける人
頭を抱える人、狂ったように笑う人
自らの首を絞める人、蹲って動かない人
「ふん、苦しみ方も人それぞれねー」
わたしはおにぃに再びプロテクトを掛ける
何重にも、辛い思いをしないように
壊れないように、痛くないように
「ミーちゃん」
「・・・はぁ~、分かってるー」
「ありがとう、ミーちゃん!ぎゅ~っ」
「もお~、今回だけなんだからー」
わたしがそう言うと、苦しんでいる人達に
言ってやる。
「チャンスをあげる」
「・・グスッ、ちゃんす?」
「あ~も~、女の子が涙、鼻水まみれは
やめなよー!もうー」
わたしはハンカチを取り出して泣いてる人の
顔をごしごしと拭いてあげた。
「むぐぐっ」
「よしっきれいになったーっと
あなた達も聞きなよ、一回しか言わないからねー」
わたしの能力を使って記憶を消す
「え?それは」
「潜在的意識の部分はいじらないから
わたしはチャンスをあげるだけ
また、同じ選択をしたらもう知らない」
「ミーちゃん、ありがとうね」
「むー、本当はやぁ何だけどおにぃも
信じたいと思ってたからおにぃの意思を
汲んでってことだよー」
一応説明、わたしの能力の一部であなた達の記憶の表層、さっきの記憶を消す。
でも、かんじんの深層の記憶は残すから
おにぃにしてしまった事の後悔が残る。
それを核にして関係をやり直して貰います。
「お願い、致しますわ、あたくし、真澄に
酷い事を」
「言っとくけどおにぃは《わたしの》、ですから」
「むっでしたら、奪うまでですわ」
「・・・ふふふ、元気でたねー」
「!・・・」
「もし、おにぃが選んだなら、愛人でもいいですけどー」
くるりと回って能力を使おうとする
「待ってくれ」
「むー、何ですー?」
「輪道の妹、お前はいったい?」
「あー、まあ、全部わたしの記憶は消すつもりですし、全部教えてあげましょうか?」
わたしの能力は《全能》です。
「・・・は?」
呆けた顔をする人達を尻目に教えてあげた。
《ジ・オール・ザ・マイティ》《全能》
ありとあらゆる能力を使う事が出来る。
神の力、しかし、それは限りある能力、
その能力を知っていなければならないと言う
制約があった。
《全知》それは全ての能力を知るための能力
それが使えればと思ったが生憎使えなかった
故の限定的な《全能》だ。
生まれてすぐわたしの意識はしっかりとあった。
そこで得たのは《隠蔽》PSY値を測れなくする能力だった。
その能力を得たのは幸いだった。
お陰でやりやすかった、能力を使うのも
何もかもがそして、
《付与》《エンチャント》、これのお陰で
おにぃの膨大なPSY値を隠す事が出来た。
普段は《並列思考》《千里眼》を使用して
おにぃを見守っている。
「と言うわけー」
「・・・マジかよ」
「まあー余りにも膨大なPSY値が溢れた時くらいしか機械に計測されないようにしてるからー」
「おい、まさかただの溢れたカスが数万PSY値だっていうのか?」
「?そういってるけどー?」
「・・・輪道の本当の数値は?」
「あはは、知らない方が良いよー?」
だって、わたしだっておにぃの底がみえないしー?
さてと、今度こそ能力を使いますかー。
「ではでは、さようならー」
おにぃ、今度こそ、受け入れて貰えると
良いね。
もし、受け入れて貰えなかったら
わたしが世界を滅ぼしてやるんだから♥
「ミーちゃん」
「アンちゃん、あなたはまた、消さないのー?」
「うん、うちはずっと覚えておきたいから」
「そっかー」
「ミーちゃん、今度、真澄兄さんにくっついて遊びに行っても良い?」
「好きにすればー?」
「うん、好きにするね」
アンちゃんにおにぃを任せてわたしは帰る
本当のわたしを知る唯一の友達
魅尋 杏瑚、おにぃの次に大事な恋敵
おにぃの一番はわたし、それは絶対に
揺るぎはしないからね?
そして、おにぃを傷つける悪魔、
それは《人間》
───いつか滅ぼしてやる───
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