第4話「ボディガード、襲撃?!」

静まりかえる教室もなんとか場を持ち直して俺は空いている席へ足を運んだ。

カバンを机の横に掛けて一息つくと隣から声がかかる。


「エヘヘッさっきぶりだね」

「あぁ、さっきぶりだなアリス」

「んっ・・・もうっ何か輪道君に名前呼ばれるのくすぐったいや」


少し頬を朱に染めるアリスに対してもしかするとあまり名前で呼ばれたりしないのだろうか?


「嫌なら伏義野って呼ぼうか?」

「え?ヤッ嫌じゃ無いよ!その、輪道君には、あの、ね?お友達だから名前で呼んで欲しいなって、ダメ?かな?」


もぉう!何なのこの子は!?

俺を道から堕とすつもりか!?

俺は平常心を保ち素早くこたえる。


「じゃあ、アリスのままで、な?」

「うん!」


うん、とても良いお返事を頂きました。

すると周りがざわっと騒ぎはじめる。

どうしたんだ、いったい?

周りに耳を澄ませると耳にはいってくるのは あの跳び兎が、とかいつもの冷徹な顔が、とか、え?はじめから人好きそうな顔で俺は対応されてたんだが?

前の席の男子が怯えながらもアリスに話しかけてくる。


「あ、あのぉ伏義野さん?」

「《スンッ》何か?」

「ひぇっす、すみません」


・・・え?あれー?アリス、お前どうした?

何いまの冷たい表情は、え?クラスの皆と仲わるいの?


「えーと、アリス?」

「《ニコニコ》なぁに?輪道君!」


オゥ・・・なるほど、アリスが他の奴を嫌っている訳か何かあったのか・・・まさか

アリスの外見か?絶対そうだろうこれは

童子摩先生ぇクラスのケアくらいしようよぉ

俺はこめかみをもんだ、どうするのこの問題は!?

そう思いながら担任教員である童子摩先生を見るとこちらに気がついたらしくグッと親指を立てやがった。

嘘だろ?!生徒に丸投げしてきやがった!


「あ~、《汗》アリス、ちょっと聞きたいんだがクラスメイト--」


《バターンッ!》


「失礼するわよっ!!」


アリスに話しを聞こうとしたら勢いよく教室の扉が開け放たれ大きな音をたてる。

そこに現れたのはあきらかに中学生な感じの女の子が立っていた。

金髪、碧眼でさらりとなびかせた髪型はなんとツインテールだ。

その愛らしい顔は幼さを残しながらも凛とした雰囲気を纏っている。

カツカツと靴の音をさせて何故か俺の前までやって来てその柔らかい手のひらで俺の顔を包み固定する。


「え?」

「輪道 真澄ね?」

「は、はい?」

「んふ~っフツメンだけどかわいらしいお顔をしているじゃない!」

「あ、ありがとうございます?」

「まずはこれはあたくしからの歓迎の印よっ!」


スッと彼女の顔が近付いてくる。

《チュウゥ~》

と・・・俺のおでこに熱烈なキッスをかまして来たのだ。


「は?」

「ちょっ!?生徒会長!何をしているんですか!?」

「ンフフ、伏義野きゅんヤキモチかしらん?」

「は?生徒会長?」

「輪道君から離れてください!」


次の瞬間、アリスが能力を使用したようでいつの間にかアリスの肩が当たる位置に椅子ごと移動していた。

助かったがこのあきらかに中学生な女の子が生徒会長?


「えーと、年上?ですか?」

「ええっ!この学園の高等部3年Sクラスにして生徒のランキングで堂々たる1位に君臨しているわ!」


ふんすっとドヤ顔をして胸を張る見た目中学生な生徒会長、うん、何かほっこり癒されますな・・・しかし、なんでいきなりでこチューを?


「えー、なんでまたここまでいらしたんでしょう?」

「あら?教員の方達から聞いていないのかしら、あたくしがこの学園内にてあなたの身の安全を守る為のボディガードの一人よ?」

「・・・そうなんですか、童子摩先生には会ってからのお楽しみだとか言われて何も教えてくれてないので」

「まあ、どうりで・・・童子摩先生らしいことで」


キッと童子摩先生を睨みつける生徒会長

・・・嫌いなのかな?

童子摩先生の方へカツカツと靴音をさせて向かっていく生徒会長、それに対して童子摩先生はニヤニヤして生徒会長を見ている。


「童子摩先生?職務はきちんと全うして頂けないかしら?」

「いやぁ、だってその方がサプライズ感あって良いだろ?良いじゃんお嬢ちゃんの好みどストライクなフツメン君だろ?輪道はさぁ」

「それはそうですが、ボディガード対象の写真すら見せないのはどうかとあたくしは思うのですが!」

「じゃぁ、やめるか?」

「ッ?!」

「外見を知らせなかったのは何処で輪道の顔が知られるかわからんかったからだ」

「・・・それは」

「輪道をその日すぐに学園にスカウトしたのはテロリストや犯罪者どもに時間が経つほど知られる危険があった、ましてや拐われる可能性が高すぎたからだ」


え?何か凄く恐ろしい言葉が出てきたのですが、待って、俺って何かに狙われてるの?!


「良いか?お嬢ちゃん・・・お前が選ばれたのは比較的にまともな方だからだ。

学園生徒ランキング1位だからじゃぁねぇ

輪道は身体的能力値は能力無しの人達と変わらん、だからこそ足並みを揃えれそうな奴らをボディガードに何人か選んだ。

そこん所は履き違えんなよ?」

「・・・理解しております。童子摩先生」

「なら良し、あぁ、一応クラスの奴らにも言っとくが輪道に絡むなよ?ボディガードの連中には絡む奴らには潰して構わんと能力制限解除をしてるからな?」


童子摩先生のその言葉を聞いた一部のクラスメイト達がビクリと震えていた。

まぁ、絡む気だったのだろうがそんなことよりも俺が狙われていると言う事が引っ掛かりを覚えている、今、童子摩先生に聞いたほうが良いだろう。


「あの童子摩先生、聞きたい事が」

「あぁー、すまんな本当はもう少し落ち着いてから話すつもりだったんだが」

「いえ、あのー俺が狙われているなんて思うもしてなかったので」

「家族が心配か?」


童子摩先生のその言葉を聞いた時、

ドクン・・・と心臓が跳ねた気がした


「ッ、はい」

「安心しろ昨日の内にあの周辺一帯と輪道の家族には警備と護衛がついているからな」

「そう、ですか、よかったぁ」


ほっと息をついて椅子からずり落ちそうな俺を隣からアリスがささえてくれた。

心配そうな顔をして俺を見つめてくる。


「ありがとう、アリス」

「ううん、輪道君は大丈夫なの?」

「まぁ、家族が危険な目にあわなかったら俺自身はそんなに、かな」

「そうなの?」

「ああ、だってさ学園の方が安全性では地元にいるよりかは大丈夫そうだし生徒会長がボディガードしてくれるんだろ?」


だったら大丈夫だろ、とアリスに笑いかける

するとアリスが俺の右手を両手で包み込み俺の瞳を見つめて言った。


「僕、も」

「うん?」

「僕だって、輪道君を、大切なお友達の輪道君を守るよ!僕もボディガードの一人だから!」

「え?そうだったの?」

「うん!これでも僕、結構強いんだよ?」


はにかむように笑顔を見せてむんっと小さく胸元でガッツポーズをするアリス


「無理はしないでくれよ、俺だってアリスが怪我したりするのは嫌だからさ」

「うん!出来る限りはしないようにするからだから、輪道君を、守らせてね?」


ぐはぁっ!?アリスの奴、ここで上目遣いアンド涙目とか逆に俺を的確に仕留めにきてないか!?落ち着いていこう、アリス、友達、あと男、よし、大丈夫だ。


「ああ、これからもよろしく」

「ふふっよろしくね」

「あたくしもお忘れなく」

「うぉっ!?いつの間に」

「輪道君、自己紹介がまだでしたね

あたくしは「ドロシー・凛・オズウッド(ドロシー りん オズウッド)」生徒会長を努めています。気安く接してもらって構わないから」

「と、言われましても先輩ですし」

「駄目、かしら?」


その場にしゃがみこんで瞳を潤ませて見てくる生徒会長、あら、可愛らしいまるでうちのアイドルマイシスタープリンセスのように全面的なあざとさを見せつけてくる。


「わかりました、ああ、分かったから!」

「では、どちらでお呼びになってくださるのかしら?」


ジーッと熱い視線を向けてくる生徒会長

なんだろうか、何か試されてる?


「・・・凛」

「!!・・・ふ、んふふふふっ♥」

「凛?」

「もう好き!」


ガバリと身体全体で抱きついて来た生徒会長もとい凛、あ、柑橘系の良い香りがするとか俺は思いながらもご乱心した凛を引き剥がそうと抵抗する。


「うぐぐっ、力、つえぇっ」

「まさかこんなところで運命的な出逢いがあるだなんて!真澄!結婚式はいつがよろしくて?!」

「何故そこまで話しが飛んだの!?」

「真澄、大丈夫です」

「な、何が?」

「真澄が18歳になったらすぐに結婚式をいたしましょう!」

「大丈夫じゃあなくない!?」

「んふ、んふふふふっ♥」


はい、とても良い笑顔の凛と引き剥がそうとする俺、爆笑している童子摩先生を視界にはいりつつ俺は思います。

《アリス、助けて》と・・・・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る