第2話 捻くれ者の俺の学園生活②
教室に入ると席に着く。
多少目を付けられているくらいで、席が無くなったり、落書きされたりはしていない。さっきの連中も変わらず騒いでいるだけで俺が教室に入ってきたことなど認識もしてない様子だ。
流石に高校生にもなれば、そんなものだ。それも入試を経験してきたのだ。落ちた者もいる中で突破してきている。幸いなことにそれくらいの分別はある。
「おっはよー!」
座ってスマホをいじっていると、教室の扉を開くと共に聞こえてきた明るい声。
登校してきたのは、
彼女はこのクラスのアイドルというよりはマスコット的存在だ。
栗色の髪のショートポブであり、ぱっちりと二重の大きい目に赤み残る頬とあどけなさを感じさせる顔立ち。また、背丈も女子にしても小柄であり、しかし仕草は大げさ。さらにころころ変わる表情と、庇護欲をそそる。
「よう、須郷今日も元気だな。無駄に」
「無駄にとは何事っ!」
「七瀬ちゃん、おはよう。飴ちゃん食べる?」
「うん、食べる! ありがとう」
とクラスに入って来るや否や、早速の人気者ぶりを発揮している。
そんな須郷が向かってくるのは俺の前の席。そこが須郷の席なのである。
「おはよう。
「おう、おはよう」
そして、俺がクラスで一部から目を付けられ、浮いている理由。それはこの須郷七瀬と揉めたことにある。
そうは言っても、七瀬とは普通にこうして挨拶するくらいには関係性を回復しているし、隣人として会話もする。
「今日はあれあるよね」
「あれ?」
「英語の単語テスト」
「……まあ、そうだな」
確かに、ある。
だが、それは毎回ある簡単なテストだ。内容は予習の意義を含んだものであり、正答率は成績に加味されないと明言されている。
「勉強はした?」
「いや特にはしてないけど」
「あ、そうだよねー。授業前に教科書見るくらいだよね。あれって」
「そうだな、うん。やってもそれくらい」
「だよねー……」
特に弾まない会話。ただニコニコとこちらを見ている七瀬。
これは何かこっちから喋った方がいいのだろうか? 相手が七瀬だけに無理に会話をするな、とも言いずらい。厚意で話しかけてくれいるのだろう。有難迷惑ではあるが。
まあ、新たな話題を投下するのも面倒だ。
「……えっと、七瀬はしたのか?」
「へ? な、何? 何を?」
「いや、英語の勉強」
「何もしてないけど?」
ん? 何の話? とばかりに疑問の表情を浮かべる七瀬。なんで、そんなイノセントな表情が出来るんだ。
「そうか。そうだよな、わざわざ勉強するほどのものでもないしな」
なんなんだよ、と言いたいのを堪えた。
「だね。あ、そういえばさ今日って――」
と、七瀬が別の話を始めようとした時に、割って入ってくる声。
「――おーい、須郷。何の話してんだ?」
「
小山と呼ばれた男子生徒はマッシュヘアーのクール系の雰囲気イケメン。一軍ではないが発言力のある不良っぽいグループの一人だ。
「そんなことより
「え? 端柴ちゃん? なんだろー」
小山が顎で指す方を見るとひらひらと手を振る端柴。
端柴
傍から見ていて非常にむかつく少女だ。いや、彼女だけに限らず端柴を中心とする不良グループ全般が。
「なぁにー、端柴ちゃん?」
ともあれ、イノセントガールこと七瀬は葵の方へとちょこちょこ駆けて行く。
そして小山は去り際、一瞥して吐き捨てる。
「……調子乗んなよ、お前」
ぼそりと冷たい声。
ふせて寝たふりで、聞こえないふり。
反論してこない俺に小山が去っていく。
それを見計らい、呟く。
「俺に当たってんじゃねーよ」
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