18 意味深なセリフ
「一体これは何の騒ぎなんだ!!」
背後で大きな声が聞こえた。振り向くと、そこには目を見開いたアドニス様と……ベネットさんが立っていた。
「あ……アドニス様。御機嫌よう」
ビアンカ様は振り上げようとした手を下ろすと、笑顔でアドニス様に挨拶する。
「ビアンカ。今、君は一体フローネに何をしようとしていた?」
「い、いえ。別に何もしておりませんわ」
「左様でございますか? 私の目には、ビアンカ様がフローネ様に手を上げようとしていたように見えますが?」
ベネットさんが答える。
「ベネット! あ、あなた……!」
「そうだな、俺にもそう見えた」
「アドニス様!」
ビアンカ様の顔が青ざめる。
「ビアンカ、君はアデルの為に良かれと思ってこの部屋を用意したのかもしれないが……アデルの好きな色は水色だ。シュタイナー家で暮らしていた頃からずっと水色に囲まれて暮らしてきたんだ。第一、俺はアデルは水色が好きだと伝えておいたはずだが? 何故、ピンクの部屋を用意したんだ?」
「そ、それは……女の子は、みんなピンクが好きだと……私もそうですし……」
俯きながら答えるビアンカ様。
「自分の意見を強引に押し付けるな。アデルの気持ちを第一優先するべきだろう? ……部屋の模様替えはビアンカには関係ないことだ」
「っ! す、すみませんでした……」
ビアンカ様は項垂れ、去って行った。
「大丈夫だったか? アデル、フローネ」
心配そうな顔でアドニス様がこちらに近づいてきた。
「は、はい。私は大丈夫ですが……サラが……」
「え? サラが?」
アドニス様がサラを振り返った。
「わ、私なら大丈夫です!」
サラは首を振るも、よく見ると頬が赤く腫れている。
「……サラ、ビアンカ様にやられたのか?」
ベネットさんが静かに尋ねる。
「……はい。お部屋の内装をやめさせようとなさっていたので、お止めした時に……」
「そうだったのか……」
ベネットさんがサラの頭をそっと撫でた。
「サラ、ありがとう。ビアンカを止めてくれて」
「い、いいえ! 私はアデル様のメイドですので!」
「ありがとう、サラ」
私もサラにお礼を述べた。
「フローネさん……」
するとベネットさんがアドニス様に声をかけてきた。
「アドニス様。サラの頬の手当をしますので、半日お休みさせて頂けますか?」
「そうだな、そうしてくれ」
「で、ですが……」
アドニス様とベネットさんの会話にサラは驚きの表情を浮かべる。
「はい。アデルのお世話は私でも出来ますので、サラを半日お休みさせてあげて下さい」
私も二人の話に同意すると、サラはようやく納得してくれた。
「……ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、半日お休みさせていただきます」
「では、行こう。サラ」
「はい」
こうして、サラはベネットさんに連れられて去って行った。その様子を見届けると、アドニス様は内装業者の人たちに声をかけた。
「皆さん。お騒がせしました、作業を続けて下さい」
『はい!』
内装業者の人たちは返事をすると、再び作業の続きを始めた。
「アデル、驚いただろう?」
アドニス様が私の後ろで隠れていたアデルに声をかけた。
「う、うん……怖かった……」
「アデル……」
私はそっとアデルの頭を撫でた。
「フローネ、ありがとう。アデルをかばってくれて。これで決心がついたよ」
アドニス様が意味深な言葉を口にする。
「決心……ですか?」
「そうだよ、それじゃもう二人は部屋に戻っていいよ。次にこの部屋へ戻ってきた時は、きっとアデルの好きな水色になっているだろうから。
アドニス様は笑顔を向けると、その場を去って行った――
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