【読み切り】キミは僕の心の中に生き続ける。

紅葉

『佐々木綾香 1』

 突然の自己紹介で申し訳ないんだけど、僕には能力のうりょくがある。

……言葉が足りないか。語尾も変えて、後は読み方を変えた方が正しく伝わるかもしれない。

 本当はこんな読み方しないのは分かっているし、こんな読み方するやつを世間では中二病だとか痛いやつだとか言ってバカにするんだろうけど、それでもえて、伝わりやすいのならと僕はこう読もう。


 僕は、不思議な能力ちからを持っている。


 上手く伝わったのだろうか────……伝わった前提で話を続けよう。

 僕のこの能力は生まれつき持っていた訳では無くて、先月から。

 先天性せんてんせいでは無くて、後天性こうてんせいのもの。

 僕はこの能力をある人物から与えられたのだ。

 

 二度と、同じ過ちを繰り返さない為に……。

 

               *


「────ないで!」

「ん?」


 昼休みの事。

 給食を食べ終えた僕は暇な時間を共に過ごす友達がいない為、図書室で時間を潰そうと廊下を歩いていた、その道中。正確には、僕の所属する2年2組の教室から1つ飛ばした2年4組の教室を横切ろうとした時。4組の教室から声が響いて、その直後に扉から1人の女子生徒が飛び出して、どこかへと走り去ってしまったのだ。


「待って!」

「止めときなって!」

 

 飛び出して行った生徒をA子だとして、彼女を追いかけようとした生徒をB子。B子を止めようとした生徒をC子として、様子を観察する。


「もう……何を言ったって無理だよ。どうして私たちを避けるのか、怒っているのか、何回聞いても教えてくれないし。今みたいに逃げちゃうし」

「だからって、諦めちゃだめだよ!絶対、諦めちゃだめなの!私たちは綾香あやかの友達だもん……私たちが諦めたら、もう前までの綾香は帰ってこなくなっちゃうかもしれないんだから」

「────私だって、諦めたくない。綾香とまた遊びたいし、話もしたいよ……でも、綾香はそうじゃないんだよ。だから、私たちに出来る事なんて、何も無いんだよ」

「でもっ────」


 B子が諦めずC子を説得しようとするがどれも響かず、掴まれた腕が放されない状況が続いた。

 

「最悪な事態にまではまだ猶予はありそうだけど、女の子は繊細だからな」


 昔言われた事を思い出しながら、放課後に再び4組を訪れる事を決める。

 今彼女たちに話し掛けても火に油を注ぐまではいかないかもしれないけど、面倒な事になりそうなので、取り敢えず当初の予定通り図書室へと向かう事にした。


 

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