第18話 VTuberデビュー
俺は雪本のために何かをしてらそれをしていく中で、自然と想いを伝えられるように真摯に誠実な気持ちで生きていくと決めた。
雪本のために、と考えた時に浮かんできたのは、やはり俺の大好きなASMRについてだった。リスナーの意見として、何か有益なものをひとつでも雪本のために落としたかった。
だが、雪本は、最近ASMRというよりも、VTuberとしての活動が増えていた。キャラを演じながらゲームをしたりという動画だ。
今までは、ASMRがほとんどの動画投稿で、たまーにASMRのライブ配信を行う星霜 冷だったが、最近はVTuberとしてのゲーム実況などのライブ配信が多くなっていた。
まぁ、ジビエ料理を食べに行った時も、VTuberのような活動をすると言っていたし、前も、好きなVTuberの話をしてたから、別におかしくは無いのだが。
だけど、やっぱり星霜 冷には、ASMRを頑張って欲しくて。もちろん、雪本がVTuber的活動をしたいというのなら応援するが。ASMRとVTuberどちらを取るのか。どっちもやっていくのか。
その真意はどうなのかを、雪本に放課後聞いてみることにした。
◇
「そういえば、VTuber始めたんだよな?」
「はい。前からやってみたかったので」
「ASMRはどうしたんだ?」
「ASMRもちゃんと動画は出してますよ?まぁ、3日に1回のペースにはなりましたけど、、」
「なんか、、その、VTuber星霜 冷としてのゲーム配信の方が力入れてる感じがしてだな」
「うーん、、まぁたしかに今はそうかもしれません。最近ASMRの再生数が伸び悩んでる気がして」
「そうなのか?増えてる気がしてたけど」
「それはそうなんですけど、他の配信者と比べるの伸び率が悪いんです。それと比べてゲーム配信は伸びますし」
「なるほどな……、雪本はどっちが本当はやりたいんだ?再生数とか関係なしに」
「私は、やっぱりASMRには力を入れたいと思っています。でも正直伸び悩んでるんです。今」
「そうなのか」
こういう時に、少しでも、力になれたなら、ちゃんとした良いアドバイスを送れたら、どんなにいいだろう。
「俺もなにか手伝うことがあればなんでも言ってくれ。そ、相談とかなんでも乗るからさ」
今の俺には、これしか言うことが出来なかった。
「はぁ。まぁ、困った時は、その、頼らせてもらいます。でも、配信とかの経験とかはないですよね?」
「経験はない。でも、雑用とかなら手伝うし、多少なり意見も言えると思う」
「そう言って貰えると心強いです」
「でも⎯⎯⎯、マネージャーと話し合ってVTuber活動に力を入れると決めたので、あまりASMRの雑用は無いかもしれません」
「雪本、マネージャーいたのか」
「一応、はい。色んな面でお世話になってるんです。編集とかも含めて」
「なるほどな。雪本は高校もあるし、1人でやるのは大変だもんな」
「はい」
雪本の本心としては、ASMRをもっとやりたいが、色々な大人の事情があるのだろう。
俺だけの雪本じゃないんだ。俺が雪本のために、と思うように、他の誰かも、雪本のためにと思ってやっていることがある。
これもそのひとつなのだろう。
それでも俺は、雪本の本心を尊重させたかったし、俺自身ももっと雪本はASMRで人気になれると思っていた。
◇
家に帰って、星霜 冷の配信を開くと、今日もVTuberとしての星霜 冷がでてきた。
『ASMRの動画は出さないんですか?』というひとつのコメントが目に付いた。
今日はまだASMRの動画は上がっていなかった。そのコメントを、星霜 冷は拾った。
「その事についてなんですけど、これからASMR動画は減らして、こっちを中心にやっていこうかなと思っています」
雪本は、確かにVTuber活動に力を入れるとは言っていた。
でも、ASMR動画を減らすとは言っていなかった。
モヤモヤとした気持ちが再び俺の中で募っていく。
心做しか、雪本の声も少し元気がないように聞こえて、やっぱりASMRをやりたいけど無理して方向転換しているように思えてしまう。
もしそうだったとしたら、、、俺は⎯⎯⎯、、、
雪本はマネージャーと上手くいっているのだろうか。もしかしたら、やらされているのかもしれない。俺はマネージャーがどんな人なのかについても気になった。
◇
俺は翌日、学校でそのことを雪本に聞いていた。
「昨日の配信見てたんだけどさ」
「はい、なんですか?」
「ASMR配信減らすって言ってたよな」
「あぁ〜、その事ですか。また、マネージャーと話したんですけど、今よりももっとVTuberとしての活動を増やすことになってスケジュール的にもキツイので減らそうってことになったんです」
「雪本は、それでいいのか?ASMRの方が大事じゃないのか?」
「まぁ、そうですね、、確かにASMRの方が大事です」
「マネージャーにはその気持ちとかを伝えたことは?」
「マネージャーも考えがあっての提案なのでなかなか言い難いです。私もその通りだなって思うところもありますし」
「でも、やるのはやっぱり雪本だからさ」
「なんなら、俺が言ってやるよ」
「え?さすがにいいですよ」
「いや、、俺も手伝いたいから、マネージャーと話したいなって思って」
「なるほど、、、そういうことでしたら」
俺がマネージャーの代わりになってやる。そうすればきっと絶対もっと星霜 冷が伸びて、雪本が人気になるはずだ。
しゃしゃり出ているかもしれないが、俺はどうにかして、雪本のために頑張りたかったのだ。
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