3話 アランという魔術師は……
次の日。洞窟内で一泊過ごした私と、アランさん。寒くて寝れるか? と思っていたが、アランさんの炎属性の魔法のおかげで安心せいて寝れることが出来た。氷なのに炎属性の魔法を使っても溶けないのか心配だったけど、アランさん曰く、あの洞窟はヌシがいるらしく、そのヌシが消滅する以外は何をしても溶けないらしい。そのヌシと遭遇してしまえば一瞬で氷漬けにされるということで、私たちは洞窟から外の世界へと足を踏み入れることにした。
外の世界は雲一つない晴天で、小鳥たちのさえずりが聞こえ、とても気持ちがいいものだ。アランさんも昨日よりご機嫌な様子だ。
「アランさん。これからどうするんですか?」
そう、私はアランさんの呪いを解くために旅をすることにしていたんだけど、アランさんも一緒に旅をしながら、私に魔術と魔法を教えてくれることとなったまではいいけど、どこに向かうのか聞いていない。隠しているわけでもなさそうだし……。
「あぁ、そうだったね。今から僕の親友がいる国に行くよ。あいつの方が魔法を知り尽くしているからね」
「親友いたんですね」
「友達ゼロみたいな感じで言わないで? 友人の一人二人くらいいるよ。あいつのところに、君と同い年の魔法使い見習いがいるから、互いに何かと高め合えると思うよ」
私と同い年か……。生前は友人や幼馴染なんていなかったからな~。意外と楽しみにしている自分がいる。性格悪かったら最悪だけど。
「大きな学園があるんだけど、僕とあいつはその学園の生徒だったんだ~」
「えっ、ということはアランさんおいくつなんですか?」
呪いが解けなけれな〇ぬことが出来ないって言ってたから、何百年とか生き抜いた魔術師なのかと思ってたけど、親友も生きているんだったら……。
「ん? 僕の歳かい? これでも百歳だよ! あいつはエルフだからね~、僕と同じ歳なんだ!」
アランさんはその場に立ち止まり、私にドヤ顔をかましてきた。だが、動揺せず、アランさんの横をスタスタと横切った。
「反応が欲しいな~」
「へー」
「聞いた本人だよね? ねっ? ねぇってば~」
成人男性が成人前の少女に後ろからくっついてくるって、異常過ぎん? これ、私がいた世界だったら、セクハラで訴えられてるよ。
「しつこい。うるさい。エルフの特徴なんて知ってますから、相手がエルフだってわかったら動揺しないですよ。人間だったら動揺しますけど」
「えぇ~。つまんないな~」
子供か! ついつい声に出しそうになるのをグッとこらえた。
「それで、その学園ってどういうとこ……ろって、この魔物なんですか?」
森の中を歩いていると、巨大なぷよぷよした物が、私たちの前に立ちふさがった。なんだかとっても可愛い。青いぷよぷよ……。もしかしてこれって、かの有名な『スライム』というものじゃないか!?
「この魔物は『スライム』。通常のスライムはこんなに大きくないけど、これはスライムの親分だね。巣が近くにあるんだろう。いい機会だ! 君に『魔術』を見せよう!」
アランさんはそう言うと、身長と同じ長さの杖を右手に掲げると、スライムの上に魔法陣が現れた。
「
アランさんがそう唱えると、魔法陣から謎の光が雨のようにスライムに向かって降り注いだ。するとスライムはそのまま消滅してしまった。
「あの巨大なスライムを……一瞬で!?」
「今使った魔術は『白魔術』と言って、相手を癒すのが『白魔術』なんだ。でも、今のは相手を癒すのではなく、浄化するもの。たとえば、悪魔や穢れている者たちに使用する。魔物も対象さ」
すごいものを見せてもらった気がする……。この人から色々教わるなんて、昨日の私に言い聞かせたいわ。ただの変態魔術師ではなくて、立派な魔術師なんだって。
「そろそろ目的地に着くさ。魔物が襲ってきても安心し給え!」
「分かりましたから、またくっつこうとしないでください! 変態魔術師!」
さっきの言葉は撤回する! やっぱしこの人は変態魔術師だっ! そう心の中で叫びながら私は、また後ろからくっつこうとするアランさんから逃げながら、アランさんの親友がいる国を目指したのだった。
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