転生氷魔法使いと願いの果て

桃井桜花

序章

人生終了のお知らせ

 普通のOLライフ。




 何事もなく、平和に暮らして生きていた私に突然、人生終了のお知らせとなる出来事が訪れてしまった。







 私の名は山本照子やまもとてるこ




 独身歴30年の普通のOL。小規模な株式会社に勤めている。




 毎日、後輩がやってしまったであろう、ミスの責任取りをし、上司のご機嫌取りをしながら、仕事に追われている今日この頃。




 そのせいか、体調を崩しがちの日々を送っている。




 だが、あの課長ハゲに、体調不良くらいで仕事を休むな! と怒鳴られる始末なため、仕事はやすやすと簡単に休めることなんてない。




 残業は毎日。




 しかも、残業代も存在し無い。




 いつか、あの課長ハゲを訴えてやる! そんなことを心の奥底にしまいながら、今日も残業代なしの残業を終わらせ、唯一の癒しが待っている、我が家へ帰る準備をし始め、夜の街へと足を踏み込んだ。







 家に帰る前に、癒しのお供となる酒とつまみを補充しに、コンビニに寄り道をし、信号が青になるのを待つ。




 ちなみに、私の癒しは漫画。




 BとLモノを読むのが、心と目の保養になる。




 会社の後輩や上司やらに「恋人を作らないなんてシンジラレナ~イ!」って言われたこともあるけど、人それぞれでいいじゃん! 恋人いないのは負け組なのかっ! と内心キレつつ、「あはは」と愛想笑いをするのが、ここ最近の日常に挟まれる。




 私の人生なんだから、放ってほしいものだ。




 まぁ、色恋沙汰には興味はあるけど、今のまま恋人がいない方が自由に生活できるし、漫画をわざわざ隠す必要もない。




 今の生活に苦はないから、案外充実している。




 なんやかんやで、左右の車が止まり、信号が赤から青に変わった。




 仕事用のかばんを右手に持ちながら、コンビニで買った酒とつまみが入ったビニール袋を、左手にぶら下げ、歩道に足を踏み込んだ。




 すると、反対側の車両から大型トラックが勢いよく走ってきて、停まることも無く……。






───その存在に気づいた時にはもう遅かった。






 トラックに撥ねられ、ドクドクと温かいものが、体内から流れていく感触と異様な痛みを感じた。




 周りにいた通行人らの声は、雑音にしか聞こえなかった。




 私に声をかけてくる者たちも。






──あぁ。眠くなってきたな……。






 私は睡魔に勝てず、夜空に目を向けたまま、そのまま眠りにつくために、まぶたを閉じたのだった。

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