第5話 弱点

珍しく研究院は騒がしかった。おそらく新種の研究を本部から急かされているのだろう。

「お疲れ様です…」

一応挨拶をしつつ中へ入る。

(誰に話しかければいいんだろ…)

戸惑っていると、

「リズ!こっち!」

副長のソフィアが気づいて手招きしてくれた。

「ごめんね!新種のことで忙しくしててさー」

ソフィアは話しながらもキーボードを打つ手を止めない。

「こちらこそすみません。話しかけるタイミングが分からなくて、助かりました。」

「いえいえ。そんで、新種についてだよね?」

「はい。もう知ってるみたいですね。」

「戦闘中の映像見てたからね。」

戦闘区の上空にはカメラが設置してあり、本部、研究院などでリアルタイムの映像が流れている。

「それで、どうやって倒したの?」

「レーザーで倒しました。」

「なるほどね…うん。多分だけど相手は熱に弱いんだと思う。他には炎で焼きましたっていうのがよく聞くね。」

「そうなんですね。一応氷もやりましたがツタで防がれました。」

「物理には強いみたいなの。巨大な岩で潰したとか例外はあるけど。」

(…氷を難なく弾くツタを潰した?そんなことが出来るのはNo.10くらいだろう。)

「それと、弱点と思われる部位があるの。」

「弱点?」

(そんなのあった?)

「そう。花の中心部。」

「あ。」

(言われてみれば。相手の体の6割も削ってなかったけど倒せた。)

「今まで気づかなかったけどほかの敵にも同じように弱点があるのかもしれない。」

「蕾も、周りの葉は凍らせなくても倒せました。」

「蕾?」

「はい。蕾です。まだ報告に上がってませんか?」

「ええ。蕾型は初めて聞いた。」

ルナの時と同じようにスケッチブックを渡される。

(塔の足に絡みついてたんだよね。)

塔の足部分を含め、蕾を描いてスケッチブックを手渡す。

「この後ろのやつも?」

「いえ、塔の足に絡みついてたので。」

「街にいたの?」

「はい。中心部の塔の所に。」

「そんなことが…。わかった。情報ありがとう。明日の戦いに備えてゆっくり休んで。」

「ありがとうございます。でも明日休みなので大丈夫ですよ。」

敵は毎日やってくるとはいえ、休みはしっかり貰える。それも3日に2日という頻度で。この待遇の良さを目当てに守護者を目指す人もいる。

「そうなの。私も休みたい…。」

ソフィアさんが遠くを見てしまった。

「お疲れ様です。」

苦笑いを返すことしかできない。

「じゃあ、研究に戻るわ。お疲れ様。」

「はい、お疲れ様です。」

もう外は暗いが研究者の1日はまだまだ終わらなそうだ。

(私も部屋に帰ろう。明日何しようかな。)

明日の予定を考えながら部屋に帰った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る