第二話「飼い主について」

 樋沢歩夢ひさわ あゆむ。それが僕の飼い主の名前だ。

 一見どこにでもいそうな人間の女だが、騙されてはいけない。実を言うと彼女はとんでもない能力を秘めているのだ。

 まず一つ目。撫でるのが上手い。強過ぎることも弱過ぎることもない、絶妙な力加減で撫でてくれる。彼女はその道のプロかもしれない。

 二つ目。僕の飼い主になることをラールから認められた。ラールというのは僕の前の住処であるペットショップの店員の名前。なかなか厄介な男で逃げ出すのにかなり苦労した。加えて性格もひねくれていて、客が買おうとしても何かと理由をつけて売ろうとしない。じゃあどうして僕達カーバンクルや他の小獣達を売り物としているのか。本当に謎である。

 そんなラールが僕の飼い主としてご主人を認めたのだ。ご主人はいったいどんな術を使ったのだろう。気になる。

 正直ご主人については語りたいことが他にもあるのだが、それはまた別の機会に。

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