サッカー少年が異世界で魔王を倒す
青木タンジ
第1話 異世界への転移
「えっ、ここどこだよ?!」翔太が目をこすりながらキョロキョロと周りを見回した。サッカーボールを蹴っていたはずのグラウンドはどこにもなく、代わりに見たこともない巨大な城や、空を飛ぶ奇妙な生き物がいる光景が広がっていた。
「翔太、大丈夫か?」隣で同じく困惑しているのは、チームメイトのハル。彼もまた、この信じられない状況に驚いているようだった。
突然、彼らの前に現れたのは、長い髭をたくわえた老人。「ようこそ、若者たち。ここはエスペリア、魔法と剣が支配する世界だ」と彼は言った。
「え? 魔法って、本当にあるのかよ?」翔太は半信半疑の表情を浮かべながらも、目の前の景色から目を離せなかった。
「信じられないかもしれんが、ここはお前たちの世界とは全く違うんだ。そして、お前たちには大きな役割がある」と老人は神秘的な声で話し続けた。
翔太は、まだ混乱している頭を必死に整理しようとした。サッカーの練習中に突然光に包まれて、気がついたらこんな場所に…。ただ、彼の心の奥底では、この冒険がわくわくしている自分もいることに気がついた。
「ハル、これからどうする?」翔太が彼に向かって尋ねると、ハルは少し笑って、「翔太と一緒なら、どこだって大丈夫さ」と答えた。
そこで翔太は決心した。「よし、分からないことだらけだけど、この世界で生き抜いてみせるぞ!」と彼は力強く宣言した。
翔太たちは、老人に案内されながら、エスペリアの村を歩き始めた。街並みは中世ヨーロッパのようで、どこか懐かしさを感じさせる。でも、空中を飛ぶドラゴンや、通りを歩くエルフのような人々を見ると、やっぱり異世界だと実感する。
「ここでは、魔法や剣の技が命を守る唯一の手段だ。だが、お前たちには特別な力がある。それを見つけ出すのだ」と老人は言う。
「特別な力?」翔太は首をかしげた。
突然、村の外れから悲鳴が聞こえてきた。翔太たちは慌ててその方向へ走り出す。そこには、巨大なオオカミのような魔物が村人に襲いかかっていた。
「こいつをどうにかしないと!」ハルが叫ぶ。しかし、翔太たちはサッカーのスキルしかない。剣や魔法など使ったことがない。
翔太は懐からサッカーボールを取り出し、魔物に向かって強烈なシュートを放った。すると、信じられないことに、ボールが光り輝きながら魔物に直撃する。魔物は一撃で倒れ、村人たちは驚きと感謝で翔太たちを見た。
「これが、俺たちの特別な力か…!」翔太は驚きと共に、新たな可能性を感じ始めていた。
老人は微笑みながら言った。「その力を使い、この世界を救う旅に出るのだ。そうすれば、きっとお前たちの世界に帰る方法も見つかるはずだ」
翔太とハルは互いに顔を見合わせ、そして固く頷き合った。「やるしかないな!ここで学べることはたくさんありそうだし、何より、帰る方法を見つけなきゃ!」翔太が元気よく言った。
村人たちが集まり、翔太たちに感謝の言葉を述べる。子供たちは翔太のサッカーボールを興味深く見つめ、いくつかの女性たちは彼らの無事を祈るような優しい眼差しを送った。
夜が訪れると、村の長老が翔太たちを村の一番大きな家に招き、宿泊を申し出た。「あなたたちが安全に旅を続けられるよう、少しの間ここで休むといい。そして、明日、私たちが知っていることをすべて教えよう」と長老は言った。
翔太とハルは、その夜、初めて見る星空の下で、異世界での冒険について話し合った。「なんだか、すごい冒険が待っている気がするね」とハルが言うと、翔太は笑って、「そうだな!でも、俺たちはサッカーでどんな困難も乗り越えてきた。この世界でも、きっと大丈夫さ!」と力強く答えた。
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