第一章 甲斐と商戦と御用商人 1549年4月~
1-1-1 第12話 何事も時が来なければ熟さない
天文十八年四月上旬 夜 場所:甲斐国 甲府 自分の店
視点:京四郎 Position
京四郎は、なかなか寝付けずにいた。いろいろと思うことがあったのだ。
(男子たるもの、一度は名をあげたい)というのは、どの男性にとっても……と言うとジェンダー的によろしくないか。
誰かに称賛されたり、尊敬されるというのは気持ちのいいことだ。露骨なお世辞でもない限り、それを否定はしないだろう。
古今の英雄、小説や漫画・アニメのキャラクターたち。彼らはピンチや急に訪れた転機を活かしてそれをチャンスとして活かして、名声を高めていく。
思い返せば、自分はどうだったか……。
人生を振り返るのには、まだ早い歳かもしれない。
それでも時間というものは、戻ってこない。
だからこそ今回の平蔵の頼みは、渡りに船だったのだ。
戦うことが、それほど得意なわけではない。
コミュ力がめちゃくちゃ高くて、友達が沢山いるわけでもない。
自分に似たような人は、海千山千といるかもしれない。
「I am determined to prove a merchant.」
(俺は決めた、商人になってやる)
シェークスピア[1]のある作品の冒頭で、独白していたあの男になぞらえて、屋根で見えるはずのない満月に誓う。
多少の悪どいこと、血生ぐさい場面。
俺ならば出来る。いや、やって見せる……。
それは、商売繫盛のため……。
令和に戻った時に、坂本に「悔しい!」と言わせるため。
そして……律と二人で、戦国時代で生きていくため。
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[1]シェークスピア:イギリスの世界的な劇作家。1564年生まれなので、まだ生まれていない。嫁への残された遺産は二番目に良いベッドだった。
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