2.一軒家で見つかった日記の抜粋
もうあと2ヶ月すれば新年とは、時間の経ちようがはやかったような気がする。
そういえば僕の家には、自分で言うのもあれだが中々変わった因習がある。それは何かたいそれたものでは無いけど、ただ僕の家以外でそれを行なっていると聞いたことがない。
正月前になると、近所の家々が一斉に玄関前に門松やしめ縄を飾り立てるのは、散歩でもしてればよく見る。僕の家ではそんな時期に、死んだ犬を棒に括り付けて部屋に飾るのだ。
十二月も後半になると父さんが年老いた犬をペットショップで買ってくる。もはやわが家の恒例行事といっても差し支えは無い。馴染みのペットショップって言うのを父さんが何軒か作っておいて、その中のどれかから売れなくてセールしている子を見繕って買って帰るのだ。じゃ無いと出費がかさんで大変らしい。
犬はいつも僕が名付けて殺すことになっている。でも名付けた矢先から、すぐに僕に殺されて棒に括られるので、この行事が記憶している限り三回目の時。僕は犬にきちんとした名前を与えることに嫌気が差して、今では僕の年齢と同じ数字を名前にしている。
今日、僕は15を殺した。中学校ももう最後の年に殺した15は、真っ白で毛並みも良かった。殺すにはまだ惜しい若さだった。
けれど、僕は心を鬼にして、殺す時に血を出してはいけないという母の言われを守ってきちんと殺した。
そう、15の首をしめている時に道徳の授業の
側から見ればごく小さな問題なのかもしれないけれど、道徳の授業でわからないところがあるって言うと母さんがまた叫ぶ。それだけは絶対回避しなきゃならない。
明日やることリスト:
・数学課題12〜15pを終わらせる。
・読書感想文を終わらせる。
・英単語帳 第四章の確認
・お風呂場で氷水に浸かってる15を取り出して乾かす。
・
以下注釈:
(イ) 『中学道徳 ゆとりある心—未来の私たち—』(七八—八五頁 一九九八)において登場する人物。内容としては、主人公の詩色ちゃんが安楽死を希望するおじいちゃんと言い争う話。最後は詩色ちゃんがどうしよう、と放って物語が終わる。
(ロ) 小学校時代から上記日記の書き手と関わりのある同年の女性。日記発見当初、胎盤を失った状態で、書き手の部屋にて死体が発見された。後に胎盤は、事件現場から約十キロメートル離れたアパートの一室で近隣住民の異臭通報を受け発見。胎盤は様々な植物の描かれた箱に入っていた。
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