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糸重海音は新聞記事を読み終えると、すぐに娘の写真が載っているページを探しました。そこには幼い彼女の笑顔が映し出されている写真がありました。
それを見た時、彼女は思わず涙が溢れてきてしまいました。
すると、隣にいた夫が手を握りしめながら言いました。
「大丈夫。絶対に見つかるさ」と励ます。
海音は彼の手を握り返しながら頷きました。
「そうだね。ありがとう」
それから夫妻は近所に住む人たちにも声をかけて情報を収集し始める。
警察とも何度も連絡を取り合って娘の行方を探しました。
しかし、一向に手がかりは掴めず、時間だけが過ぎていきました。
それでも諦めずに捜索を続けていましたが、そんな時に突然インターホンが鳴りました。玄関に向かいドアを開けるとそこには一人の男性が立っていました。
「はじめまして。私は極日新聞記者の見取円治と申します。紬さんのご両親で間違いないですか?」
記者を名乗る男は、丁寧な口調で話しかけてきた。海音は彼のことを警戒しながらも返事をする。
「そうですが、何かご用ですか?」
そう尋ねると彼は一枚の写真を見せてきた。
そこには娘が車で連れ去れる瞬間が写っていた。
海音は、それを見て思わず声を上げてしまう。
「紬!?」
詰め寄る彼女に彼は落ち着いた口調で答えた。
「落ち着いてください。これは証拠写真です」と言って写真を手渡す。
紬を想う母はそれを食い入るように見つめた後、彼に尋ねたのだった。
「娘は無事なんですか?どこにいるか分かりますか?」
しかし、首を横に振った。
「残念ですが、居場所までは特定できていません。ですが、娘さんは生きています」そう言って彼は一枚の紙を差し出した。そこには地図が示されていた。
その地図には赤いピンが刺さっていて、その場所があることを示しているようだった。その場所はここからかなり離れた場所にある山奥だった。
騒ぐ声に誘われるように玄関に父親もやってくる。顔を出すなり、陸は地図を訝しんで「これは?」と尋ねる。
「糸重紬さんの居場所が分かる唯一の手がかりです」
海音は慌ててその地図を受け取ると、彼に向かって尋ねた。
「この情報……警察には?」
見取は首を左右に振る。「誰にも伝えていません。この情報は私が独自に入手したものです」
その言葉に夫妻は耳を疑った。
記者とはいえ、普通はそんなことをしない。ますますこの人物が怪しく思えてきたからだ。
海音は警戒しつつ尋ねたのだ。
「どうして教えに来てくれたのですか?」
すると彼は微笑みながら答えたのだった。
「それはあなたが信用できる人物だからですよ」と言って手を差し伸べてきて、夫妻は恐る恐る手を握る。彼は優しく握ると言葉を続けたのだ。
「もし良かったら私も同行させてくださいませんか?そうすれば、少しは助けになると思うのです」
そう提案する彼に迷いはなかったように思えたけれど、夫妻はどうしても信用することができない様子。だからか彼の目をしっかりと見て問う。
「あなたは何者なの?」
すると彼は悲しそうな表情を浮かべて俯く。後に、静かに答えたのだ。
「私は記者です。ただ、正しい行いを成したい」
その言葉を聞いた時、この人は味方になってくれると期待してしまった。
だからだろう。だから夫妻は彼を同行させる。
「分かりました。一緒に行きましょう」そう答えると彼は微笑んで礼を言った。
見取は彼らを連れて、車に乗り込むとすぐに出発する。
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