あまやどり

あまやどり

 雨が降る。

 雨粒も大きく降水量も多い。

 すぐに辺りに水たまりができていく。

 ザァーザァーザァーと音が聞こえて来る。


 少女はそんな様子を窓から見ていた。

 雨が降っていない日ならまだ明るい時間。

 だけど、今は薄暗くどこか不気味だ。


 けれども少女はすることがなく、リビングから窓の外を見ていた。

 少女の家はマンションの三階だ。

 そこから見える景色はそれ程いいものではない。

 けれども、マンションの前にはちょっとした公園があるので、そこまで景色が悪い物でもない。

 

 少女は三階の窓、ガラス越しに見える手すりの柵の間から、家の前の公園をただぼおっとしながら見ていた。


 そうすると、公園にある一番大きな木の下に、雨宿りしている人を見つける。

 体全体が、どこか白ぽく、それに加え黒い斑点があるような服を着ている。


 奇妙な、どこか鳥肌が立つような、そんな服を着ているのだ。


 少女はその雨宿りしている人をじっと見つめる。

 雨宿りしている人はふらふらと揺れている。

 いや、ろうそくの炎のように揺らめている、と言った方が良いかもしれない。


 少女がなんかおかしい、そう思いじっとしていると、その白い人影が振り向きもしなかったのに、急に目が合った、そう感じた。

 その証拠に、雨宿りしている人の揺れがピタリと止まる。

 とっさに少女はソファーの裏に隠れる。

 少ししてから、ドキドキする鼓動を抑え、こっそりと少女は窓の方を見る。


 そして、唖然とする。


 それはベランダにいた。

 それは人型だが、全身タイツのように全身が白く、さらに全身に大きな、野球ボールくらいの目があり、それが黒い斑点に見えていたのだ。

 

 唖然としていた少女だが、あまりにもの恐怖に身を振るえ出す。


 その奇妙な全身目玉のなにかは、窓ガラスをノックするように叩き、アマヤドリサセテクダサイ、アマヤドリサセテクダサイ、と口もないのに繰り返していた。


 少女が大声で泣き出すと、自室にいた少女の母がリビングに出て来る。

 母親は何かあったのか、少女に聞くが少女は泣くばかりで何も要領を得れなかった。


 全身目玉のなにかはいつの間にかに消えていたそうだ。

 少女はそれ以来、雨が嫌いになった。






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