きんちゃくぶくろ
きんちゃくぶくろ
少女が小学校からの帰り道に、歩道の真ん中に巾着袋が落ちていた。
きれいな模様の布で、小学生の少女にはよくわからないが、生地もしっかりとしていて高そうな巾着袋だった。
少女はその巾着袋を拾う。
何かずっしりと入っているかのような少女には感じる。
少女は巾着袋の中身を確かめる。
盗もうとしたわけではなく、落とし主の事がわかるかもしれない、そう思っての行動だ。
だが、巾着袋の中には何も入ってなかった。
布が豪華なのは確かにあるが、それにしても巾着袋は重かった。
そう。重かったのだ。
少女が巾着袋を開けた後、何かが抜けるように巾着袋は軽くなったのだ。
少女は首をかしげながら、それを近くのフェンスの柱にかけておく。
道端に落としておくよりはましだろうと。
次の日の事だ。
昨日巾着袋が落ちていた場所に、黒い喪服で髪の長い女性が巾着袋を手に立っている。
少女は、ああ、あの人が持ち主なのか、と思いつつも少女の方からは話しかけなかった。
だが、少女は喪服の女性に呼び止められる。
そして、あなたがこの巾着袋を拾ってくれたのですか? と少女に向かい聞いてくる。
人見知りの少女は声に出さず静かに頷く。
そうすると、喪服の女性は少女に向かい丁寧に頭を下げる。
顔を上げた後、この巾着を開けてしまいましたか? と、更に聞く。
少女はまたも無言で頷いた後、何も入っていませんでした、と言葉で返す。
それを聞いた喪服の女性はニヤリと笑う。
そして少女に、いえ、私の祖母が入っていたんですよ、と言った。
少女は女性の言葉の意味が理解できない。
喪服の女性は続ける。
とは言え、元はと言えば落としてしまった私が悪いのです、気にしないでください、喪服の女性はそう言って少女に微笑みかけ、歩いて去って行った。
少女はそのことを母親に伝える。
それを聞いた母親も理解に苦しんだ。
少女が拾った巾着袋には何が入っていたのか。
それは少女が知る由もない。
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