ゆうだちのなか

ゆうだちのなか

 激しい夕立が降る。

 土砂降りも土砂降りだ。

 何もかもが雨に濡れていく。

 太陽は隠れ、空を分厚い雨雲が覆い、涙を流し雨を降らす。


 その雨の中、女が傘もささずに歩く。

 背の高い女だ。

 二階だけの窓からちょうど顔が見えるような、そんな背の高い女だ。

 ゆっくりとゆっくりと、地を這うように背の高い女が歩く。


 その顔は確かに人間の物だが、どういう訳か、女の顔を見ると牛の顔を思い浮かべる。

 そんな女が雨の中歩く。

 何かを探すようにゆっくりとあたりを見渡しながら、するりするりと雨の中を歩く。


 それは余り良くないモノとされている。

 雨と共に移動して、お天道様を嫌い、人を攫い、人を喰らう。

 だが、死んでいる者には興味がない。


 黒い着物を羽織っている。

 時には深い紫の羽織を羽織っていることもある。

 傘をさしていることもあれば、豪雨でも中傘を差さないこともある。

 あまり恰好には意味がない。


 ただわかるのはぎょろりとした眼、その白目は膿んだように黄色いという事だ。

 それは雨の中、子供を探す。

 特に子供が好きだからだ。


 それを見かけたときは、すぐに家の中に逃げ込んで戸締りをしっかりして、雨が止むまで、お天道様が顔を出すまで、じっとしていなければならない。

 

 帰り道に夕立に襲われたときは背の高い女に気を付けなさい。




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