じどうはんばいき
じどうはんばいき
夜でも蒸し暑い初夏の夜。
男は男は帰宅途中だった。
最寄りの駅から自宅まで少し歩く。
その途中で男は急に喉が渇く。
近くには自動販売機が置いてある。
なにか飲み物でも買おうと、自動販売機に男は近寄る。
ちょっと古い自動販売機だ。
それでも明かりを煌々と放ち、自己主張をしている。
電子マネーが使えるタイプでもない。
男は仕方なく財布を取り出し百円玉を入れる。
すぐにカコンと音がして、お釣りの返却口に硬貨が返ってくる。
男はもう一度試すが同じ結果だった。
先に別の硬貨、十円を入れてみる。
今度はちゃんと自動販売機が認識した。
別の百円玉を取り出して、自動販売機に投入するが、百円玉はすぐに、カコンと音を立てて、返却口に返ってきた。
仕方がないので、男は十円玉を入れ続ける。
たしかに無駄にいっぱい十円玉があったので、ちょうどよいと思いどんどん入れていく。
十円玉はちゃんと認識してくれるようだ。
いくつ入れたか、変わらないが自動販売機のボタンが光出す。
十円の数も足りたようだ。
改めて飲み物のラインナップを見る。
どれもこれも古いタイプのジュースばかりだ。
男は懐かしい、と思いつつ黄色い炭酸ジュースのボタンを押そうとする。
その時だ。
男の後ろから、スッと白い手が伸びてきて、おしるこ、のボタンを押した。
男はギョッとなって後ろを振り返る。
誰もいない。
ガコンと音がして、温かいお汁粉が取り出し口に落ちてくる。
もちろん、ボタンを押した手も、もうどこにもいない。
男は少しの間唖然としたが、出てきたおしるこをそのままにして、逃げるように走り去った。
翌朝、その場所を男はおっかなびっくり通るのだが、その場所には自動販売機はなかった。
ただ、昨日自動販売機があった場所には、空になったおしるこの缶だけが残されていた。
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