びでおつうわ

びでおつうわ

 まだ幼い少女は田舎のおじいちゃんとおばあちゃんとビデオ通話をしていた。

 今年のお盆にはようやく田舎に行ける、そんな会話をして楽しんでいる。


 画面の向こうのおじいちゃんとおばあちゃんも笑顔だ。

 慣れない手つきでスマホをいじりながら、孫との楽しんでいる。

 おじいちゃんのスマホでビデオ通話を、おばあちゃんのスマホで少女の父に操作方法を聞きながらどうにか、ビデオ通話にこぎつけたのだ。


 その表情は本当に嬉しそうだ。


 その笑顔につられて孫である少女も笑顔になる。

 とりとめのない会話が続く。


 そこで、少女は気づく。おじいちゃんとおばあちゃんの後ろに、もう一つ顔が見えるのだ。

 人の顔…… と言われれば疑問が残る。

 人の様な、獣の様な、猿の様な、そんな顔がおじいちゃんとおばちゃんの背後、部屋の柱の付近に浮かぶようにして存在しているのだ。


 少女は後ろの顔は誰? と、おじいちゃんとおばあちゃんに聞いた。

 おじいちゃんとおばあちゃんは画面の中で後ろを振り向く。


 そして、首をかしげる。


 誰もいないよ、と、おじいちゃんとおばあちゃん、祖父と祖母が伝えて来る。

 少女の父が、ビデオ通話の画面を見て、慌てて祖母のスマホに話しかける。

 それを聞いた祖母は驚いた顔をして、奇妙な顔の見える辺りを見るのだが、首をかしげるばかりだ。

 そのうち、少女がお猿さんみたいなお顔が見える、と言葉を発する。


 そうすると、おじいちゃんとおばあちゃんの表情が急に険しい物へと一気に変わる。

 そして、すぐにビデオ通話が切られる。


 少女は不満そうだ。


 ただ、少女父親が祖母にかけた音声だけの通話だけは通じている。

 今年は危険だから田舎には来るな、と少女の父に伝えられる。


 少女が見た猿の様な顔はなんだったのか。

 それは少女にも、少女の父にもわからない。


 田舎の祖父と祖母はどうなったのかって?

 今も元気に過ごしているそうですよ。


 その年のお盆は田舎には行けなかったが、代わりに祖父と祖母が遊びに来るくらいには。

 今もビデオ通話はたまにしているそうだが、あの猿のような顔が映りこむことはないそうだ。



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