すまほのあかり

すまほのあかり

 その日は寝苦しい日だった。

 ベッドの上で寝っ転がっていてもまるで寝れる気がしない。


 妙に目が冴えわたる。

 蒸し暑い。

 意識も妙にはっきりとしている。


 そんな夜だった。


 なので、男は枕元のスマホを取り出した。

 そして、ゲームの、男がはまっているソシャゲを起動させる。


 ローディング画面が長いので、なんとなくスマホの明かりで部屋の中を照らす。

 青白い光は思いのほか部屋を照らしてくれる。


 そこでふと目が合う。

 天井を照らしたときに、目が合ったのだ。


 なにと?


 女だった。

 天井から青白い服を着た女が、長い髪を垂らし男を見降ろしていた、その女と目が合ったのだ。


 男はスマホをその天井女に向けたまま固まる。

 天井女はスマホの明かりで迷惑そうな顔をする。


 スマホからかわいらしい声でそのソシャゲのタイトルが叫ばれる。

 少しだけ男は恥ずかしくなった。


 恐怖と恥ずかしさで、男の心はぐちゃぐちゃだった。


 蒸し暑い中、男は頭から布団をかぶった。

 布団をかぶり終えてから、スマホも布団の中にひっこめる。

 スマホの明かりで照らしてなければ、襲われると思ったからだ。


 冷静になるとやはり恐怖のほうが増す。

 男は布団の中でぶるぶると震え始める。


 蒸し暑い布団の中で震えていると、男はいつの間にかに寝ていた。

 無事に朝を迎えられたことに男は感謝をする。


 それからというもの、たまに男は寝るときにスマホで天井を照らして見るが、それ以来女が現れることはなかった。



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