ほーむせんたー
ほーむせんたー
家から少し離れた郊外にホームセンターがある。
そこのホームセンターは二十一時までやってくれているので、仕事帰りによって帰れるので男は重宝していた。
ちょうど家のウッドデッキのペンキが剥げてきているので、その日も仕事帰りにペンキを買いに寄った。
男がホームセンターについたときにはもう閉店の音楽が鳴り始めていた。
客ももういない。
なんなら店員も見ないが、そんなことを気にしている時間はない。
男は急いで塗料のコーナーへ行き、ペンキを探す。
すぐに見つかる。
男はそれを一缶、手に取りレジへと急ぐ。
殺虫剤のコーナーを抜ければレジのはずだが、なぜか殺虫剤のコーナーを抜けるとそこは、別の日用品のコーナーだった。
男は焦りすぎて迷ったのかと、すぐにそのままレジを目指す。
が、どう行こうか、どう戻ろうが、レジにはなぜかたどり着けない。
あの棚の向こうがレジのはず、と歩くどころか走ったのだが、また別の木材のコーナーへとたどり着く。
男も訳が分からない。
ホームセンターの店内には、物悲しいワルツの音楽だけか流れ続けている。
男は大声で、おーい、だれかーいませんかー、と声を上げるが、それに反応する人間はいない。
店内には閉店時の音楽が流れているだけだ。
男が時計を見ると、既に閉店時間を過ぎている。
けれど、どうやってもレジにも出口にすらたどり着かない。
男は半泣きになってひたすらレジか出口を目指す。
しばらくそうやって店内をさまよっていると、お店の電気が消え、音楽も止まる。
そして、シャッターが閉まる音が聞こえだす。
男はその音のほうへと駆けだす。
がだ、無情にもその音が聞こえなくなり、ホームセンターが真っ暗闇に包まれる。
それでも男は走ることをやめない。
そして、壁に、恐らくは感触からしてガラスの壁に暗闇の中たどり着く。
男はその壁を叩いて、大声を出す。
するとすぐに、シャッターが開き、人が顔を見せる。
男は泣きながら助けを求めた。
事情を話し、ついでにペンキの代金も払い、男はホームセンターを後にした。
それ以来、男が閉店間際のホームセンターへと行くことはなくなった。
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