ろうか

ろうか

 少女の家には長く暗い廊下がある。

 昼間でもあまり日が差し込まないような廊下がある。

 とても細く長く、そして、暗い廊下だ。


 少女はその廊下が嫌いだった。

 理由は不気味だからだ。

 昼間でも薄暗いその廊下が少女は嫌いだった。


 ただ少女の部屋はその廊下の手前にある。

 ようがなければその廊下を通ることはないのだが、その廊下の先にトイレとお風呂場があるのだ。

 何かと行かなければならない。

 昼間はまだいい。

 ただ夜は本当に不気味だ。


 日が落ちると明かりをつけなければ廊下の先は真っ暗で何も見えなくなる。

 どこに繋がっているかもわからないほど真っ暗闇だ。

 さらに言ってしまうと、少女の部屋から廊下の明かりを入れるスイッチまで少しだけ距離がある。

 少女の部屋から明かりのスイッチまでは、三、四歩程度、歩かないといけない。

 古い家なので仕方がない。


 その日も少女は寝る前にトイレに行こうと部屋から出た。

 そして、暗く長い廊下を見る。

 長い廊下の突き当りがトイレだ。

 長い廊下とはいえ、途中には父と母の寝室もある。

 何も怖い事はない。

 ないはずなのに少女はその先の見えない廊下がとても怖かった。


 すぐそこの明かりのスイッチまで歩くのがとても怖かった。


 少女はそっと壁に手を這わせて、自分の部屋から漏れて来る明かりを頼りに、明かりのスイッチのところまで行く。

 もう少しでスイッチに手が届きそうなところで、少女は違和感を感じる。


 廊下の先に、トイレの前に人影のようなものが見える、気がしたからだ。


 少女は眼を凝らすが闇は濃く本当に何かいるのかどうかもわからない。

 なので少女はあともう少しのところにある明かりのスイッチに手を伸ばす。


 そして、明かりをつける。

 長い廊下に電気の明かりが灯る。


 トイレの前に人影などない。

 何もいない。


 少女は一安心し、トイレで用を足しトイレのドアを開ける。


 少女は一瞬わからなかったが、すぐに驚く。

 明かりはつけっぱなしのはずなのに廊下の明かりが落ちて消えている。

 自分の部屋も少し扉を開けて光が漏れ出ているはずなのに、それすらも見えない。


 延々と暗く細い廊下が続いているように見える。


 少女が茫然とその廊下を見ていると、ほとんど闇しか見えない廊下の奥から、何かが動いているのに気づく。

 それが何なのか少女にはわからない。


 少女は反射的にトイレのドアを閉めてトイレに閉じこもる。


 しばらく少女が泣きながらトイレの中に篭っていると、トイレのドアノブをガチャガチャと回す音がする。

 少女は反射的に手でドアノブを抑える。


 しばらくガチャガチャとドアノブをされた後、父の声で少女の名を呼ぶ声がする。

 少女はドアを開ける。


 そこには父がいて、見慣れた細い長くはあるがちゃんと終わりのある廊下が見えた。

 少女は泣きながら父親に抱き着いた。



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