第36話 何かが足りない

 その後はほかの人もきているのでその人たちにも接客をする。そろそろ30分経つな。アウフグースするか。


「ウォーギー。アウフグースお願いねー!」


「クルキャ!」 


 女湯のようにいくと、イアさんがヒーラーさんたちに使い方をすこしずず、それでいて正しく教えており、ひーらさんたちは少し動きがぎこちないが使っていた。

 その様子が遠目に確認できたので、そのままアウフグースをしに行く。


「アウフグースを開始しまーす!」


 一人ひとりに丁寧にほかの人に風が行かないように工夫しながらタオルで煽ぐ。

 毎日アウフグース中に初見さんが必ずいて、最初にあげる声が「痛い!」となっている今日この頃。日差しが強くなり始めたので外気浴中に日焼けする人が続出するようになりました。


「アウフグースおかわりいますかー?」


 シーン……


 声も手も上がらない光景。これが毎日起きているのが少し面白い。


「では失礼しましたー! 水分不足にお気を付けくださーい」


 そしてこれを三十分後にもやる。銭湯を開いている間にはこのくらいだ。……なんか他のもやりたいなー。


「ウルルン?」


 私が考えていると、足元にルーちゃんという生きる雲がやってきて膝にすり寄ってくる。猫……モフモフ……あっ! この手があるじゃん!

 一応ルーちゃんの好みを把握しておこう。私は現世ネットを使ってとあるものを注文する。すぐに私の頭の上から段ボールが降ってきたので、紙一重で回避してそのまま開封。

 私が追い求めていたもの……手の中には何本ものスティック形状のものがあり、それぞれ違うフレーバーの〇〇だ。これなら……。

 一旦時空袋の中に保管しておく。こうすればどこに置いたかわからなくなるのを防止できるからね。


「由衣ちゃーん! 何持っていたのー?」


 ライが見ていたようなので聞いてくる。回答は当然、


「秘密兵器だよ。楽しみにしていてね!」


 それを聞くとライは当然首をかしげた。


「えー……もうちょっと教えてよー!」


「明日のお楽しみにしてー!」


 などと話していると、ルーちゃんが口にボールをくわえて持ってきた。あー、あれね。


「ほい!」


「ウルニャー!」


 ルーちゃんは私の投げたボールを追いかけて行った。うーん……おもちゃも考えておいた方がいいか。こんな時もー……


 現世ネット!


 えーと……「猫じゃらし 人気 第一位」で検索。


 お? これ中国産なんだ。商品名は……「愛相克バタバタトンボ」っていうらしい。ちょっと見てみるか。


 あーなるほど、猫にじゃらしている間に棒を手で回しながらやるのか。

 早速購入。緑色のプラスチックで出来た羽が銭湯の電気で若干光を反射している。


「ルーちゃーん! こっちおいでー」


 バタバタトンボをバタバタ動かしながらルーちゃんの目の前に見せる。すると、


「!!」


 無言で姿勢を低くする。だんだんおしりをゆらゆらさせてきて……そろそろかな?


 ピョーン!


 狩猟本能をくすぐられ、そのまま獲物に見立てたバタバタトンボに飛びつく。


 バタバタバタ……バタバタバタ……


 右から左へ……左から右へ……色んな方向へバタバタトンボを追いかけてはジャンプしてを繰り返し、ついにトンボをくわえる。


「ニャー」


 無理に持つと折れそうなのでいったん手を放す。そしてそのままくわえたトンボを見せてきて自慢する。猫って飼い主を「狩りのできないやつ」と、認識しているらしい。私はルーちゃんの目の前でモンスターを狩ったことがあるから、そんな事はない……と思う。というか思っていてくれ。


「面白ーい! やらせてー!」


 ライがえさを目の当たりにした鯉のごとく、バタバタトンボを素早く手に取る。そして右に左に……たまに止まる様にしてルーちゃんの狩猟本能を刺激した。


「ウルル……」


 目でしっかりトンボをとらえ、姿勢を低くする。そして……一気に距離を縮めて飛びつく!

 しばらくすると、一人と一匹は飽きてきたようなので終わった。でもしっかり食いつくのは分かったから、よしとしますか!


 犬には棒とかがよさそうだけどなー一応調べるか。

 ……。……。……全然絞れていない……。とりあえず噛んでも壊れないおもちゃを買うか。これがちょうど良さそう! えーと……虎やライオンが遊んでも壊れない強度? そんなのあるの今の時代? 今自分12なのに40代くらいの人たちのような気分になったんだけど!?

 びっくりしながら名前を調べる。「ボーウ・ボーン」……面白い名前だなぁ。あとはゴム製のボールとかかな?

 

 テレテテレレン♪


 すると、私の足元に緑色の土管が生えてきた。これ絶対マ〇オ出てくるパターンでしょ。

 予想は的中。ドット姿のマ〇オが出てきて、床に着地したときにゆっくり消えてしまった。

 土管の方に目を戻すと、そこから段ボールが出てきた。これで配達完了ってか?

 でも土管を塞いでいる形でずっとうごかないのでどうしたものかとみていたら、土管が引っ込んで結局段ボールだけとなった。 

 早速削除で中身を取り……は?

 中には何もなかった……。どういう事? そう考えていると頭上から


 テンテンテン……


 という土管の音が聞こえた。……まさか 


 こつん……


 私の頭の上にボーウボーンと適当に頼んだゴム製ボール×10が落ちてくる。これが卵とかだったらどうするんだ!?


 早速犬たちに投げてみる。


「ワン!」「ワン!」「ワン!」


「ワン!」「ワン!」「ワン!」「ワン!」「ワン!」


「ワン!」「ワン!」


「ワン!」「ワン!」「ワン!」


「ワン!」「ワン!」「ワン!」


 バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ……


 結構食いつきがいいなー……。これ本当に大丈夫かな?

 私はそう思いながら犬用おやつがないことに気づき、そのまま犬用最終兵器も買うのでした。

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