マッチ売りの少女 題材「金」


「マッチはいらないかね」

 少女はマッチを売りに寒い街を歩きまわります。

 けれども、一ダースも売れません。

 マッチが売れないと家に帰ることはできません。だから、少女は声を上げて寒い中でもさまよい続けた。

「マッチを。あの、おじいさん、マッチいかがですか?」

「いいや。いらないよ」

 全く売れません。とうとう、一ダースも売れずに少女は寒さに凍えます。

 街中で人通りがなくなり、少女は一人になりました。だんを取るためにマッチに火をつけます。

 段々と暖かくなり少女の目の前には暖炉だんろが見えてきました。

 暖炉で暖を取っていると徐々に火は消えいきました。とうとう、暖炉は見えなくなってしまいました。

 少女は別のマッチに火をつける。

 

 今度は美味しそうなクリスマスディナー料理が見えてきました。少女がそれを食べようとすると、消えていく。

 どうやら火が消えてしまったようだ。

 そして、もう一本のマッチに火をつけました。すると、亡くなったやさしいおばあさんが現れました。

 「おばあさん」少女がつぶやくと、おばあさんはにっこりと笑いました。

次第に少女の意識は遠のいていきました。


**************

 

 私は「マッチ売りの少女」の話をおいっ子の勇一ゆういちに話した。

勇一は今年で高校二年生だ。どうやら、この童話の内容を知らなかったようだ。

「ねぇ。なんで皆、マッチを買ってくれないの?」

「それはね、皆が貧乏だからかな。知らんけど」

「ハンス・アンデルセンだっけ?デンマークとかヨーロッパの庶民は貧乏だよね。だとしたら、単にマッチだけ売っていただけじゃ、なさそうじゃない?」

 勇一は真剣そうな顔だった。

「え?そうかな」

「だって、マッチなんて、その当時はどうか解らないけど。雑貨屋や商店で買えるしさ。だから少女はマッチ売りと称して売春をさせられていたのじゃないかって」

 私は勇一の言い分に頷く。勇一の見解けんかいは時代背景的に、有り得そうに思えた。昔の人は子供に対しの人権意識がとても低いからだ。

「もしも、少女が大金持ちに見初められていたら、助かって幸せだったのかな。売春がきっかけなら気分は良くないけどさ」

 勇一は頭をいた。確かにマッチ売りの少女がもし、お金待ちの紳士に見初められていたら死んでいなかっただろうと思う。

 貧乏は辛い。ひんすることで心の余裕もなくなっていく。様々な良くないことが溜まっていく感じがする。

「マッチを大人が買ってくれないくらい、貧困が深刻だったとも考えられるかもね」

「貧しい国だと、子供を使って物売りをするってよく聞くよね。買ってくれるまで着いてくるとか。もしくは買わせ続けるとか」

 貧国になると、大人も子供も全国民が貧乏になる。一部の超お金持ち以外、本当に貧乏になるのは必然だ。

 私はふと、今の日本国を考えた。多くなる税金の支払い、上がらない給与。貧乏な国になっているのが解る。それを痛感する。

理子りこさん。俺、思うんだけど日本って確かGDPがかなり下がっているらしいね」

 勇一が私と同じことを思っているのに少しだけ驚いた。

「うん。そうだよ。今は4位だったかな。確実に経済成長は悪化していると感じるよね。にも関わらず、日本の内閣総理大臣はいつまで経っても経済大国みたいに大盤おおばんる舞いでお金をばらいているけどね」

「うわー。頭可笑しい」

「そうだね。頭可笑しいね」

 私はこれからの未来の日本がまともな国になっていく為に、勇一のような若くて洞察力どうさつりょくのある世代を育てていかなくてはいけないと思った。

題材 金

45:45

 *参照 日本の去年1年間の名目GDP ドイツに抜かれ世界4位に後退

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240215/k10014358471000.html

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