放課後BOOSTED TUNERZ

@iesabcustoms

　西暦2081年。急激な宇宙開発と医学技術の進歩により、地球の人口は爆発的に増加した。人々の多くは宇宙コロニーや他の惑星に移住したが、依然として地球はサブカルチャーの一大発信地として外星人(かつては『宇宙人』と呼ばれていたが、差別用語にあたるとして改められた)の人々の間でも話題の中心、サブカル好きの憧れの地となっていた。

　そして昨今のトレンドとなっているのが「2000年代」であった。現在から約80年前にあたるこの時代は今を生きる人々の目には鮮烈で新鮮なものに映った。SNSを中心に若者の間で当時の文化が発信され、そして現在の文化と技術と融合し、いわば「ネオ2000年代」と言うべき独特の文化が確立されつつあった。

　そのブームは不良文化にも影響を及ぼし、街中では当時のストリート・ギャングを意識したライフスタイルやファッションを好む粗暴な若者が散見され、彼らによる犯罪率の増加、治安の悪化が社会問題となっていた。とりわけ問題視されているのが街中で違法レースや暴走行為を行う者たち、いわゆる「ストリートレーサー」であった。彼らは現在の主流であるホバー・カーではなく、ガソリンエンジンで駆動する四輪式の自動車、その中でも2001年に公開された伝説的映画の題材となった、1990年代〜2000年代に発売された日本製のコンパクト・スポーツカーを派手にカスタマイズしたものを好んだ。ストリートレーサーの中には無免許の学生も見られ、幾度となく規制強化や法整備が繰り返されたにもかかわらず、彼らはあの手この手でそれを掻い潜り昼夜問わず暴走を繰り返していた。

そしてこの物語は、ひょんなことからストリートレースの世界に身を投じた少女の青春譚である…