第2話 変身ベルト


「まあまあ、そんなに怒るなよ、待遇もいいし、なによりお金が結構もらえるぞ!」



親父が、下世話な話をしてきた。



むむっ!確かに、今まで何不自由なく暮らしてきたし、家は3人暮らしには広いし、高校に通う時も、最初の方は車で送迎してくれた。


途中で、なんか恥ずかしくなり、やめたが‥


もう、こうなってしまった以上、仕方がないので、


「はぁー、わかったよ、ヒーローになるよ‥」


俺は、観念して、ヒーローになる決意をした。



「よかったー!これで父さんもヒーローOB会に入会できる!」


親父が何やら喜んでいる。


「なんだよ、OB会って?」


親父が、しまった!という顔をしている。



「いや、その‥‥ その話は一旦置いといて、変身ベルトの簡単な説明をしようではないか!」


なんか怪しいが、ベルトの説明をしてくれるので、その話は保留としよう。


「まるで、腕時計みたいな感じだろう?」



「確かに、液晶画面もあるし、でもなんか横にボタンがいくつかあるけど」


「そのボタンはな、青ボタンが変身、赤ボタンが緊急事態のときに、押すと仲間がテレポートで来てくれる、黄ボタンは、後で、自分の好きな機能を追加できるんだ」



「へー、すげぇな!じゃ試しに、青の変身できるボタン押してみようかな」



「えい!」



俺は、青ボタンを押した。


‥‥‥‥



「あれ?何にも起きないよ!」



「詠唱をしないと変身できないことになってるんだ」



「それを早く言ってよ!詠唱って、どんなの?」


「父さんは、『我が右腕に眠りし暗黒の力よ!今こそ解き放て!変身!』にしていたよ」



「なんだよ、その中二病的なセリフは!そんな詠唱は、嫌だよ!」


断固拒否した。そんなの人前で言うの、恥ずかしすぎる。



「うーん、他に何かあったかな?そうだ!スズにきこう!」


「えっ?母さんに聞くの?」



「というか、母さんが親父がヒーローだってこと知ってんの?」



「スズは元仲間だったから、知ってるに決まっているだろう」



「えーーーー!初耳なんだけどー!」


驚いている俺を横目に、親父は母さんを呼んだ。


「スズー!スズー!ちょっときてくれるか?」



「はーい!まおさん、今行きますー」


夕ご飯の片付けをしていた母さんが台所からリビングに、やって来た。


「まおさん、なんですか? あら、ナイトと2人でお話でもしてたのかしら」


「ナイトが成人を迎えたからな、変身ベルトを授けたんだよ」



「あら、もう渡したの?まだ卒業式まで結構あるわよ」



「早めに渡して、ヒーローに慣れてもらおうと思ってな」


「じゃ、ナイト、ヒーローになってくれるのね!母さん嬉しいわ」


無口な母さんが、こんなに喋るのをみたのは、久々だ。


「ああ、親父に、はめられて仕方なくな!」



「まおさんたら、さすが策略家だわ」


「そうかな‥」


頬を赤らめて、喜んでいる親父、うん!単純だ!



母さんよ、親父は、そんなに頭よくないぞ!


「スズにひとつ聞きたいことがあってな」



「何かしら?」



「ナイトが詠唱がよくわからないから、どうしよう?と話していたんだ」


「そうねぇ‥‥‥」


悩んでいる母さん。


「なら、元仲間の光中さんに、聞いてみたら?光中さんも、確か成人する娘さんがいたはずだから」


「それは、名案だ!栄光は策略担当だったしな」


「えっと、こういう時は、あれが便利だったな」


また、親父が股間に手を入れてゴソゴソしている。


『パッパッパ、パカーン!連絡モニター!』



なにやら、テレビのようなものが出てきた。


「いや、だから!そっから出すんじゃねぇ!」



というか、親父の股間はどうなってんだよ。




「ふふっ!まおさんたら、まだそのネタやってらしたのね」


母さんが笑っている!あの、滅多に笑わない母さんが!


「いやー、このネタやってもナイトは笑わないんだよ おかしいなー」


「それは、前から私しか笑わないって、仲間も言っていたじゃない?」



「そうだけど、ナイトにはわかってもらえるかなと思ってな‥」



「うけるわけないよ、ただ汚ねぇだけだよ」



「ナイトがひどいよー、スズー」



「あら、まだ思春期かしら?」



「んなわけないだろ!いいから、早く話を進めてくれよ」



「そうだった!えっと栄光えいこうに連絡しないと、えっと‥‥たしか、栄光のヒーロー番号は、0005だったな」


モニターに、番号を入力している。


「よし!入力完了っと」



『プルルル』


「ん?誰からか連絡だ、おー!まおじゃないか!久しぶりー!」


「久しぶりだな、栄光!今日は、息子のナイトが成人するから、変身ベルトを渡したんだが使い方の説明ができなくてな、栄光に教えてやっぱりくれないか?」


「わかったよ、しかし、あのナイトくんが成人か、時は早いなー」



「光中さん説明お願いします」



「おー、ナイトくん、小ちゃいときに会ったけど覚えていないよね?」 



「そうですね、すみません」



「いやいや、謝らなくてもいいよ、じゃ変身ベルトの扱い方だっけ?教えるね」


その後、光中さんに、ベルトの扱い方を教えてもらった。


ヒーローについても、聞いたけど、それは、養成所があるから、そこで聞いた方がいいよと言われた。


「光中さん、いろいろと、ありがとうございました」


「こちらこそ、では私は、これで失礼するよ」

 

モニター画面の電源が切れた。


ヒーロー養成所なんかあるんかい!


そんなのあったら、話題にならないか、いや隠れてやってんのかな。


光中さんによると、自分で考えた詠唱で、変身できるらしい。


うーん。考えても、何も思いつかない。


俺が悩んでいると、母さんが


「なら、それじゃ、ナイトが中学生のときに書いてたこのノートにあるやつで、いいじゃない!」


母さんが、禁断のノートを手にしていたのである。


「どっ、どうしてそのノートを母さんが持ってるんだーーーー!!!」


またまた、俺の声がリビングに鳴り響いた。












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