第20話 スタンピート


 階層を降りて行っていまは56階層、

「結構手こずったわね」

「カグヤさん出過ぎですよ」

 たしかにレッドオーガに対して前に出過ぎだと思う。

「だってやれると思ったんだもん」

「だもんじゃないです!怪我治せるのはタクマしかいないんですからね?」

 ここにきて回復魔法が役に立っている。

「わかったわよ、ごめんなさい」

「そろそろ武器もパワー不足ですね」

 シンジの言う通り武器も防具もボロボロになって来ている。

 加工屋かショップでなんとかしないとな。

 タマキの防具はやはり一段階上の性能だからまだまだ使える。やはりタマキのように防具に注ぎ込むべきだな。

「金貨もあるからみんなでゆっくり選んでみるか!」

「賛成!」

「まぁ毎日潜ってるからそろそろ休みが欲しかったのよね」

「狙ってる大剣があるんですよね」

「金貨に相談だな」


 階層転移で自宅に戻るとリビングで装備を見始める。テレビをつけるが誰もみていないが、


『早報です!新宿ダンジョンがスタンピートしました!付近の住民はシェルターに避難をして下さい!繰り返します…』


「は?スタンピートだって?」

「いや、早すぎるだろ?河合は何をやってるんだ?」

「新宿なら近いから走っていきますか!」

「河合クランがどうにかするだろ?」

 タダスケは河合クランが大嫌いになったみたいだけどそうも言っていられないだろ。


「よし、みんな行くぞ」

「えー!しょうがないなぁー」

「ほら早く!行くよ」

「はーい」


 俺たちはすぐに外に出ると身体強化をして走って新宿ダンジョンまで直行する。


「うお!やべえじゃん」

「とりあえず外にいるモンスターをやるぞ」

「「「「「おう」」」」」



「河合様、国防庁から電話です」

「今対応してるから後にしてくれ」

「分かりました、そう伝えておきます」

 秘書が出て行くと、

「クソッ!スタンピートなんて聞いてないぞ!しかも第二部隊も死んだなんて!」

 新宿ダンジョンはいつも通り早く潰すつもりだったが、送る部隊が死んでいくのが多くて後手に回っていた。

「出れるやつはさっさとスタンピートに回せ!こちらの信用問題になるだろうが!」

『はい!いま第一部隊も向かっているそうです』

「そうか、それなら大丈夫だろう」


 河合クランの第一部隊は粒揃いを用意していたのでこれでなんとかなると思ってソファーに深く腰を沈める。

「チッ!こんなことになるならさっさと第一部隊を送ればよかったか?…いや、こんな時こそ河合クランの名を挙げる絶好のチャンスだな」

 河合はほくそ笑んでいた。


「ユカリそっち」

「わかってるって!」

 崩壊した新宿をモンスターが埋め尽くしている。

「うおらぁぁぁ!」

 シンジが大剣を振るうとモンスター達は斬られて消滅して行く。

「チッ!次から次にでてくるな!」

「おーい!そこから離れろ!でかいの行くぞー!」

 みんなが散らばったのを見届けると、

「ソラ、たのんだぞ!」

『キュキュキュゥゥゥゥ!』

 風の上級魔法サイクロンだ!

「これにファイヤーストーム!」

 炎を風が瞬く間に飲み込んで大きな炎の渦になる。

「おおっ!凄い熱気だな!」

「だいぶ消し飛びましたね」

 あとちょっとだな。


「到着っと!あれ?なんだ、聞いてたのより少ねえじゃん」

 いきなり現れた男がそう言うと、

「ここは河合クランの陣地だからサッサとあんたらは帰りなさい!」

 女がそう言う。

「いや、俺たちがだいぶ苦労してこれだけにしたんだが?」

「んじゃ後は俺たちに任せてもらおうか!」

「おいおいそれはないんじゃないか?」

 タダスケが帰ってきた。

「ふん!ただの一般人でしょ?ちょっと出来るからって調子に乗らないことよ?」

 また別の女が喋る。

 鑑定しとくか、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 花京院 鞍馬カキョウイン クラマ  22歳

 レベル 91

 スキル 剣術極 初級火魔法 疾風 中級光魔法 生活魔法

 ユニーク 勇者

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 花京院 雫カキョウイン シズク  21歳

 レベル 89

 スキル 銃術極 中級風魔法 鷹の目 回復魔法 初級土魔法

 ユニーク 銃火器

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 十六夜 麗花イザヨイ レイカ 22歳

 レベル90

 スキル 忍術極 一撃 投擲 召喚術 罠発見 初級雷魔法

 ユニーク 忍び

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 面白いなぁ、極めなんてあるんだな。

 しかも勇者かよ。


「ここは共同してだな「断る」は?」

「俺たちは忙しいんだから邪魔しないでくれよ!」

 そう言うと男達はモンスターの残党を狩りにビルの隙間を通って行った。


「おいおい、そんなこと言ってる場合じゃないだろ?」

「いいからサッサと終わらせましょう!」

 カグヤの言う通りだな。

 俺たちはバラけてモンスターを撃破して行く。

 

 ようやく終わったが被害が尋常じゃないな。

「よくやってくれました、ありがとうございます」

 忍田さんがヘリから降りて来て俺の前に来る。みんなも集まって来た。

「なぜスタンピートが起きたのですか?」

 タダスケが聞くが、忍田さんは顔を顰める。

「ここだけの話、新宿ダンジョンは死亡者が多発してまして、それが原因ではないといいのですが」

 本で読んだが、ダンジョンは人が死ぬと成長するなんて書いてあったな。


「おいおい、なんでそっちにお礼をいってるわけ?」

「お礼なら河合クランにでしょ?」

 出たな兄妹冒険者!

「どう見てもこちらの方が多く倒しているでしょう?」

「そんなことはどうでもいいんだよ、俺たちが来たからスタンピートが無くなったんだろうが」

「ここは河合クランの陣地でしょ?」


「それは勝手に決めたあなた方の言い分です。私はヘリから見てましたから」

 忍田さんはちゃんと話ができる大人だな。

「ふ、ふん!河合クランを敵に回すつもりか?」

「私は公平な立場での証言をします」

「くっ!覚えておきなさいよ!」

 

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