第8話 仲間


「なるほど、それでクロガネが押しかけて来たと」

「そうなんですよ。まぁ、自衛隊の方ですし協力はしますが」

「いや、沢さんにはご迷惑をお掛けして本当に申し訳ない」

 白井さんは頭を下げて謝っている。

「いや、大丈夫ですから頭を上げてください」

「いや、一般人を巻き込むなんて言語道断!クロガネは上司ですがさすがに今回は行き過ぎです」

「そうなんですか?で、でも俺もダンジョンに潜ってて…」

「なに!あなた自身がですか?それは危険です。すぐに辞めてください!えっ!と言うかダンジョンが二個あると言うことですか?」

 白井さんは目を白黒させて聞いてくる。

「俺がここを紹介してもらったらダンジョンもついて来てしまったらしくて」

「そんなことが…これは重大なことです!沢さんの身柄「忠輔、それはもう無理だ」クロガネ一尉!」


 起きたらしいクロガネさんは俺の横のソファーに座ると、ビールに手をつける。

「あ、俺が飲んでたやつ」

「あぁ、悪い。忠輔も聞いた通りダンジョンは拓磨殿についてまわっている。一般人を拘束出来ないし、しても意味がない。私達よりはるかにレベルが高いのだからな」


「えっ!そんなにですか?」

「そうだ、出来れば我が部隊に入って欲しいほどだ」

 嫌だ、絶対にこき使われるのが分かってるのに。

「ではなぜ?」

「顔を見ればわかるだろ?」

「は、はは」

「あぁ、なるほど。ですがこれは重大機密ですが」

「ここだけの話、私のレベル上げを手伝ってもらっている」

 そこまで言っちゃうんですか?


「それは職権濫用じゃ」

「ここだけの話と言った。私と拓磨殿は仲間なのだ」

「は?」

 ここでまたスマホの通知が来た。どうせヒントアプリだろう。

「拓磨殿、スマホを見せてあげてくれ」

「…はい」

 やはりスマホにはヒントアプリから、

 ・仲間を増やす 1/2

 と言うメッセージが入っていた。

「これは?」

「俺のユニークです。スマホに連動してスキルなんかがとれるんですよ。今は白井さんを仲間にしろって書いてあります」

「どうだ?仲間にならないか?忠輔?」

 クロガネは両手を広げて悪役のようだ。

「むぅ、これはどう言うことか?」

「仲間を増やすとまた何か新しい実績が解放されるので俺としても仲間になって欲しいのですが」

「よ、よし分かった仲間になる」

『実績達成、パーティー機能実施』


「パーティー機能?ん?おぉ!私のスマホにも階層転移と連絡が追加されているぞ!」

 クロガネがいち早く反応している。

「わ、私にもそのアプリが入っています」

 白井さんも入っているようだ。

 だがこれで夜も安眠できるようになったな!


「早速あちらのダンジョンで使ってみようではないか!」

「そうですね!沢さんありがとうございます。ですがダンジョンにはあまり入らない「忠輔!拓磨殿はこちらのダンジョンでレベルを60以上にしている実績がある。さすがに入るなとは言わないよな?」…わかりました。がくれぐれも気をつけて」

 白井さんは渋々受け入れたようだ。

「はい、無茶なことはしませんので、あっ!そうだ、これをクロガネさんに」

 死蔵していた水龍剣を渡すと、

「こ、これはダンジョン産の剣か?ありがとう」

 軍服の上だが抱きしめられていい匂いがする。

「これで先に進めるな!忠輔行くぞ!」

「はい!沢さんありがとうございました」

 2人が去った後ようやく静かな時間が訪れた。

 新しいビールを開けてから誰に向かってやるわけじゃないが一人で乾杯をしてビールを飲む。


 次の日はメールの受信で起きた。

『おはようございます、白井です。これからテストで階層移動を行います。そちらでも何かあればお知らせください』

 律儀な人だな。


『パーティー以外は移動できないようなのでまた今夜伺ってもよろしいでしょうか?』

「あぁ、パーティー機能がついてないと移動できなかったか」

 いいですよと返すが、クロガネさんから居酒屋の場所を指定してきた。


「今日は飲むつもりだな?」

 お金は自衛隊持ちらしいから気兼ねなく来いとのことだった。


「おぅ!こっちだ!」

 クロガネさんが呼ぶのでそちらに向かうと座敷にはクロガネさん、白井さんの他に四名の男女が座っていた。

「こ、こんばんわ、沢拓磨と言います」

「そんなことはどうでもいいから座れ!」

 クロガネさんが首根っこを捕まえて座らせる。俺は隣らしい。


「クロガネさん!無礼講過ぎますよ」

 白井さんが助けてくれる。

「あはは、それじゃカンパーイ」

「「「「「「カンパーイ」」」」」」

 何故か俺の生中もあって乾杯してしまった。

 “ブブッ!”っとスマホが振動したのでみてみると、


 ・仲間を増やす 2/6


 となっていた。

 それを覗き見たクロガネさんと白井さんがニンマリしている。

 「よし、ユカリから順に挨拶してくれ」

 スクッと立ったのは紫と呼ばれた、ショートカットの女の子だった。

「自分は立花紫タチバナユカリっす。ユニークは紫電です。23歳になりまっす」

 次に立ったのは少しチャラそうな男、

河合武文カワイタケフミユニークはひみつ、22歳」

「河合!覇気が足らんぞ!」

「うーっす」

 白井さんにもこの態度はどうなんだ?

 次に立ったのはポニーテールの女の子で髪の色が赤だった。

「あーしは、小坂環コサカタマキですぅ。ユニークはひみつ。歳は20歳ですぅ」

「もっとしっかりしろ!」

「はぁい!」

 最後は大柄な男で角刈りだ。

「自分は!大垣慎二オオガキシンジです!ユニークは頑強!25歳です!」

 ふぅ、挨拶を済ませたので俺もと思ったが、

「こいつは沢拓磨だ。こいつと仲間になると言ってくれ」

「「「「はい」」」」

『実績達成、ショップ機能の拡大、開放を実施』

 みんなにも通知が入ったらしくみんなスマホを見ている。

「拓磨殿?このショップとはなんだ?」

 クロガネさんが聞いてくるので金貨を出して。

「これをスマホに近づけて下さい」

「おぉ!吸い込まれた!」

「それで買い物ができるようになりますから」

「これは現金は?」

 白井さんが聞いてくるが、

「現金はダメみたいです。あとはダンジョン産の金貨や銀貨しか試したことはないですね」


「これで金貨の使い道も分かったな!ありがとう拓磨殿」

「いえいえ」


 そのあとはどんちゃん騒ぎで幕を閉じたが、こんなに仲間増やして大丈夫なのかな?

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