未来行き列車

紅杉林檎

第一章 未来行き

二千二十四年駅


「はぁー私、このままでいいのかなぁー」


 そんな言葉を、深いため息と同時に吐きながら今日も今日とて冷たい風を真正面から浴び、すっかり冷たくなった瞼を指で擦り、渋谷行きの電車に乗るため、駅のホームに足を落とした。


「そういや、昨日投稿した小説、今どんぐらい読まれるかな」


 ポケットからスマホを取り出し、昨日、web小説投稿サイトに投稿した自作「ゆめ最中さなか」のpv数を確認した。

 だけど、そこにあったのは一向に動かないpv数、ゼロの数字だった。


「嘘......最近書いた中で一番手応えがあったのにpv数ゼロ!?」


 ショックのあまり、手からスマホが滑り落ちそうになった。

 pv数ゼロ......それは、流行りに乗らず自分がを書いても評価されると、web小説界隈に触れたら弾けそうなシャボン玉の夢を見る十六歳の未来ある小説家の卵の筆を折るのに充分過ぎる結果データだった。


「私って才能無いのかな......」


 そんな事を頭の中でぼやいていた。

 そんな時____


「まもなく〜快速急行渋谷行き〜列車が到着します。危ないですから黄色い点字ブロックまでお下がり下さい」


 駅のホームに、電車到着のアナウンスが鳴り響いた。毎朝聞いてるからもう慣れたがこう......気分が下がってる時に聞くと少々腹が立つ。


(どうせ車内では暇だし、「夢の最中」の推敲でもするか......)


 遠くの方から電車の走る音が聞こえてきた......

 それに合わせて、まばらだった周りの人達も息を合わせたかのように、二列に並んだ。

 ホームに電車が入ってきた。だが、それは、その電車は私が想像してた電車とは姿形全てが異なっていた。

 まず、車体の色はいかにも無機物な銀色では無く、まるで、星空のような、暗いけど明るい、暗さの中に青色のアクセントを加えたような、まさにという言葉がピッタリな見た目だ。

 私は眼前に立つ幻想世界から来たかのような列車に魅せられていた。見た事ない物を見てみたい。この好奇心は、


「わぁ......」


 ホームの隙間から入ってくる外の風が、私の背中を、列車の方へと押してくる。

 この列車に乗りたい....全部を乗りたい......!


「二千二十四年駅〜二千二十四年駅でございます〜。次は〜二千二十六年駅でございます〜」


 二千二十四年駅、二千二十六年駅......どちらも聞いた事の無い駅名だ。明らかな異常事態、これに乗ったらじゃ済まないだろう。でも私は____


「そこの茶髪お客様〜ご乗車ならないんですか〜?」


 車掌と思わしき者の声が、今にも飛び出しそうな私の背中を後押しした。

 私はこの列車に......乗るんだ!

 私の名前は「近来 故生きんらい こい

 今、幻想世界から来たかも知れない列車に、飛び込むダイブする。


「この列車に乗って


「この列車は、乗客のを見せる幻想列車【ミライ】でございます。どうぞ、ごゆっくり下さい」


 そんな言葉を聞きながら、私は列車に乗った。

 もしも未来が、本当に見れるなら私は____


「理想像を、創りたい!」


 私が列車に乗った瞬間、列車の扉はプシューと音を立てながらゆっくりと、閉まってった。

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