「嘘遊記」如来に仕組まれた西遊の旅 終わることができない輪廻

@aprilChan419

第1話「嘘遊記」如来に仕組まれた西遊の旅 終わることができない輪廻 序上


「お師さん!ようやく着きましたよ!」壊れかけの装備を着ている孫悟空が先頭に立ち、目の前に広がるのは金色に輝く寺であった。

「大雷音寺」、これこそが西遊ご一行が目指すこの旅の終着点、お経の所在地であった。

「多くの苦難と長い時間を経てようやく着きました、我が弟子たちよ...これまでのおつかいご苦労であった。」白馬に乗った三蔵法師は、涙を浮かべながら弟子たちに向かってこう呟きました。衆生の福祉のために旅に出た彼らの旅路がついに終わりを迎えたのだ。

だが彼らはまだ知らない、ここに待っているのは一体なんなのか、果たして本当に彼らが目指しているものはここにあるのだろうか

「ブヒブヒ、兄者よ、釈迦如来様はこの大雷音寺でお経を取りに来いって言ったんじゃないの?なぜこの寺の中に何もないの?」猪八戒は腹を抱えながら、寺のあちこちを見回していた。

「確かにこの状況は怪しいな。前に来た時と全然違う、八大金剛とその門下の弟子たちはここにいたはずだ、しかし今では誰もいない、それに霊気すらも一切感じられない、これではまるで...」 悟空はこれまで何度も釈迦如来様に助けようを求めるためにこの大雷音寺を訪れたことがあったが、今日の雰囲気は昔来た数回とも全く別物って言えるほど空気がおかしい。

「まるで罠のようですね...」沙悟浄があと続けて言った。

この空っぽになった大雷音寺中には三蔵法師、孫悟空、猪八戒、沙悟浄、そして白馬の玉龍だけしかいないようだ。だが金玉のように輝く聖廟の外にはただならぬ妖気が漂っている。

「うん...どうやら我らは包囲されるようだな...」孫悟空は耳から金の針を取り出し、その針が彼の妖気に応じて如意金箍棒に姿を変化した。

「悟空よ…これはきっと何かの間違いに違いない、この聖なる山に罠があるわけがない。」三蔵法師は竜馬から降りて、武装していた孫悟空に近づこうとしている。

「いや……ブヒ……わしらはハメられとる、この大雷音寺に聖典なんで存在しない、窓の外にはこんなにも妖気が溢れている……」猪八戒は九歯馬鍬を手に取り、ここにあるのは美味な食べ物はなく、ただただ無数の妖魔が歯を剥き出してこちらの様子を伺っている。

「お師さん、後ろに下がってください、兄者はお師さんの身を守ってください……釈迦様はすぐに助けに来てくれるはずだ。」沙悟浄は降魔杖を握りしめ、ようやく任務が終わり、戦事ばかりの日々とおさらばすると思っていたか、どうやらこの妖魔たちはそれを許してくれなさそうだ。

「悟浄!戻ってこい!」孫悟空は突進する沙悟浄を見て、沙悟浄の突進した先には死兆星がその方向に輝いている。

妖気はあちこちで満ち溢れている、この大雷音寺を包む妖気はかつてないほどに濃くなっていだ。

「兄者……いつもお前が主役を取っていたか、今回ばかしは……わしらに譲ってくれよ。」猪八戒は沙悟浄を支援するために同じ方向に突進していた、それが天蓬元帥の命の終点であることを心得ていながらも、三蔵法師のために、たとえ一秒だけでもこの妖魔の軍勢の進行を止めようとしている、たとえ結末が変えられなくとしても。

「これまでの努力を無駄にしないためにも。」白馬の玉龍はたちまち飛龍に姿を変え、これこそが龍王の三太子と呼ばれる真の姿、龍が顕現した。

この西天への旅の終点は、衆生を救済する仏の光はなく、薄黒いく命を奪う幽闇が広がっていた。

九歯馬鍬は蜘蛛の糸に絡まれて、猪八戒の手足は地面から生えた白骨にしっかりと捉えられていた。

「八戒兄さん!」沙悟浄は降魔杖を使って猪八戒を救おうとしたが、突如現れた七星宝剣に後ろから腹部を突き刺された。

「雷雷召雨!」玉龍はその角で風雷を集めようとしていたが、より猛烈な風が彼の力を吹き散らした。

「君の実力じゃ私たちと遊ぶ資格すらないわ。」鉄扇公主の芭蕉扇の一撃で玉龍は吹き飛ばされていた。

妖魔がどんどんこの大雷音寺に押しかかっている、そこから飛び出ていた青獅王が第三太子の龍角を掴んでいた。

「龍なんで大したことないな。」龍の角を折られて、悲鳴を上げる玉龍は球のようにねじ曲げられていた。

「孫悟空が天界から何度も救援を呼ばなかったら、お前たちはとっくに黄泉送っていたわい!」大鵬金翅鳥はそう言いながら自分の爪を猪八戒の胸を貫いた。

「この豚を食べてもいい?この臭い豚は私たち姉妹の風呂を覗き見したことあるから、ずっとずっと骨の一片も残さず食べちゃいたいと思ってたのよ。」蜘蛛の精の七姉妹の一番上の姉は、わずかな息の根を残っている猪八戒を抱きしめながらそう言った。

「それは構わない……だが三蔵法師の肉は数が少ない、それをあげたら俺様と三蔵法師の肉で争うんじゃねえぞ。」蜘蛛の精の七姉妹のすぐ後着いている百眼魔君の両目は三蔵法師に釘付けだ。

猪八戒、沙悟浄、玉龍この三人の姿はあっという間に塵とかしていた、襲ってきた影の正体は旅で倒していたはずの妖魔たちだった。


「そんな…悟空よ、この者たちはあなたが倒したではないのか?」三蔵法師はこの見知った姿達に震えながら見つめていた。

蜘蛛の精、白骨の精、蠍の精、それに車遅国の三人の大仙、彼らは孫悟空に倒されていた妖魔たちだ。

「それだけじゃない、仏様に連れ去られた者たちも、この人の世に戻っている。」孫悟空の目にしたのは、彼には一人では勝てない妖魔たちだった。

百眼魔君、九霊元聖、金角銀角、青獅王、黄牙白象、大鵬金翅鳥、仏様達によってに制御されていた大妖たちが、彼の仲間の死体を踏み越えて姿を現していた。これだけじゃない、四方八方からさらに多くの妖魔たちが襲いかかようとしていた。

黒いの纓槍が三蔵法師と孫悟空を分断した、殺気に漂っている混鉄木が上から孫悟空を押さえつけている。

「黒風怪!それに牛魔王までもか!」仏様に連れ去られ従属させられた二人の妖魔が、憎しみを満ちていた目で、如意棒で必死に止めようとしている孫悟空を睨みつけた。

「わしは本来は自由気ままに王として生きていたのに、お前の裏切りのせいで人間なんかに隷属する身となった!」牛魔王はかつて孫悟空と義兄弟の仲をか交わしていた、しかしの孫悟空せいで牛魔王の妻が彼を捨てていなくなり、天界に捕らえられた運命に落ちてしまった。

死者が蘇り、善行を強いられていた者もまだ、この人の世に戻っていた。

「ハハ!今度こそ誰もお前たちを助けられない!私が三蔵法師の肉を食らうことはもう誰も止められない!」紅孩児は三昧真火を吹き出し、寺内はたちまち火の海と化していた。

襲撃に来た妖魔たちはみな、三蔵法師の肉を求めてやってきた。一口だけでも三蔵法師の肉を食べると、その身は不老不死となり、妖力も大幅に増える言い伝えがありました。

「妾はこんなにもあなたのことを思っているのに、あなた様は妾を拒みました、妾を死までに追い詰めていた!三蔵法師、今日こそこの借りは返してもらうわ。」蠍の精はそう言いながら三蔵法師の首筋を強く噛んだ。

「悟空...早く...早く逃げて...」捕えられている三蔵法師は、たちまち群魔どもに押し寄せられて、誰も彼もその血肉を手に入れようとしていた。

「どけ!テメェら、この孫の邪魔するなぁ!」孫悟空はかつて天の都に大暴れした威風の姿に変身し、三つの頭と六本の腕で、如意棒を握りしめた。

「我こそは、花果山水簾洞の美猴王〜斉天大聖孫悟空也!」孫悟空は力を込めて妖魔たちの群れに突き進んだ、二本の如意棒で牛魔王と黒風怪の武器を打ち破った。

金角銀角は太上老君から盗んだ宝物を使って応戦し、悟空は二本の棒でそれぞれの妖魔たちの攻撃を防いていだが、襲いかかる妖魔の数は倒しても倒しても倒しきれない。

「孫悟空、まだ会ったな!」九つの獅子の頭と人の体を持つ巨大な妖怪、九靈元聖が悟空に拳を両脇から挟む形に攻撃した。

「九靈元聖!」元々も太乙救苦天尊の乗用として従っていたが、今はその身で孫悟空を動きを止めていた。

「変化の術!」この四面楚歌の状況に孫悟空は煙に姿を変え、三蔵法師のいるところに瞬身した。

しかし、いくら三つの頭と六本の腕を持つ孫悟空でも、恩師の身はを救うことはできなかった。後方から、さらに八つの赤い鳳凰の頭が孫悟空の手足に噛み付いた。

「くぅ...九頭駙馬め...」孫悟空は後ろ振り向いて、この妖魔こそが西遊一行と天兵の追撃から逃れていた者、九つの鳳凰の頭を持つ神秘な大妖怪だけだった。

「私の頭を砕いた恨みを晴らしに来たのだ。もちろん...三蔵法師の肉もいただく!」あの日、孫悟空は二郎神たちと九頭駙馬を捕まえようとしたが、最後には哮天犬に一つの頭を噛まれ、辛うじて逃げ延びた。

「お師さん...」悟空は鳳凰の噛みつきを無視し、手足を引きちぎられながらも、三蔵法師のいる場所に向かって進んだ。

「悟空...」弟子たちの次々の死に行く様子を思い浮かべながら、三蔵法師は自分が受けている苦痛のこともも忘れていた。


彼は手を伸ばしていた...たがその手は悟空の手を掴もうとしてるわけではなかった、悟空の背中にあるこの大雷音寺の唯一の出口を指でさした。

「諦めないでくれ!お師さん、もう少しの辛抱だ、すぐ助けに行く!」悟空は師匠のことを決して諦めず、やむを得ず最悪の選択を取っていた。

そして、悟空は自分のすべての妖力を爆発させた、三蔵法師を取り囲む妖怪たちに向かって棒を振り回す。

黄金色の如意棒が妖魔の間で振り舞われ、本来力及ばなかった妖魔たちは、三蔵法師の血肉を食ったことで力が倍増されていた。

三蔵法師はあっという間に噛みちぎられた死体となり、妖魔たちに包囲されいる孫悟空も全身に大きな傷を負い、わずかな息しか残っていなかった。

幸いにも、仏の光がようやく大雷音寺を照らし、仏の光に導かれて千万の軍勢は妖魔たちに攻撃を仕掛けた。

「目標が達成された以上、もうここにとどまる用はない、この場から引くぞ。」襲撃を仕掛けた妖魔は天の軍勢が迫ってきたのを見て、この場から逃げようとした。

「この声は...」血で目が覆われていたが、孫悟空はこの声の持ち主を全く知らないわけではなかった。

「また会おう。悲劇はまた始まったばかりだ。」

強く抵抗する一部の妖魔を除いて、よりずる賢い大妖怪たちは次々と大雷音寺から姿を消した。

「遅くなってすまない。」二郎神、哪吒、李靖が十万の天の軍勢を率いてこの場に到着し、たちまち残りの妖魔を鎮圧した。

道と仏の代表である太上老君と釈迦如来も一歩遅れてやって来た。

「どうして...こんな...」力尽きた孫悟空はついに倒れて立ち上がれなくなった。

西遊の旅は予想外の形で終わりを迎えた。

……….


大雷音寺の中で、孫悟空は一つの部屋で意識を取り戻した。

「観音菩薩様、我は……いったいどれくらい眠っていた?」孫悟空はゆっくりと目を開け、体の傷もは観音菩薩の治療によってすっかり回復しました。

「そうですね、まだ一日も経っていません。」しかし、この一日で天界の神や仏たちに大きな衝撃を与えた。

「お師さんたちは……お師さんたちはどうなっているんだ?」たとえ嘘でも、孫悟空は14年間生死を共にした兄弟と師匠がまだ生きていることを他人から聞きたかった。

「遺体は全部弥勒殿にある。太上老君と釈迦如来は今その対策を練っているところです。」しかしその望みも二郎真君の一言で打ち砕かれてしまった。

それを聞いた孫悟空はぼんやりと弥勒殿に向かって歩き出した。昔、天と地をひっくり返すほど暴れていた斉天大聖が今ではただの無力な存在になってしまた。

「如来よ、これでは私たちの計画と大きく違ってるではないか?」太上老君が釈迦如来に尋ねました。

西遊の旅は、道と仏の両方から共同で計画したもの。玉皇大帝はただ天界の代表として協力するよう命じられただけだ。

「大雷音寺へ誘導された妖魔の数は、予想以上に多く、組織的な行動をとっていた……そして何よりも、この件が私の計算していたよりも早く起きている。」妖魔たちを集結させて、そしてその妖魔を待ち伏せし一気に殲滅する、これが釈迦如来の計画だった。

三蔵法師はあくまでもその計画の餌に過ぎなかった。

「三蔵法師の血肉で妖魔たちがどれだけ強化したかは分からない以上、この計画は失敗どころか状況は悪化したではないか。」太上老君もまたこの計画の主謀者の一人で、西天に向かう途中の妖魔たちを討つ計画を立てたが、結果的には妖魔たちはますます手に負えない存在になってしまった。

「さっきから……お前たちは一体何を話しているんだ?」この計画のせいで大事な人たちをを失ったばかりの孫悟空が二人の神に尋ねました。

「孫悟空か、今日の出来事については遺憾の意を表するよ。」釈迦如来は冷たくその返事をした。

「オレが聞いているのは……お前らはさっきからなんの話しているんだ!」裏切られていた孫悟空は如意金箍棒を手に取り出した。

「孫悟空、お二方の御前だぞ、無礼な態度はやめろ。」二郎神が三尖両刃槍で孫悟空を指した。

「お前はさっさと失せろ……オレはお前に話しかけてるんじゃな!」孫悟空は二郎神に向かって突進し。500年前に決着のつかなかった戦いは、今日でその戦いを再開する口実を得たのだ。

怒りに燃えている猿魔はも誰も止められない


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