四人で下校

 おばあちゃん先生ことやなぎ先生と話を続けている間に六時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。

 俺の事を相談する形となった民人たみとは結局体育館に戻らなかった。

 そういえば鼻血は止まったんだろうか。詰めていたティッシュを取ってみると、それ以上垂れて来る事はなかった。


「もういいでしょう、念の為今日は激しい運動は控えて下さいね。

 お風呂は大丈夫だと思ったら入ってもと思うわ。それほど神経質になる必要はありません」


 との事で、俺と民人は柳先生にお礼を言い、教室へ戻る事に。


「いっくん、大丈夫なの?」


 教室へ戻る途中で羽那子はなこはやしさんと出会った。二人は体育の授業を終えてセーラー服に着替えた後、同じく学ランに着替え終わった男子に俺達の事を聞いたそうだ。

 俺と民人の着替えと鞄を持って保健室へ向かう途中だったらしい。

 今さら引き返して保健室で着替えるのは違うし、教室へ戻るよりも下駄箱の方が近いので、俺と民人は着替えずジャージ姿のまま帰る事にした。


 俺と民人は部活に入っていないし、林さんも恐らくそうなんだろう。羽那子も特に何も言わずついて歩いている。


「なるほど、いっくんの家にあるアルバムを見せるって発想がなかったわ」


 俺と民人、そして合流した羽那子と林さんの四人で下校する。何故か話の流れで民人と林さんも俺の部屋でアルバムを確認する事になってしまった。

 まぁ別にいいんだが。


「そう言えばみっきーはまだ手続きが残ってるとかで、授業が終わってすぐ職員室に行ってたよ」


 林さんが俺に向かってそう告げる。


「何でみっきーだけ保健室に来てくれないんだろうって考えてなかった?」


「全く思ってないかったけど?」


「話の展開的には一番に駆け付けるパターンよね」


 いやいや羽那子、そんな良く出来た作り話みたいな展開にはならんから。

 運命の再会って言ったって、数日間を仲良く共にした友人との再会って意味で言っていたんだろうし。


「メインキャストが鈍感キャラってのも王道パターンよねー」


 しつこいな。


伊千郎いちろうの家に行くならおやつ買って行こうぜ」


「飲み物もいるね」


 通りかかったコンビニに民人と林さんが入って行く。後について入店。

 おやつなぁ、スナック菓子でいいかな。いや止めておこう。手が汚れるからアルバムを触れなくなる。


「じゃあ個包装のチョコならいいんじゃない?」


「いや、俺ホワイトチョコ食えないから」


 普通のチョコはニキビ出来ても食べるくらい好きだけど、ホワイトチョコはどうしても好きになれん。風味が苦手なんだよな、小さい頃から。


「そうなんだー」


 と言いつつ俺が持つカゴにホワイトチョコを入れる羽那子。まぁ自分で食うならいいんだけどね。


「中学の時にクラスの女子から貰ったバレンタインデーの手作りチョコにホワイトチョコで『いちろうくんへ』って書いてあったの頑なに食わなかったもんな。

 代わりに俺がありがたく頂いたけど」


 あー、あったなそんな事。いくつか貰った中の一つだけ食べられなかったんだった。

 ピーナッツ入りとかキャラメル入りとかは大好きなんだけど、白いのだけはダメ。

 

「へー、そうなんだねー」


 聞いているのかいないのか分からん返事をしながら、羽那子がチョコ系のお菓子を次々に入れて行く。これ、誰が払うんだ?


「飲み物はどうする? 俺最近エナジードリンク好きでよく飲んでんだ」


 民人が翼を授けてくれる炭酸飲料を手に取る。それ、チョコに合うのか?


「私は紅茶にしよっと」


 林さんはミルクティーを手に取る。


「コーヒーで良ければ家で淹れるけど。レギュラーコーヒー」


「あー、私コーヒーは苦手なのよね。わざわざ落としてもらったコーヒーにミルクたぷたぷ砂糖ドバーってするの申し訳ないからさー」


 なるほど、なら紅茶でいいか。


「で、羽那子は?」


「あたしはコーヒー好きよ。自分で淹れた事ないからいっくん頼んだ」


 はいはい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る