第52話 鈍感☆魔王さま!
「じゃあ本当に人間として――男子高校生の黒野真央として生きていくつもりなんだね?」
「ああ、そうだよ。星奈先輩も――ルルセナも同じなんだよな?」
「アタシもこの素敵な世界を壊す必要は、これっぽっちも感じないねぇ」
「だよな」
当時からルルセナは――好戦的な他の四天王とは違って――なんとか停戦に持ち込んで不毛な戦争を終わらせたい俺と、近い考えを持っていた。
「ちなみになんだけど、魔王としての力はどれくらい戻っているんだい? 見たところ、ロゼッタはまったく魔力を持っていないようだけど」
「ロゼッタは記憶だけしかないらしい。俺のほうは5割ってところだけど、正確なところは分からないかな。いつどこでルミナに監視されているかわからないから、試すにも試せなくてさ」
「監視……? うーん……?」
星奈先輩が眉を寄せながら小首をかしげた。
「なんでそんな不思議そうな顔をするんだ?」
「いや、魔王さまが遊佐さんに疑われているようには、見えなかったけどねぇ?」
「いやいや、めちゃくちゃ疑われてるっての。気付かなかったのか? 一緒にいるときとか、俺の視線の外からマジでずっと見られているんだぞ?」
最強魔王たる俺ほどになれば、誰かに見られているといったような他者の視線を、うっすらと感じることができる。
マジで一緒にいるときはずっとルミナに見られて観察されているのだ。
「……まぁ、そうなんだろうね」
「なのにほとんど何も言ってこないときた。ただただ、こっそりじっと見ているだけ」
「……まぁ、そうなんだろうね」
なんだろう。
俺が切実な思いを語ってるってのに、星奈先輩はなんとも気のない返事のように聞こえてしまう。
危機感が共有できていないのだろうか?
俺は割と説明が得意な方だと思うんだが……まぁ今はいい。
「教室じゃ隣の席だろ? 放課後は部室でずっと一緒だろ? もう毎日毎日四六時中、プレッシャーが半端なくてさ」
「……」
「ま、おおかた俺の神経をすり減らして致命的な失言を誘う作戦なんだろうと、俺は見ているんだがな。十中八九、間違いない」
「…………」
アリのはい出る隙間もない俺の完璧すぎる推理を聞いた星奈先輩はしかし、なぜか黙り込んでしまった。
きっと今日の特別監査で見たことと、俺の説明を脳内で比べながら吟味しているに違いない。
「それに加えてロゼッタのやらかしの後始末もしないといけないしさ。ここ最近の俺は気の休まる暇もないくらいなんだ」
「あのさ、魔王さま。『わかるだろ~』みたいな共感して欲しそうな顔をしているけど、アレは全然そういうのじゃなくて――」
星奈先輩が何事か言いかけて、しかし途中で口をつぐんだ。
「全然そういうのじゃなくて――なんだよ? 俺の推理におかしいところでもあったか?」
「おかしいところというより、そもそも根本的なところがダメというか……」
「悪い。何が言いたいのかイマイチ分からないから、もっと具体的に言ってくれないかな? 取っ掛かりすら掴めないんだ」
「うーん……、ごめんね。こればっかりは内緒かな」
なんとも曖昧な言葉を紡ぎながら、星奈先輩が小さく苦笑した。
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