魔王と勇者の即死恋愛(デスゲーム) ~魔王(前世)の俺が、隣の席のSランク美少女JK勇者に好意を向けられている件。バレたら死ぬ…
第9話「いえいえ、布教活動は大事ですから。マンゴー星系・日本支部の住人を増やしていかないと」
第9話「いえいえ、布教活動は大事ですから。マンゴー星系・日本支部の住人を増やしていかないと」
「これは……アメだな」
「はい。男の子のお腹の足しになるとは思いませんが、ないよりはマシだと思うんです」
「……実はルミナって大阪のおばちゃん?」
「花の女子高生に向かって、おばちゃんはさすがに失礼ですよ、マオくん。ぷんぷんです」
ルミナが頬をハムスターのように膨らませながら、右手の人差し指で俺の鼻先を指さした。
「冗談のつもりだったんだが、すまん。今のは俺が悪かった」
素直に謝る俺。
気を使ってくれた若い女の子をおばちゃん呼ばわりは、さすがにアウトだ。
余計な火種を生むだけの無益な行為を、よりにもよって勇者相手にして、無用な敵意を向けられにいく必要はなかった。
「いえいえ、私も今のは冗談でしたから。ぜんぜんちっとも気にしないでください。別に怒ってはいませんので」
「そうなのか?」
「はい。むしろマオくんって大人っぽいのに、冗談を言うような楽しい一面もあるんだなって思いましたから。ふふっ♪」
嬉しそうに笑いながら、ルミナが手に持ったアメをどうぞどうぞと差し出してきたので、俺は余計なことを言ったことを反省しつつ、素直にアメを受け取った。
受け取る時にルミナの指先が俺の手にわずかに触れる。
女の子の柔らかくて温かい指の感触に、はからずもドキッとしてしまった。
「ありがとうルミナ」
手のひらの上のアメを、俺はじっと見つめる。
「えっと、食べないんですか?」
アメを手にしたまま黙り込んだ俺を見て、ルミナがいぶかしげに問いかけてきた。
おっとと。
食べたら終わりの自白系の神聖魔法でもかかっていないかと、一瞬疑ってしまった。
(神に逆らう者を見つけ出すための禁忌の魔法。かつて魔女狩りや異端審問に使われた。神は己に歯向かう者には容赦はしないのだ……)
だが、さすがにそれはないだろう。
あれは下手にやると、対象者を廃人にしてしまう危険な魔法だからな。
ただの高校生相手に使うには危険すぎる。
魔女狩り時代ならいざ知らず、確信に近い疑いを持った時にのみ、最後に必要な自白を得るための最終手段だ。
つまり俺が使われるには、さすがにあれこれすっ飛ばしすぎだった。
ちなみに異世界ラビリントスにおける魔女とは、人間社会の裏切り者――つまりは魔族への内通者を指す。
「いただきます。おっ、マンゴー味だ。美味しいよな、マンゴー」
「美味しいですよね、マンゴー味。フルーツアメの中ではこれが一番好きなんです」
「そんなに好きなのを貰っちまって悪かったな」
「いえいえ、布教活動は大事ですから。マンゴー星系・日本支部の住人を増やしていかないと」
「あはは、なんだそりゃ」
妙なことで力説するルミナに俺は思わず苦笑した。
さっきから話してると、かなり面白いやつなんだな、ルミナは。
美人だし、明るいし。
勇者じゃなければ仲良くなれそうだったのに。
「目下の目標は、売り場の拡充ですね。知ってます? スーパーに行っても本物のマンゴーって全然売っていないんですよ」
「言われてみれば、確かに実物はほどんと見たことがないな。アメとかジュースとかの加工品だと割と見かけるけど」
「でしょう? かくいう私も正直、実物はあまり食べたことがないんですよね。そもそも売っていないので、買えません」
マンゴー事情なんていう、かなりどうでもいいことを楽しそうに語りながら、ルミナが歩き始めた。
俺もアメをなめながら、ルミナに続く。
俺は下手なことを言わないように最大限の注意を払ってこれ以上ないってくらいに警戒していたんだが、ルミナはいたって普通の高校生がするような、他愛もない話ばかりをしてきた。
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