第11.5話 💕ルミナの乙女回路💕
💕ルミナSIDE💕
昼休みに元魔王の黒野真央と、現代日本で運命的な再会を果たしたルミナは、教室で5時間目の古典の授業を受けていた――のだが。
「~~~で、あるからして、この意味は~~」
古典のおじいさん先生のゆったりとした声がもたらす眠気を誘う授業を、背筋を伸ばした美しい姿勢で、いかにもまじめに聞きながら。
しかしルミナは頭の中で、真央との昼休みのやり取りについて考えてしまっていた。
ちなみにルミナはあまり勉強が得意ではないので、授業はちゃんと聞いておかないとまずかったりする。
それはさておき。
(マオくんといると、なんだか無性に胸がドキドキしてしまいます。
どうしてだか、意識せずにはいられません。
つい視線を向けたくなってしまいます。
なんなんでしょうか、この気持ちは?)
ルミナは心の中で、自分自身へと問いかける。
(最初はマオくんが、魔王ブラックフィールドの転生体だからだと思っていたんですが、どうやらそれは違ったみたいです。
闇の魔力の残滓があったように感じたのも、多分、私の勘違い)
実のところ、ルミナは前世で勇者ルミナスだったころから、魔力を感知したり識別したりするのが、あまり得意ではなかった。
そういうのはパーティの頼れる仲間たちが担ってくれていたのだ。
面倒なことや苦手なことは信頼できる仲間に任せて、勇者ルミナスはその圧倒的な戦闘パワーでもって、立ちはだかる敵を粉砕さえすればよかった。
そんなルミナだったから、真央=魔王だと思ったのは完全に自分の勘違いだと、そう結論付けてしまったのだ。
(それにしてもさっきの私はダメすぎです。
いきなり「魔王でしょう?」はないですよね。
マオくんから変な女の子だって思われたかも。
ううん、絶対に思われちゃっています。
いきなり前世で勇者だった、なんてことを堂々と言ってしまったら、どう考えてもヤバい女です。
それも初めて話したクラスメイトに。
イタい、あまりにイタい女の子すぎます……)
ルミナはさっきのことを思い出して、「はぁ……」と大きなため息をついた。
ヤバい女の子を意味する地雷系女子、という言葉が頭をよぎる。
さっきまでピンと美しく伸びていた背筋は、気持ちに連動してしおしおと曲がってしまっていた。
すると隣の席の真央が、ため息をついたルミナに気付いてチラリと視線を向けてきたので、
(はわっ! しゃんとしないと!)
ルミナは慌てて何事もなかったかのように、もう一度背筋を伸ばし直した。
そして真央に見られたことで、ルミナは不思議な緊張感を覚えてしまう。
鼓動が早くなり、胸の奥がザワザワした。
真央の目がルミナの思考を読み解かんと鋭く光ったような気がしなくもなかったが、ルミナは「また勝手に疑うのはよくないですよね。さっきのことを反省しないとです!」なんてことを若干焦りながら思っていた。
(でも、だったらどうして、私はこんなにもマオくんのことが気になるんでしょうか?)
ルミナは何度も何度も自分の心に問いかける。
(マオくんが魔王ブラックフィールドの可能性は限りなくゼロ。
なによりあのキラキラとした誠実な目。
優しくて明るい受け答え。
マオくんが冷徹極まりない魔王ブラックフィールなはずがありません)
ルミナは前提条件として、黒野真央は魔王ブラックフィールドとは無関係と完全に結論付けた。
そのうえで。
(だったらどうして?)
もちろんそれは真央が魔王ブラックフィールドの転生体であり、勇者として討つべき相手であることを、ルミナの中の勇者ルミナスが本能的に感じ取っているからなのだが。
見ての通り、既にルミナはその線は完全に消してしまっていた。
(だったらもう、これはアレしかありません。
伝え聞くところによると、アレはその人のことを考えるだけで胸がざわついて、いてもたってもいられなくなるらしい、熱病のような病だそうですから。
アレとはつまり――恋。
私はきっと、マオくんに初めての恋をしちゃったんです――)
その結論へと至ったルミナは女子高生らしく心の中で「きゃー!」と黄色い歓声を上げた。
しかし同時に、先ほどの自分の大失態をまたもや思い出してしまう。
(な、なんとかして、お昼休みに口にしてしまった「前世の話」とか「私は勇者」とか、そういうやらかしをを取り返さないとです……!
そのためには、積極的に可愛い女の子アピールして、イタい女の子じゃないということをわかってもらわないといけないですよね。
鉄は早いうちに打てと言います。
つまり失敗は早めに取り返すなり、清算してしまうべきなのです。
昼休みの大失態を取り返すために、放課後、マオくんに積極的にアピールしないと……!)
こうして勇者ルミナスの転生体であるルミナは、盛大な勘違いの末に、魔王ブラックフィールドの転生体に対して、恋の大作戦を始めることになったのだった……!!
💕ルミナSIDE END💕
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