152 サンの進化


 まずサンの能力だが、このようになっている。



 種族:ジャイアントバット(サン)

 種族特性

【吸血】【超音波】


 スキル

【日中行動】



 ここで注目すべきなのは、スキルの日中行動だろう。


 日中行動は名称通り、日中での行動に補正がかかる。


 動きが良くなり、自然回復速度も上昇するみたいだ。


 当初はこれに目をつけて、太陽に弱そうなヴァンパイアに上手く進化すれば、弱点を克服できるかもしれないと思った。


 しかし今思えば、物語のようにヴァンパイアが太陽に弱いという保証はない。


 それに、融合したらスキルがどうなるのか不明なのだ。


 二回目以降の融合であれば、種族特性をいくつか引き継ぐことが可能らしい。


 だがスキルに関しては、現状不明である。


 なのでヴァンパイアを狙うのはいいが、望み通りの結果になると考えない方がいいかもしれない。


 それを念頭にどのモンスターと融合、フュージョンするかを考えよう。


 とりあえず相性が良さそうなのは、小さな獣系か鳥系だろうか。



 Fランクであれば、スモールモンキー、スモールマウス、フォレストバード、ポイズンスクワール。


 Eランクだと、だいたい大きさが中ぐらいになるので、微妙かもしれない。


 この中で一番相性が良さそうなのは、スモールマウスだろうか。


 翼が無ければ、何となく似ている気がする。


 しかしスモールマウスとのフュージョンは、どうにも普通過ぎるだろう。


 一見安定していて良さそうだが、そこまで強くならない気がする。


 何となくフュージョンは、タイプが違うモンスターと組み合わせるほど能力に個性が出ると思う。


 ジョンなどは、正にその例だろう。


 グリーンキャタピラーとスモールモンキーの組み合わせは、見た目こそアレだが能力的には優れている。


 だとすれば、タイプの違うモンスターとフュージョンするのも、ありかもしれない。


 悲しきモンスターにならない程度であれば、大丈夫だろう。


 だが当然どのようなモンスターになるかは、やってみなければ分からない。


 結果として悲しきモンスターになるかもしれないが、その時は次回のフュージョンで整えれば、何とかなるだろう……なるよな?


 まあここまで迷っているのは、脳裏では未だにヴァンパイアに進化させたいと、どこかで思っているからだろう。


 その中で現状可能性があるモンスターといえば、一種類しかいない。


 だが俺の想像だと、一度悲しきモンスターを経由することになるだろう。


 それに、目的通りヴァンパイアになるとも限らない。難しいところだ。


 けれども、リスクなくしてリターンは望めない。


 ならばここは、思い切って決断するべきだろう。


 気持ち的には、もうほとんど決まっていた。


 俺は覚悟を決めると、軽く深呼吸してから二枚のカードを取り出す。


 一枚はもちろん、サンのカードである。


 そしてもう一枚は、このカードだ。


 

 種族:スケルトン

 種族特性

【生命探知】



 俺の予想では、コウモリの翼が生えたスケルトンに進化すると考えている。


 そこから上手くアンデッド系を組み合わせていけば、可能性はあるだろう。


 覚えたばかりのカオスアーマーとも、相性が良いはずだ。


 よし、始めよう。


 俺はそうして、二枚のカードを合わせるとフュージョンを行った。


 すると手元にある二枚のカードが輝き、一枚のカードへと変わっていく。


 そして光が止んだ後、新たな一枚のカードが姿を現した。



 種族:サン・デビルズサーヴァント(サン)

 種族特性

【陽光再生】【闇光属性適性】

【闇光属性耐性(小)】【爪強化(小)】

【飛行】【生命探知】【マナドレイン】


 エクストラ

【フュージョンモンスター】



 これは、想像以上の結果だな。


 サンは、サン・デビルズサーヴァントというモンスターに進化したみたいだ。


 種族名にサンの名前が入っているが、おそらく陽光再生が関係しているのだろう。


 陽光再生は太陽の光を浴びることで、怪我の再生はもちろんこと、魔力の回復速度も上昇するらしい。


 元の日中行動が、まさか種族にも影響を及ぼすとは思ってもみなかった。


 これは偶然なのか、それともユニーク個体のスキルだからかはまだ分からない。


 だが、同様にユニーク個体のモンスターであれば、似たような影響を及ぼす可能性は高いだろう。


 思わぬところで、良い情報を得られた。


 そして肝心の見た目だが、やはりコウモリの翼の生えたスケルトンである。


 だがそれ以外にも特徴として、爪と牙が鋭い。

 

 加えて額には二本の小さな角と、鋭い尻尾の骨を持つ。

 

 それと人骨というよりも、少し獣っぽい。ちょうど中間的な感じである。


 また全体は翼を含めて白色であり、唯一眼窩がんかの奥に浮かぶ光だけが金色だ。


 悲しきモンスターというよりも、かっこいい寄りの厳つい見た目である。


 子供がもし出会ったら、泣いて逃げ出しそうな感じだ。


 個人的には、悪くない見た目である。


 よし、一度召喚するために、場所を移そう。


 流石にこのモンスターを、宿屋の部屋で召喚するわけにはいかない。


 そうして俺は、召喚転移で誰もいない岩の多い荒野へと移動した。


 ここなら遮蔽物もたくさんあるし、問題はないだろう。


 さて、早速召喚するか。


「いでよ、サン!」

「ギギギッ!」


 そして新たな姿へと進化したサンが、歯ぎしりのような音を鳴らして現れた。


 体の大きさとしては、子供くらいで思ったよりも小さい。


 ゴブリンと同程度だろうか。


 だが、ゴブリンよりも凶悪な見た目であり、強そうだ。


 種族特性の構成から見て、Dランクほどだろうか。


 それと今更だが、日中行動は消えてしまったらしい。


 スキルが失われたのは、今後のフュージョンを考えると痛い問題だ。


 まあそれについては、また今度考えよう。


 それよりも今は、サンについてだ。


 練習用にゴブリンを召喚して、戦わせてみる。


「ギッ!」

「ゴバァ!?」


 するとサンは鋭い爪で、あっさりとゴブリンを倒した。


 続けてゴブリンを数匹召喚すると、長い尻尾の先にある鋭い骨でゴブリンを突き刺す。


 他にもマナドレインでゴブリンから魔力過剰に吸い取り、魔力欠乏症によって衰弱死させた。


 更に囲まれれば、空を飛び楽々と逃げおおせる。


 またゴブリンが岩の陰に隠れても、生命探知で簡単に見つけ出して各個撃破していった。


 中々にバランスがよく、加えて多彩だ。

 

 唯一の弱点は、遠距離攻撃の手段が無いことだろうか。


 しかしこれも、何か魔法を覚えさせれば解決する。


 金銭に余裕ができたら、適したスキルオーブを購入するのもありだろう。


 闇と光に適性があるみたいだし、両方覚えさせれば面白そうだ。


 あとこれは能力とは違うのだが、サンはヴァンパイアというよりも、悪魔方向へと進化した気がする。


 何と言っても、種族名がサン・デビルズサーヴァントだ。

 

 サンが普通とは違う特殊個体だとすれば、本来の種族名はデビルズサーヴァントだろう。


 種族名の通り、悪魔の召使いである。


 順当に進化すれば、組み合わせ次第では様々な悪魔になるだろう。


 案外、これはこれでありかもしれない。


 どのように進化していくのか、今から楽しみだ。


「ギギギ!」


 サンも、自身の新しい体に満足している。


 これからは、様々な場面で活躍してくれることだろう。


 それと場所もちょうど良いし、ここでカオスアーマーの性能確認もしておくか。


 思えばランクアップ前のダークアーマーは、一度も使わなかった。


 その前のシャドーアーマーと比べたら、かなり性能に差が出ることだろう。


 いったいどれほど変わるのか、ここで試してみることにする。


 そうして俺は、早速カオスアーマーを発動させるのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る