あたしのパシリ陰キャ女が、あたしの事を舐めてる気がする

イチゴオレ

おい、焼きそばパン買って来いよ

「おい島崎しまさき!! お前焼きそばパン買って来いよ」


「ひぃっ!! は、はいぃ」


突如、怒鳴り声が響き渡り、島崎しまさきはびくりと震えた。


それから暫くして〜。


「み、美咲みさきちゃん、パン作ってきました」


島崎は手にした焼きそばパンを嬉しそうに見せる。


「お前おせぇーよ! なんで売店行くだけで三時間もかかってんだよ!! もう昼休みとっくに終わったわ!!」


......。


「え、お前今パンを作ってきたって言ったか?」


「う、うん。お家帰って、パンの生地をこねて、焼きそばを焼いてたら時間が掛かっちゃったいました」


「いやあたしは焼きそばパンを買って来いって言ったんだよ!! なんで一から作ってんだよ!!」


「えへへ」


「え、ねぇ。なんで照れたの? 今なんで照れたの!?」


グゥ〜。


「ったく、取り敢えずお前の作ってきた焼きそばパン寄越せよ。あたしは昼飯食べてなくて腹減ってんだよ」


「は、はい!!」


島崎は手に持った焼きそばパンを、美咲の前に差し出す。


「おい、この上に乗ってるピカピカしたやつと、その黒いやつはなんだよ」


「こ、これは金粉です。あ、あと、えーっと、その黒いのはトリュフです」


「いや、お前なに人の焼きそばパン勝手にアップグレードしてんの!?」


「えへへ。喜んでくれるかなと思って」


「いや、素直に喜びづらいわ!! しかも、あたし、お前に200円しか渡してないよな!? 絶対足りてないだろ!!」


「あ、あの、お家にあった材料で、つ、作ったから、えと、この200円も、か、返すね。はい」


島崎はしどろもどろになりながら、小銭を取り出して美咲に返そうとする。


「別に要らねぇっつーの。ったく。いただきまーす」


美咲は手を伸ばして焼きそばパンを受け取り、口に運ぶ。


「う、うめぇ...」


「あ、あ、ありがとうございます」


「ん? おい、なんだこれ?って、甘ッ!!」


美咲が二口目を食べたパンの断面から、黒いドロッとした液体と、白い塊が姿を見せる。


「あ、ま、前に、美咲ちゃんが甘い物が好きって言っていたから、あ、あの、焼きそばパンの中に、チョ、チョコレートと、マ、マシュマロを入れてみました」


「おいふざけんな!! せっかくうまかったのに、なんでそんな魔改造しちゃうんだよ!! これは別々で食べるからうまいんだよ!!」


「ご、ごめんなさい」


「ったく。無茶苦茶なもん作りやがって」


美咲は何度も口から虹を出しそうになりながら、なんとか激甘焼きそばパンを完食した。


「はぁ、はぁ、はぁ。ごちそうさまでした」


「あ、あの。そ、その。ぜ、全部食べれてえらいえらいです」


島崎が美咲の頭に手を伸ばす。


「はぁ!? お前、な、何やってんだよ!! 」


「あっ、あっ、すみません! つい」


「お前あたしのこと舐めてんだろ!!」


「な、舐めてないですよ!!」


これは喧嘩無敗の一匹狼、桐谷美咲きりたにみさきと、陰キャでちょっと変わり者な島崎香織しまさきかおりの、お互いの孤独を埋めるような、不思議な関係を描いたような、多分なんかそーんな感じの物語である。

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