第50話 現実④

男の子の方に手を振り、自分を指さして、その手を今度は翔の方に振った。何か男の子のことを翔に伝えたい、と訴えているみたいだった。

「ちょっと内容は分からないけど、何か男の子の事で俺に話したいことがあるのかな?」

翔がそう問いかけると、鈴は首を縦に振った。

翔は『自分だって大変な思いをしているのに、男の子の事を心配してるなんて、本当に鈴ちゃんは‥鈴ちゃんらしいな‥‥』と思った。

「鈴ちゃんが何かを伝えようとしてることはわかった。ただ、何を言っているのかがさっぱり分からないんだ‥‥ごめんね‥‥」

鈴と男の子の顔が、残念な表情に変わった。その表情を見て、翔も何かしなくてはと思った。

「どうしたら話が理解できるか、考えてみるね。ちょっとだけ時間をもらえないかな?帰って色々調べたり考えたりして、良い方法を見つけて明日また来るから」

その翔の言葉に対し、鈴と男の子は頷いた。

「鈴ちゃん、俺もできる限りのことを考えてみるよ。ちょっと待っててね」

そう言うと、翔は2人の前から手を振りながら去っていった。2人も翔に手を振り返した。翔は公園を後にして、自分の家へと歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る