11ページ ガタガタ旅
「やはり、首都で起こった転移門暴発事故の被害者の方でしたか。災難でしたね」
「そうなんですよ、いやーこまってました」
『演技が下手すぎる、印象操作の魔法を使いたいレベルだよ。早く魔力回復してくれないかな……』
転移門暴発事故というのは、3日前くらいに起こった首都で起こった事件らしい。ハヤマさんから聞いた。
西の方でお祭りがあって、行事に参加しようと転移魔法陣を利用していた約120名が、原因不明の暴発で様々な地に転移させられたようだ。
実際には無関係なのだが、リヴァイアサン商団の人達がそう云う風に解釈してくれた為、今はそれに巻き込まれた体で話している。
「馬車にまで乗せて貰っちゃって、本当にありがとうございます」
「やらしい話ですが、私達商売人は評判が命なんですよ。首都に着いたら是非我々の名前を広めてくださいませ」
「分かりました!」
「……ははは!」
「?」
「今のはジョークですよ、貴方は素直なんですね」
「でも、助けて貰ったのは本当です。しっかりとお礼させて下さい」
「……そうですか、では、楽しみにしてますね」
そうして微笑むハヤマさんの目は、僕ではなく、僕を通してここには居ない誰かへ向けられてるような感じがした。
僕はその視線に対してどんな答えを出せば良いのかわからなくて、そっと目を逸らす。
そうして移した視線の先には奏恵が居て、腕を組み背もたれに腰掛けるその姿からは、暇だからとりあえず目を閉じていますよと言った印象を受けた。
かく言う僕も暇だし、せっかくだから、と少し気になることを聞いてみる事にした。
「ハヤマさんは、どう言う経緯で商人になったんですか」
「……ふむ。説明するにあたって。魔導王とは何か知っていますか?」
「えっと……名前しか知らないです」
奏恵や師匠のことを話すのは避けた、話す必要が無いし、場合によってはトラブルに繋がるかもしれないから。
「では、簡単に説明しましょう。この世界は魔法中心で、魔法に長けた
「なるほど……」
「私は、その魔導王の側近の一族だったんですよ」
「なるほ……えっ!?」
一瞬驚く、しかし疑問が浮かぶ。何故そんな人がこんな所で商売人などやっているのだろうか。
もしかして商人というのは表の顔で、情報収集をしてたり……。
「もしかしてですけ『ガタンッ!!』どっ!?」
下半身になんとも拭えない絶妙な気持ち悪さを感じて、僕はチビってしまった事を認識した。
この恐怖を感じさせたのは、そう、そうだ。隣にいる奏恵の目だ。
先程まで閉じていた目が、凛々しく、開かれ、どこでもないどこか一点を強く見つめながらこう言うのだ。
「——敵?」
「い、いえ、その。先頭の馬車が異物とぶつかったらしく……」
「それは敵なの?」
「どちからといえば……そうですね」
『魔法を使う時に祈りを込めるよね? その中の不純な祈り、分かりやすくいえば呪いだね。それが集まって出来たのが異物。別名世界の癌。つまり正真正銘の敵さ!!』
師匠の声はやけに演技がかっていて、それが僕らの前のめりな心を引き戻すものだと気づくくらいには、落ち着くことができた。
チラリと横を見ると、奏恵が僕の前に腕をスッと置いているのが分かる。
……そうか、奏恵は殺意で今動いてるんじゃない。僕のことを守ろうと、立ち上がってくれたんだ。
少しして自然に奏恵と目が合い、そこで僕達は完全にペースを取り戻した。
「……申し訳ないのですが、どうやら先頭馬車が壊れてしまったようで、修理に時間が掛かります。本日はここで野宿にしても良いでしょうか?」
ハヤマさんが、この空気を待ってましたと言わんばかりにジャストなタイミングで打ち出して来た提案を、もはや断る人は居なかった。
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