第28話 ハンバーグ。

 まずパスタを作ろう。

 エプロンを借りてすっかり料理人さんの装いになったあたし。

「かわいいね。よく似合ってるよ」

 そんなギディオンさまの言葉に耳を赤くしながらボールに薄力粉を入れて卵を割り入れる。

 今回は少しでいい。卵一個分で混ざるだけの量。そこにオイルをティースプーンに軽く一杯加えてヘラで切りながら混ぜていく。

 ある程度まざっところで手のひらでこね回し、だんだんとまるめていく。


「おお。お嬢様には思えないほど手際がいいな」

 ジェフさんがそうちゃちゃを入れる。うーん。男の人に見られながら作業するのは恥ずかしいけどしょうがないかぁ。

 なるべく気にしないようにしながらこねるのに集中して。

 まあ前世でバイトの経験を生かしてドーナツ作ったりお菓子作ったりしてたから、これくらいならなんとかできる。


 ツルツルになった生地を調え布巾を被せて少し寝かす。


 その間に今度はハンバーグのたねを作ろう。


 お肉を包丁でたたいて粗挽きの挽肉を作る、のだけど、これはジェフさんに頼んだ。

 結構力が要るし、あたしじゃうまくできそうになかったから。

 挽肉自体はこの世界にも普通に料理法の一つとしてあるようで、あっという間に用意をしてもらえた。

 そこに。

 ブラックペッパーにナツメグ? ウコン? そんな感じの香辛料を選んで少量振りかけ、みじん切りにして炒めた玉ねぎを少し混ぜて、卵の黄身を一個落としてこねる。小麦粉を少量振りかけながらコネコネコネコネとひたすらこねて。

 このお店はお食事に出すパンも手作りしてたから、時間が経って固くなったパンもあったから、それを貰っておろしがねでおろして作ったパン粉も少し混ぜた。


 できたたねは手のひらに収まるサイズにちぎって丸め、ぱんぱんと両手でキャッチボールするように叩きながら空気を抜いて、平たく伸ばして真ん中を少し凹ませてでんぷん粉をひいたトレーにのせておく。

 あとは焼くだけだ。


 お肉は牛肉によく似た味のビックホーンっていう種類の牛みたいな野獣のもの。

 脂身は少ないけど、そこはそれ。

 赤身がとっても美味しいし、そこに包丁でたたく時に脂肪の部分も混ぜて一緒にミンチにする。

 そうすることでとても柔らかくて美味しいお肉になるそうだ。

 っていうかこれはジェフさん談。挽肉料理ではこうしてお肉のいろんな部位を混ぜることで、自然な状態のお肉より美味しいお肉を生み出せる。とのことだった。

 うん。ハンバーグにぴったりの技術だよね。

 どうしてハンバーグが忘れられちゃったのかが不思議に思えるレベルだよ。


 ハンバーグを焼くのはもうジェフさんにお任せし、あたしはスパゲティ作りの続きをすることにした。

 休ませてた生地を麺棒で伸ばし平たくしていく。

 ドーナツ作りでも使った麺棒。麺棒って名前はあたしが勝手に呼んでるけど、ここでは普通に? 伸ばし棒って言うらしい。

 粉を振りながら薄く伸ばして行って、それをふわっと折りたたみサクサクと包丁で細く切っていく。


 まるでお蕎麦のように細くなった麺を、そのままお湯がたっぷり沸いた大きなお鍋に放り込む。

 頃合いを見計らいざっとあげて、お湯をしっかり切ったらフライパンへ。

 油はやっぱりオリーブ油に近い油を選んで、その香ごとさっと回し掛けして炒め。

 オムライスでも使われていたケチャップソースをまぶしてちょっと胡椒をかけて出来上がり。

 後からデミグラスソースがくるからあんまり濃い味付けにしないでおく。


 でもって次はポテトフライ、だけど。

 これは普通にお芋を切って素揚げするだけ。

 さっとお塩を振ったらおしまい。


 そうこうしているうちにハンバーグがいい色に焼けてきたので順に盛り付けしていく。

 お芋とスパゲティを最初にひいて、その上にかぶさるようにハンバーグをのせていく。


 ハンバーグを焼いたフライパンには肉汁がいっぱい残っているから、あとはここにブイヨンとランチに出ていたブラウンシチュウを少量、ケチャップと塩胡椒を足して味を整えて。

 ハンバーグのソース、デミグラスっぽいソースの出来上がり。


 最後にハンバーグの上からふわっとのせたら完成だ。

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