ショートショート「仕事が恋人」

 俺は、自分が遊園地のスタッフなんて仕事をすべき人間だとは思えない。この園で、お客様どころか、プライベートの雑談すらまともにできないような人間は俺くらいだろう。


 幸い、遊具の手入れをする仕事を任されたおかげで人と話す機会は減ったが、家族連れや恋人同士のお客様を見ると、自分が情けなくなる。


 そんな仕事を定年退職するまで続けられたのは、転職する勇気すら無かったからだろう。俺は最後の日まで道具の手入れをし続けた。いつも通り、1人で帰ろうと思って職場を去ろうとした。


 すると、園内の遊具が一斉に動き出した。観覧車も、メリーゴーランドも、コーヒーカップも光って動き出した。とても暖かく、心地いい光景だった。俺の恋人は、家族は、ここにいたみたいだ。

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