第30話

 一か月もたつと農地までトンネルのように壁をつくり、川から水を引けるようにもした。


「希望通り、ナーフとこの農場を、魔石で作った自動トロッコを走らせるようにしたぜ」


 ダンドンさんはそう胸を張った。


「これでモンスター掃討や、避難のために移動が簡単になったわね」


 ケイレスがそういう。


「まあ、さすがに空のモンスターは迎撃が難しいから、レイエルかアストエルの力が必要だよ」


「ええ、問題ないですよ」


「まあ、食事のためですからね」


 ふたりはそういって承諾してくれる。


「さて、これで食料は確保できるから、ここにも人を送ってこよう。 ダンドンさん人の集まり具合はどうです?」


「ああ、募集にかなりの数集まっているよ。 すぐにここに呼べる」


「わかりました。 農業経験者を中心に技能や知識をみんなに教えて欲しいんですが」


「すぐ手配しよう」


(あとトレアたちも呼ぼう。 親子だと生活も苦しいだろうし......)


 それから人々は集まってきた。



「これで魔族との戦争になっても、避難場所と食料は確保できる」


「そうだな......」


 アエルは悲しそうにそういう。 


(魔族との戦いを考えているのかな)


「......なんとか角を落とせればいいが、それは難しいし」


「そうですわね。 一体一体を無効化して角を折るのは物理的に不可能ですわ」


「ええ、私ですら、ケイレス、アエル、アストエルの三人がおさえるのがやっと...... それが2000、3000となると、角を折るどころかもう倒すことも可能かどうかさえ......」


 アストエルとレイエルが厳しい顔でそういった。


(なにか方法はないのかな)


「リンさん。 バルメーラ大臣から早馬が来ています」


 そうマーメルが部屋には入り伝えてきた。


「大臣から......」


 私たちは王都へと赴いた。



 大きな屋敷につくと、バルメーラ大臣が待っていた。 少し焦っているように見える。


「そこに...... かけてくれ」


「ええ、それで何かごようですか?」


「ああ、実はまたモンスターが増大している」


「まさか、またスタンピード!?」


 アエルが驚いていった。


「ああ、その兆候のようだ」


「この間よりまえに起こったのが十年前...... ずいぶん早すぎないですか」


「本来は数十年に一度起こる厄災のはず...... 一体何が起こっているのか、理解に苦しむ」


 バルメーラ大臣が悲嘆にくれている。


「それで、我々はどうすればいいのですか?」


「どうしても二ヵ所、手がたりない。 なんとかならないだろうか」


「二ヵ所か、この間の騎士団をおかりできますか?」


「ああ、それは大丈夫だ」



「わ、私もいく!!」


 アエルが腕を引っ張る。


「アエルは、ケイレス、アストエル、レイエルたちともうひとつに行って」


「いやだ!! リン一人は危険すぎる!」


「大丈夫だよ。 ディラルたちがいるから」


「おやめなさい。 みっともない」


 アストエルがアエルを引っ張っていった。


「レイエル、ケイレスそっちは任せたよ」


「ええ、ナーフと農場は掃討し終わってるから、二週間はもつ」


 そういって暴れるアエルをつれていった。



「ディラル大丈夫」


 私はディラル率いる騎士団と、王都の西の方の砂漠地帯へとはいった。


「ええ、緊張していますが、あれからも鍛練していましたから」


 そうディラルは汗をかきながらうなづいた。


「それでこっちはどうなっているの」


「ここは、ここを越えられると王都に迫られます。 いま王都を攻められると、ゼヌエラが侵攻する可能性もあるのです。 他の地域は弱いですがモンスターの数が多すぎて、人がいないこの地域は後回しになっているのです」


「なるほど......」


(しかもゼヌエラとの戦争が始まると、兵力を増やしている魔族の侵攻もあり得るし...... そうなると人間は滅亡ね)


「でもモンスターがそんなに増えたのに気づかなかったの」


「......ええ」


(なにかあるのかな? 申し訳ないが心を読ませてもらおう)


(もう一人の大臣ダルグタールが商人への投資を名目に、軍事予算を削減している...... なんていえないものな)


 そうディラルはおもっていた。


(ダルグタール、アルトークのところにいた大臣か......)


「来ました! モンスターです」


 砂丘から砂を吹き上げて巨大な蠍の群れが現れた。


「ええ、みんな指示通りにたたかって」


 私たちはモンスターを掃討し始める。


 

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