第25話
私たちは城へ向かった。
「この度は助かった。 そなたたちのお陰でヒュドラを討伐しスタンピードを止めることができた」
城に向かい報告すると、バルメーラ大臣は頭を下げた。
「ええ、ですが冒険者たちと騎士団のお陰です。 それで他の場所のモンスターは?」
「なんとか抑え込むことに成功した。 そなたたちに頼んだ場所は、住民の避難が終わっていたので、他に兵力を集中したのだ。 若い彼らの実戦訓練になればと思い、そなたらに託したのだが、まさかあの強力なモンスターたちを倒してしまうとは......」
少し困惑して大臣はそういう。
「みんながんばってくれましたよ。 騎士団や冒険者、かれらのおかげです」
「ならば恩賞をはずまねばならんな」
そう笑顔で大臣はいった。
私たちは城をでる。
「かなり褒賞がでたな」
アエルが嬉しそうにいう。
「ええこれで、新しい機織り機や、糸、種、苗などを更に手に入れられる。 それに全て私たちが倒さなかったから、無駄に怪しまれずにすみそうだよ」
「そうだな。 町にかなりの商人がきてくれてるから、売り物も増やさないとな」
アエルは笑顔でいう。
「おーい」
その時、向こうからケイレスが手を振っているのが見えた。
「あなたたち、これからどうするつもり?」
「今は少しやることがあるけど、ケイレスはこれからどうするの?」
「私は冒険者を続けるわ。 でも良ければあなたたちと仕事がしたいわね」
「そうか、頼みたいこともあるんだけど、その前に少し話があるんだ」
「ええ、なに?」
ケイレスをつれ町外れの人通りのない森にいった。
「こんなところまできて、人に聞かれたくないこと?」
「ええ、少し待って」
私はアエルにかけた能力を解除しアエルの角をみせた。
「なっ! アエルは魔族なの......」
ケイレスは驚いた。
「おい! なにをしているリン!」
慌てるアエルを横におき、ケイレスの顔をみる。
「リンあなたも、魔族なの......」
「私は人間だよ。 それよりあまり怯えないんだ。 やはり魔族を知っているからかな」
そうケイレスに伝えると無言になる。
「私たちが魔族の話をしたとき、なにかを知っている風だった。 ケイレスは魔族の何を知っているの?」
「ふぅ、隠してもしかたないわね。 私は魔族に育てられたの」
「ま、魔族に!? そんなばかな!! 魔族が人間を育てるなんて......」
アエルが驚いている。
「ええ、でも事実、十年前の大戦で両親をなくした戦争孤児だった私は、その戦場にいた魔族、レイエルに助けられた」
「それで知っていたのか」
「ええ、あなたたちが角の話をしていたから、思い出したの。 レイエルも角を戦場で折られていた。 レイエルはそれまでの自分が嘘のように戦いへの意欲がなくなったといっていたわ」
(角が折れたら、戦意がなくなったというのはやはり本当なのか......)
「それでレイエルは?」
アエルが聞くと、ケイレスは悲しげに首をふる。
「人間に見つかると私まで殺されてしまうといって、人里はなれて私に魔法と剣の使い方を教えると姿を消したわ」
(それでこの強さか)
アエルと目を合わせる。
「ケイレス少しみてもらいたいものがある」
「みせたいもの?」
私たちはケイレスを最初の町へとつれていく。 町をみてケイレスは驚く。
「ここって...... まさか全員魔族......」
「いや、半分ってところ。 もうひとつの町にもいるよ」
「魔族がそんなに、すごいわね。 人と関われるのはレイエルだけだと思ってたわ」
「そこでなんだけどケイレス、ここともうひとつの町の警護をたのみたいんだ。 私とアエルがいないときに、モンスターがすぐに増えてしまうから」
「それを狩ればいいのね」
「ええ掃討は定期的でいい、お金は払うけど頼めるかな」
「私も魔族と共存ができるならそれがいい。 その依頼受けたわ」
ケイレスは笑顔でいらいをうけてくれた。
それから二つの町を行き来しつつ、様子を見る。
一つ目の町をナーフとつけ、二つ目の町をラダトスとなづけた。
ナーフは服飾、調度品などを扱い、ラダトスは鉱夫を中心に鍛冶の町にした。
「かなり安定してきましたね」
マーメルが微笑んでそういう。
「町長さんのおかげよ」
「い、いえ、私はそんな...... なにも」
マーメルはほほに手両手をやり照れている。
マーメルにはナーフの町の町長になってもらっていた。
「ああ、モンスターもケイレスたちによって増えるのを抑えられている。 魔石の精製もうまく行って、ナーフにも使って高額で販売できている。 まあラダトスは魔封珠のせいで発動しないが......」
ラダトスの町長となったダンドンさんはそういって報告してくれた。
「鉱山までの頑丈な鉄壁を作れたら、魔封石を町から移動して奥へと拡大させましょう」
「なるほど! それを続けていけば、どんどん拡張できるな!」
ダンドンさんは笑顔でそういうと、マーメルも嬉しそうにうなづいた。
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