第11話
「やったのか......」
アエルは近寄ってくる。 ガイエルは血を流し倒れている。 その角は少しかけていた。
(この角固いな。 鎧すら貫いたのに、あれで欠けるだけか)
「ああ、そっちの兵士たちはどうだ」
「みな死んでいる。 ガイエルの魔法で吹き飛ばされたからな......」
アエルがあわれみの目をむけているその兵士たちを土に埋めた。
「マーメルのところに戻ろう。 彼らが帰ってこなければ、続々と兵が送られてくるかもしれない」
「わかった」
私たちが戻ると、不安な顔で皆がまっていた。
「マーメル早く他のものたちを集めてくれ」
「はい!」
それから次の日。
「全員集まったかマーメル」
「は、はい、はいれないものたちは建物の近くにいます」
「よし、みんな目をつぶって、その場に座って」
全員を座らせ私は集中する。
(さすがにこの人数を転移させたことはない...... かなりの集中を要する)
しばらく転移座標位置と転移範囲の再調整を行う。
「おいリン! 奴らやってきているぞ」
アエルがいう方の空から、かなりの兵士が鳥のようなモンスターに乗ってやってきていた。
「大丈夫。 設定できた。 いくよ」
「【瞬間移動】《テレポート》」
瞬間、目の前に壁に囲まれた場所へととんだ。
そこは私たちの拠点だった。
「ふぅ、なんとか成功か」
「ああ、皆も無事のようだ」
アエルは安心したようにいう。
「えっ? ここは」
目をつぶっていたマーメルたちは、突然別の場所に驚いているようだ。
「みんなもう自由だよ」
私がそういうと皆から歓声が上がった。
それから魔族たちが拠点に来て一週間たった。
「皆落ち着いたな」
「はい! リンさまの回復魔法で怪我人や病人も元気になっています」
マーメルはそう弾むような声でいった。
「ああ、ただ問題もある」
アエルが考えるようにつぶやく。
「食料だね」
「ああ、この人数を食べさせていくにはこの量ではたりない。 畑の数や果樹もたりない。 それに衣服なども欲しい」
アエルはそう喜ぶ彼らをみながらいった。
「それはもう一度ギルドでの仕事をして手に入れればいいけど、彼らに生活できる知恵や技能を与えないと」
「リンさまが全ての技能をお持ちなのでしょうか?」
マーメルがそう聞いてくる。
「いや、私も裁縫や建設、鍛冶なんかの職人の技術はないよ」
「ならばどうする?」
「ここに人間をつれてくるしかない」
「まさか!? そんなことが可能なのですか?」
マーメルが驚いている。
「どこの世界も生きていくのに辛いものはいるから、いなくはないだろうね。 ただもちろん慎重にばれないように呼ばないといけない」
「人間との共存か、かなり難しいが可能ならば試すべきだな」
アエルはうなづく。
「まずは町へといくしかない」
私とアエルは町へと向かった。
前にきたときより人が多い気がする。
(何かみんな疲れているようだ...... 路上で寝ているものいる)
「ああはいったが、人間との共存なんて可能なのか......」
不安そうにアエルはいった。
「一応私とアエルは共存しているよ」
「......まあな、だが、リンはなんか普通の人間とは違うからな。 他のものが、お前と同じとは思えん」
(まあ、確かに私は異世界から来たし、元々向こうでも異質な存在だからかな。 ただこの世界にも魔族との共存を考える人間もいるはず)
「先にお金を稼ごう」
私たちはギルドにむかう。 いつもより明らかに人の数が多いように感じる。
「お久しぶりですリンさん、アエルさん。 どうされてたんですか? 最近来られないから心配してましたよ」
ギルドに入ると、受付嬢のマムラさんが喜んだように声をかけてきた。
「すこし、無理をしてレッサーデーモンを倒したから、休息をとってたんだ」
アエルがそういった。
「そうでしたか...... やはり、あの時無理をされてたんですね」
「それで何か依頼はあるかな。 高額なものがいいんたけど......」
「そうですね。 高額なものはありますよ」
「ということは、安いものはないのか」
アエルが不思議そうに聞くとマムラさんはうなづいた。
「ええ、実は最近モンスターに襲われて、いくつかの町がなくなったんです。 それで仕事や家を失ったものたちが、冒険者となり仕事を受けているんですよ」
「なるほど難民か......」
「ええ、元々仕事も住むところも無限にあるわけではないので、色々なところで
(それで町にあんなに人がいたのか...... だがそれなら職人もいるかもしれないな)
それから、いくつかの依頼を受けギルドをでた。
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