第9話

「ここが魔族の国か」


 私たちはあれから一週間後、姿を消し魔族の領地まで来ていた。


 そこは木や石等で建てられた粗末な小屋が乱立している。


「向こうの方は大きな城壁と城があるのに、ここはひどい」


「ああ、ここは下位魔族の居住地だからな...... あの城内都市は中位、上位魔族の住居だ」


 アエルが城をみながらいった。


「文化レベルは低いといってたけど?」


「元々魔族は動物のようなものだったが、人間たちを捕虜にしたりして、文化レベルを上げたらしい。 あの城内は人間とそこまでは変わらない」


(変わらない...... としってるってことはアエルも上位魔族なのか...... なにも話さないからわからないな)


「さあ、こっちだ。 知ってるものがいる」


「わかったけど声をおとして、姿は隠せても声や音は聞こえるから」


「そうか、私にもリンの姿が見えないのは不便だな」


「それはしかたない。 光の屈折で見えなくしているから、でも私は見えてるからついていける」


 とりあえずそういってアエルの後をついていく。



 多くの掘っ立て小屋が立ち並ぶスラムのような路地にはいる。 モンスターらしい生物の骨がそこらに撒き散らされてる。


「すごい匂いだ」


「ああ、ここはもはやモンスターと扱いは変わらない」


「通貨などはないよね? どうやって生活しているの」


「ああ、捕まえたモンスターを食べている。 あとは戦闘や狩りや労働にかり出されるだけの存在、ほとんど奴隷や家畜とおなじだ」


 悲しそうにそういうとアエルは、奥に大きな建物にはいった。


「ここは......」


 建物内はただただ広いだけで天井もなく、土の地面にモンスターの皮を引いて、その上に魔族たちが寝ている。 


「病院か......」


「そのようなものだ...... 回復魔法を使えるものがいて、そのものがこうやってなんとか治療している」


 奥に長い栗色の髪の小さな角の少女がいる。


「あれか」


「ああ、治療が終わってから話しかけよう」


 アエルはそういうと、じっと少女を見ているようだ。


 夜になると、治療か終わったのか、奥へと少女が移動した。


「いこう」


 アエルについてその少女をおう。


 奥には小さな部屋があり、切り株の椅子と地面に皮がひいてある。


 その少女はつかれたように椅子に座った。


「マーメル......」


「えっ?」


「マーメル、私だ」


「アエルさま!」


 マーメルといわれた少女はキョロキョロと辺りを見回している。


(アエルさま...... やはりアエルは上位魔族なのか)


 アエルはゆっくりとマーメルの手を取った。


「今姿を消している。 ここに近づく者はいないか」


「は、はい、ここには誰も来ません」


「なら、かまわないな」


 私は力を解除した。


 アエルの姿をみるなりマーメルは抱きついた。


「アエルさま! ご無事だったのですね」


「ああ、心配させたな」


 そう涙を流しているマーメルをアエルは優しく抱き止めている。


「あっ! まさか人間!!」


 こちらに気づいたマーメルはアエルをかばうよう前にたった。


「大丈夫、そのものはリンといって私を救ってくれたものだ」


「そ、そうでしたか...... 私はマーメルともうします」


 そう怯えながらも頭を下げる。


「それでマーメル、いまここはどうなっているの」


「これは頭に、あっ、はい...... アエルさまがお逃げになられたときより、むしろ悪くなっております。 そして魔王により【勅命】が行われました」


 言葉少なにマーメルは目を伏せた。


「【勅命】!? それでは!」


 アエルは驚いている。


「なにかまずいの?」


「勅命は魔王からの命令、それは昔から侵攻のあかし......」


「つまり戦争しようとしているということ?」


「ええ...... 戦争の準備をしています。 もうすぐここのものたちもかりだされ尖兵とされるでしょう。 人間、魔族ともども多くの犠牲がうまれるはず......」


 マーメルは落ち込むように座り込んだ。


「それなら好都合」


 私がそういうと、アエルはうなづく。


「えっ?」


「我らはここから魔族たちを逃がすために来たのだ」


「逃がす...... ですがここにいるものは怪我や衰弱して動けません」


「それはいい、それでほかの住人たちを説得して、ここに集められる?」


(今は回復に時間と労力はかけられない...... 向こうにいってからにするか)


「え、ええ、それはできるとはおもいますが......」


「リンなら皆を安全にある場所へと逃がしてくれる。 マーメルできるだけの者をここに集めてくれ」


 困惑するマーメルにアエルはそういってうながした。


「......わかりました。 ここにいても死ぬだけ、なるべく多くのものをここに呼びましょう」


 マーメルはアエルの目をみて覚悟したようにそういった。

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