第6話

「ここが...... 人間の町か」


 アエルは左右を興味深そうにキョロキョロ見ている。


 家を壁で囲ったあと、私たちはお金を稼ぐために町へときていた。


(アエルの角は【偏光念力】《ルクスキネシス》で光を屈折させて、見えないようにしたから大丈夫だろう)


「なあ、あれなんだ?」


 少し明るくなった街灯をアエルが指差していった、。


「魔素を集める魔石とやらでついている灯りだそうだよ」


「そんなものが...... 人間は進んでるな......」


 どうやら魔族はそれほど文化的に進んでないらしい。 一部の貴族などはかなり文化的な生活をしているが、他のものは獣のような生活をしているという。


「アエル、とりあえずお金を手に入れよう」


「金...... わかった」 


(なんかピンときてない顔、通貨はないのかな)


「ただその前に......」


 アエルはボロボロの服を着ていたので、服屋に行く。


「とりあえず私も何か買っとくか」


 自分用の鎧と盾、短い剣、そしてアエルの胸当てと剣をかう。


(【念力】サイコキネシスで浮かせれば軽く扱える)


「アエルこれでいいか......」


 聞こうとふりかえると、アエルは青のかわいいワンピースをみていた。


「それがほしいの」


「べ、別に、珍しかっただけだ」


「じゃあこれも、あとそこの服も」


 数着の服をかい、青い服をアエルにわたす。


「なっ...... いいのか」


「とりあえずそれに着替えて。 そんなボロボロだと私がそんな扱いをしていると思われるから」


 アエルは無言でうなづくと、着替え室でワンピースに着替えてきた。


「よく似合ってるよ」


「そう......」


 そうアエルは目を伏せ服を見ている。 うれしそうだ。


 そのままギルドに向かった。


「ああ、リンさん」


 受付嬢のマムラさんだ。 


「何か高額な依頼はない?」


「ええ、そちらのかたは」


「ああ、仲間の魔法使いアエル」


「そうですか、よろしくおねがいしますアエルさん」


「よ、よろしく」


 おどおどとアエルはそういった。


「依頼でしたね。 えっと、これが一番高額なものですが...... かなり危険ですよ。 なにせ数年は放置されている依頼ですので」


 そう一枚の紙を差し出す。

 

「これはレッサーデーモンか!」


 アエルがそういうと、マムラさんはうなづいた。


「ええ、依頼者はこのラクエス国で、ある遺跡にいたレッサーデーモンを討伐してほしいとのこと」


「国なら軍を派兵すればいいんじゃないの」


「魔族との戦い、隣国との戦い、モンスターからの防衛など、軍は常に兵士が足りない状況です。 今は出ては来てませんから、放置しているのですが、それが遺跡より出て来るととても危険なのです」


 アエルは目を伏せている。


「そうか、ならそれを受けよう」


「おいリン!」


「無理ならすぐ引き返してくださいね」


 そうマムラさんに釘を刺されてギルドからでる。



「本気かリン! レッサーデーモンなんて! あれは上位魔族が召喚するやつなんだぞ!」


 アエルは焦ってそういった。


「上位魔族が? なんのために」


「下のものを狩るときや、戦争なんかに使うんだ。 とても強いんだ」


「強さそのものは別に構わないけど...... 狩る仲間を?」


「上位魔族は下位魔族を遊びとして狩りを行うこともある......」


「陰湿だな。 さすが魔族というだけはあるね。 でもまあ問題ないよ」


 買った装備に着替え、遺跡へとむかった。



「なあ、あの服はどこにいったんだ?」


 山道を歩きながら、アエルは私の持ち物をキョロキョロみている。


「ああ、あれはいま着ないから、私たちの家に【アスポート】《離転移》で移動させた」


「なんなんだ!? お前の魔法、常軌を逸している......」


 そうアエルは驚いている。


「それよりレッサーデーモンというのはどんなやつなの」


「ああ、ある程度の知能があり、魔法を使う人型のモンスターだ。 とても強い...... 力も魔族の体を両断できるぐらい、体もなみの攻撃は効かない」


「それを魔族は召喚できるのか」


「上位魔族にはそういうものもいる。 だがほとんどの魔族はできない...... やめたほうがいい殺されるぞ」


「問題ない。 物理攻撃が効くんでしょ?」


「多分...... でも私は遠くからしかみたことがない。 魔族を紙切れのように切り裂いた。 いくらリンが強くても無傷では倒せない。 やめよう危険すぎる......」


 怯えるようにアエルは引き留める。


「強いならどの程度か知る必要がある。 ここで生き抜くにはできるだけ強いやつの情報が欲しい。 無理はしないよ。 怖いならまっていて」


「いや...... いく」


 そんな話をしていると石の遺跡がみえてきた。



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