七
地上を行き交う人々は気づいていない。
すぐそこで大量の死人が生まれたことに。
気づいているのは、彼女たちだけである。
「はあはあ、アナタ。さては死神にジョブチェンジされましたか?」
イオンたちがもれなく逝ってしまい、さて、どうするかとプリンキャンディーをガジガジ噛んでいたデスメタルだったが、頭上から嬉々とした声が降ってきてこれでもかと顔を顰めた。見たくないが、ねえそうでしょとしつこく呼ばれるのだから、向かないわけにはいかない。
やはりというか金髪赤目のちいさな少女がニンマリと意地悪げに微笑んでいた。
愛らしい姿に騙されるなかれ、少女は死神である。
真っ白なフリルいっぱいかわいいフード付きワンピースとブーツに、ハートやら星のデコをした鎌を持った死神である。
死神、で、ある。
「だれがじゃ、こちとらきらっきらな愛振りまく恋愛天使デスメタルさんですー。そういうアンタは万年落ちこぼれオッツーな魂狩り損ない死神さんのラッキッキーニャンさんですかー?」
「その名前、呼ばないでいただけます?」
「死神にらっきっきとか、ぷぷ」
「は、恋愛天使でデスメタルとかありえないんですけどね」
「あ? いかした名前だろうが」
「頭の中イカれてるわ」
睨み合いの末、眼力に負け視線逸らしたのは死神の少女の方だったが、ふと、デスメタルの足元の惨状を見てにやりとする。
「その様子じゃあ、まーた、失敗したようですね」
「はあ? してませんー」
「してるじゃないですか、その死人の数々。アナタ、やっぱり死神じゃないんですか」
そう、デスメタルの足元には見るも無惨な屍。イオンたちの変わり果てた姿があった。
※あまりにも酷いため、モザイクかかります。
「まあ、予想外な惨状でも出会いは果たせたみたいだから、こちらはおっけーってやつ?」
「どこがですが。死ぬはずではない者たちを死なせたとしられたら、神からお怒り受けますよ」
「そこに、死神チャーンス! その鎌で、魂狩にサクッと。そんで死んでめでたくゴールイン? みたいな?」
「あるわけないでしょう、んなチャンス」
「なーんてね、まあ、大丈夫。あと数秒足らずでみんな、復活すっから」
「はあ? そんなばかな「さーん、にー、いーちぃ「「「「「ほぎいゃぁぁああ!!!!!」」」」」ほーら」」
バキバキばぎきぃ、といやな音と悲鳴を立てながら再生する人間たちは軽く死神のトラウマになった。
「なぜ、まさか」
「勇者に聖女が合わされば、命は息吹は吹きかえすってね」
ガリッとキャンディーを噛み砕くと、カラメルの甘い香りが辺りに広がる。
血だらけの姿で悶絶しながら座り込むイオンたちを見て、デスメタルはにやりと笑った。
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